exam ~先生にも色々~
破壊編はまだ続きますが、シリアスパートは終わりです。またコメディーパートへ移ります。
~前回のあらすじ~
本当の思いを伝えた慶斗は、渚と心を通わせることができた。改めて仲良くなった夢。そして、少し辛い別れをした遥だった。
~予告~
慶斗たちの入学試験です!
今日、僕は南陽高校にいる。殴り込みに来てから一年以上が経ったけど、大丈夫だろうか…。
「受験票を持って此方に並んでください。」
何処からか聞こえてくる声に従い、受付へと向っていく。ちょっと緊張気味の僕と、かなり緊張気味の渚、そして能天気と言う言葉が似合いそうな夢。三人で同じ山城中学の制服を身に纏ってここへ来た。受付まで来て受験票を提出する。
「あっ、慶斗だ~!お姉ちゃんを思って入学してくれるんだね。それでこそ私の弟だ!」
「雅さん…。」
「んんん。先輩って呼んで。あなたを手元に置けるなら、私の権力フル行使しちゃうんだから。ほぼ合格したのも当然よ。まぁもし失敗しても、私の事はお姉ちゃんって呼んでもらうけどね♪」
色々危ないことを言ってるけど、後ろから“慶斗、ちょっと”と言う視線がダブルでぶつかってくる。とりあえず受け付けは済ませて指定された教室へ向った。
「慶斗、誰なの!?お姉ちゃんってどう言う意味!」
「いや、色々あってね。夢に初めて会った日に、ある人に助けられたんだけど、その人の娘なんだ。それで何だか弟にされちゃった。」
「あぁ!あの時けー君殴らなきゃ良かったぁ~!」
なんだか色々言われたけど、しょうがないんだからしょうがない。それに、もし夢が殴ってなかったら、僕らはここまで仲良くなってないよ。そんな事を思っていた時、僕の目の前に影が躍った。
「君だ。君こそ俺が求めていた存在だよ。」
僕らの通う山城中学とはまた違う制服を着た男子だった。ちょっぴり茶髪掛かった髪をツンツンとさせた、切れ目の印象的なイケメン君だった。
「えっと…」
「あぁ、自己紹介を忘れていたよ。俺は青龍翔太。君の存在に心奪われた男さ。結婚しよう!」
反射的に殴ってしまった。鼻血を流して倒れてしまった目の前の男子。だってさ、いきなり男子から求婚されたんだよ?驚くのは必然だと思うんだけど…。あ、殴っちゃった…。これって受験の結果に響きそう…。ゆっくり振り返るけど、見てる人はいないみたい。大丈夫、証拠を隠滅しよう。チラッと二人を見ると、彼女達も頷いた。
男子を掃除用具ロッカーに収納する。うん、これで完璧。
「そこ、何してますの?」
三人ともギクッとなる。そろりと後ろを振り向くと、そこには長い髪を膝くらいまで伸ばした美人が立っていた。まるでモデルの様な体型で、キリッとした冷たくも見える視線で此方を見ている。
「あ、えっと…。掃除を…。」
社会に有害そうな物体の…。
「あらそう。まぁいいわ。それより、私といい事しない?」
いきなり三人ごと捕まれ、頬をスリスリさせられる。な、何この人!?
「いいわぁ。女の子だからこそのこの感触。たまらないじゃない。」
「ギブギブ!僕男!!」
その途端、その女子は僕から離れ、僕を見下したようなゴミを見るような目つきで見始めた。え、僕なにか悪いことした?
「男が私に近寄らないでくれるかしら?女の子の皮を被って私に近付こうだなんて、一億と二千万年早いのよ!さぁ、純粋な女の子であるあなた方は、私と一緒に新世界でいい事をしましょう…。」
どうやら夢が危険を感じたらしい。二秒後にはその女子が気絶していた。既に先程のロッカーは満杯だったので、先程の求婚男を引っ張り出して、女子を入れた。あっ、今度は男をどこに入れればいいんだろ?
「まずは国語だね、けー君。」
「国語のテストを始めるでおじゃる。」
テスト一発目。和服をビシッと決めた女の人が出てきた。女性で和服って言っても、十二単では無く、男物の烏帽子などを被り、神主的な感じだった。テストが配布される。さぁ、気を引き締めていこう。
【次の漢字の読みを書きなさい。- 1、蹴球 2、籠球 3、庭球】
<渚>
簡単ね。それぞれ“しゅうきゅう”、“ろうきゅう”と“ていきゅう”。学力って言うよりは常識を試されてるみたいね…。
<慶斗>
これはナゾナゾだね。一番から“サッカー”、“バスケ”、“テニス”だよ。日本人としての常識を尋ねる感じかな。爺ちゃん、漢字得意だったから。
<夢>
ふぅん。とりあえず深読みをしないように気をつければ大丈夫ね。答えは“けりだま”“かごたま”“にわたま”ね。流石は高校入学試験。
テスト二発目。教科は数学。普通にスーツを着た先生が入ってくる。
「きょ、これから数学のテストを始めましゅ!」
緊張しているのは受験生だけでは無い模様。骨ばった体つき、青い顔に眼鏡と言う容姿。“うらなり先生”と言うニックネームが当て嵌まりそうな感じだった。
「ま、まずは私の自己紹介から。裏鳴と申します。四月からあなた達が私を先生と呼べるように、頑張ってくださひぃ!」
舌ッ足らず。ヒステリック気味な先生はブルブルと震えながらテストを配り始めた。あれ、本名とあだ名が一緒じゃん…。
「そ、それでは始めてください!」
【第一問:この中から一次方程式を選びなさい。】
なるほど。どちらかと言うと真面目なタイプの先生みたいだ。答えはb。
【第二問:私は根暗な正確だと思いますか?】
はい!?これ入学試験の問題?受験生に人生相談するのってあり?しかも解答欄が異常に広い。全範囲の3分の2は占めてるね。どれだけ相談に乗ってもらいたいんですか…。まぁいいや。もっともらしい事を書いておこう。“あなたは根暗なんかじゃありませんよ。だから…”
<渚>
これは数学の試験と見せかけて、受験生の情操の程度を測っているのね。わざともっともらしい事を書くのは厳禁。高校の先生って、義務教育に縛られてない中々個性的な人がいるから。それなら、“確かに根暗な性格がチラホラと伺える面があります。ですが、人間元々そのような…”
<夢>
“うん。ウザイほどの根暗です。終わり!”
テスト三限目。社会。地理と歴史が混ざってるタイプだ。チャイムが鳴る前、ドアを蹴破って入ってきた男の人。軍服、ベレー帽にライフル銃、アイパッチ…。やばい…。
「コレからテストを勃発させる!総員起立!偉大なる国旗に敬礼!!」
この人、僕と遥が殴り込みに来た時にいた軍服教師…。バレると思ったけど、気付かないみたいだ。よかった。さてさて、テストは…。
【第一問:俺の好きな言葉はどれだ!】
知らない!パスっ。
【第二問:第三次世界大戦はいつ開戦するか?】
やめて。世界平和を乱さないでよ。
【第三問:ベトナム戦争における戦死者の数を正確に記せ。】
無理無理無理!
<渚>
あの先生、根っからの戦争屋っていう空気出してる。私の嫌いなタイプ…。あぁ言うタイプの人間は“戦争”とか“血肉”などの言葉が好きなはず。第三次世界大戦は食糧危機を背景に起こる可能性があるから、ざっと…。
<夢>
私の好きな言葉は“けー君”。世界大戦は“いつか起こる”。戦死者の数?“いっぱい”。
ここで昼食となった。渚と夢と一緒に答え合わせと次のテストの勉強も兼ねて昼食を食べる。
「テストの具合は?」
「ばっちりだよ、けー君。はい、から揚げどうぞ。」
「ありがと。」
もぐもぐ食べてると、僕の後ろに殺気を感じた。どうやら手は出さないみたいだけど。
「み~つ~け~た~わぁ~!!」
後ろを振り向けば、頭から埃を被ったモデルの様な女の子が。さっきの掃除用具ロッカーに入れた人だ。
「この女の子もどき!これ以上女の子に近付くなぁ!!」
ヤバイ。目がマジだ。色んな意味で今までで最悪の状況だよ…。
「待て待て待て!同じ女子といえども、女性に手を出すのは良くない!この青龍翔太がお相手しよう!」
再び誰かが現れる。さっきの求婚男だった。女子の方は新たな男子の出現に苦い顔をする。そして再びあの見下した目をする。
「イケメン、分類学上私が二番目に嫌いなキャラね。邪魔しないで。」
「それは無理な話だ。」
二人の間に確実な敵対心が生まれた。食事の邪魔しないで欲しいな。あまり僕と夢を怒らせないでね。僕らだって入学試験で問題は起こしたくないから。
「こいつは男なのよ!それに求婚!?ゲイで決まりね!」
「百合にだけは言われたく無い!」
一つだけ言わせてもらうね。“君達とは一緒の青春は嫌だからね!!”
だけど、何故かそれが不可能に思えてしまう僕がいたのも、事実なのであった。
・麒麟の交換日記
なんだか隣の教室が騒がしいな。俺様のランチタイムを邪魔するな。