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renew ~決意と別れ~

~前回のあらすじ~

やっとながら、朱雀は自分のやるべきことを見つけた。しかし、渚が自殺をしてしまった。どうやら一命は取り留めたようだが…


~予告~

朱雀に別れが訪れる

「どうしてよ。」

 僕が決意を伝えようとした時だった。渚が僕を遮るように俯きながら喋り始める。

「どうして私を死なせてくれなかったのよ!」

「な、渚?」

「どうせ、どうせ私なんか慶斗にとって必要の無い存在。それなら一思いに死んでしまいたいって思ったのに。なんで今更なのよ!」

 帰って!と突き放され、渚は布団を頭まで被ってしまった。拒絶されてしまった。何者でもない渚に…。僕の決意は簡単に崩れ去ってしまう。僕は渚に声をかけられなかった。そのまま病院の屋上へ向おうと病室を出る。

「慶斗君、渚は?」

「起きました。ちょっと僕は席を外します。」

 階段を使い、屋上を目指す。別に、飛び降り自殺をしようなんて気持ちは無い。ただ一人になりたかった気分なだけ。

 だけど、一人になることは出来無かった。屋上へ続くドアを開けると、そこには先客がいた。見覚えのある後姿の持ち主は、タバコを吸っている。

「先生…。」

「朱雀か。椎名は起きたのか?」

「どうでもいいでしょう。」

「拒絶された。そんな所だろ。」

 図星だった。キッと先生を睨むと、ヤレヤレと言った感じの態度を見せた。

「図星だな。まぁ、それを予測して私はここにいるんだがな。私だって伊達に教師をしているわけじゃない。冬休み明けから椎名は変わってたよ。お前が消えた後も変わったが、あの時よりも酷い変わり様だった。目がな、死んでたんだよ。いつもどこか遠くを見ている感じだった。見てるこっちが悩みたくなる程だったよ。だが、何回面談をしようがダメだった。何も答えないし、喋ろうともしない。あいつの友達から聞いてやっと知ったよ。お前が不良まがいの事をしているってな。」

 そこで一度タバコを咥え、煙を吸って吐き出す。僕は何も反論出来なかった。

「一つ言っておくぞ。これは私の考えだが、何かを解決したいなら、根本から変えないといけないんだよ。意味は分かるな?んじゃ、私も椎名に顔を合わせて来るとしよう。“命を粗末にするな”って説教してやら無くちゃならねぇし。教師って仕事はこれだから大変なんだよ。…あっ、そうだ。あのお茶出してくれた奴にお礼言ってくれ。かなりこだわり持ってるぜ、あの緑茶。」

 それだけ言い残し、先生は屋上から消えた。


 それから僕はどれ位の間屋上にいたのだろうか。放射冷却で寒いながらも、空気が澄んでいる為、星が綺麗に光っている。これだけ綺麗な物を見ていながら、代金はただ。これこそプライスレスって思ったけど、渚に拒絶された事のショックが大きかった。

 下からの喧騒がほぼ届かない無音の空間に音が響く。ドアの開く音。もしかしたら遥が帰りが遅くて、尋ねてきたのかもしれない。

「やぁ、遥。」

「私よ。渚。」

 後ろを振り向くと、確かに渚の姿だった。患者用の服の上からカーディガンを羽織って寒さ対策をしている。そのまま僕の隣まで来た。

「さっきはゴメンね。言い過ぎちゃった。先生に怒られてやっと。」

「ううん。渚がああ言うのも最もだよ。僕は君を傷つけしまった。本当はね、僕は君を守りたかった。でも、近くにいれば、僕が君を壊してしまうと思ったんだ。だから離れていればそれで良いと思ってた。」

 たがが外れたように、一気に思いの内を話し始める僕。渚はうんと頷きながら聞いてくれた。

「私は本当に戻ってきて欲しかった。あのお正月の日、私は慶斗に不必要なんだって思ったの。それからずっと空虚だった。先生から何を言われても頭には入ってこなかった。その内だんだん“私なんかいなくてもいいよね”って思って。」

「そんな事無いよ!だって渚は大切な幼馴染なんだから。だから、聞いて。僕の決めた事。…僕は不良を止める。止めて君の隣にいて、君をずっと守る。」

 ちょっとした沈黙が流れる。その沈黙を破ったのは渚だった。

「そ、それって…。私に告白したってこと…?」

「え?」

 その後自分の言った意味を反芻してみた。“隣にいる”とか“ずっと守る”とか確かに愛の言葉とかそれに順ずることにしか聞こえない…。

「あわわわわ…、そ、そう言う意味じゃなくて!」

「そう、なんだ…。…でも、それで良いんだ。じゃ、慶斗。それでもいいから私の事、しっかり守ってね!」

「うん。」

 その後、僕は渚を病室に送って病院を出た。向かうのは遥のアパート。公衆電話で夢も呼び出しておいた。大事な話をしよう。とても大事な。


「ただいま。」

「けー君お帰り!」

「慶斗、宇津木なんか呼んでどうするんだい?」

「大事な話がしたいんだ。だから、二人とも聞いて。」

 居間に移って遥と夢を前に、僕は話を切り出した。

「僕は、不良を止める。きっぱりと足を洗う。絶対に戻らない。」

 遥は唖然としていた。夢はニコニコとしていた。先に口を開いたのは夢。

「けー君、やっと決めたんだね。」

「うん。自分にはもう嘘はつかない。“壊す”って言う嘘じゃなくて、“守る”っていう正直になるんだ。」

「慶斗!あ、あんたはアタシを裏切るのかい?」

「遥、聞いて!まだ続きがあるんだ。僕は不良を止める。だけどその行為が遥と夢を裏切る事だって理解してる。だから、考えたんだ。“三人で不良を止めよう”って。ちゃんと学校に行って、ちゃんと卒業する。そして高校にも行こうよ。まだ僕らだって間に合うよ!それなら一緒に居られるから。」

 僕の結論。渚と遥、そして夢の三人を誰一人として裏切らないようにする方法。それが二人にも不良をやめてもらう事だった。

「うん!私はけー君に賛成する!」

「アタシは、嫌だよ。ふざけんじゃないよ!慶斗の馬鹿!!」

 寝室に引っ込んでしまった遥。それに対して夢は乗り気だった。兎に角、僕の気持ちと意見はキッチリと言った。後は彼女たちがどう思うかが要。この日は夢には帰ってもらった。


 夜のうちにこのアパートを出る準備はした。何ヶ月ぶりかに自分の家に戻るんだ。なんだか遥と顔を合わせるのが辛く、その日は居間で寝た。


 朝早くの時間、僕は叩き起こされる。起こしたのは遥だった。

「遥…」

「出てってくれ。アンタの意見には正直失望したさ。アンタにとってはもうこの部屋は不必要だろ?だから出てってくれ。不良はアタシの生き甲斐なんだ。あんた個人の理由で止めたくは無いのさ。」

 叩き出されるように僕は玄関まで押される。居間と玄関に伸びる廊下を繋ぐドアを締め切られてしまった。そうだね、勝手が過ぎたかもしれない。あの計画は所詮、自分の自己満足に過ぎなかったんだ。靴を履いてアパートを出ようと思ったとき、靴箱の上に何かを見つけた。小さな封筒に、“慶斗へ、困ったら開けな”と書かれている。ありがとう、遥。本当はちゃんと挨拶がしたかった。結果的に裏切ってしまった事への、謝罪も込めて…。

 封筒をポケットに突っ込み、家への道を歩き出す。ここら辺の土地勘は不良をしている間に身についた。あの数ヶ月間の出来事を思い出しながら、家を目指す。


「久しぶりだなぁ。」

 まぁまぁ広めの一軒家。昔は仲良く爺ちゃんや婆ちゃんと暮らしていた家。今は僕の家だ。ポストにはたくさん手紙やら何やらが入っている。ドアに手をかけたけど、鍵がかかっていた。きっと渚が閉めてくれたのだろう。そう言えば、鍵持って無いよ。渚の家から合鍵を借りなくちゃ。

 ふとポケットが重くなった気がした。手を入れると遥がくれた封筒に触れる。そう言えば、困ったときに開けるんだっけ。封をしたばかりだったのか、乾ききらない糊のせいで、封筒はパクッと口を開いた。逆さにすると、銀色の物体が。これ、僕の家の鍵だ…。

「まだ何か入ってる。手紙…?」

【慶斗へ。慶斗はアタシの相棒さ。by ノラ】

と書かれていた。家に駆け込んで涙を流した。なんだろう、どうしてだろう…。僕は正直な選択をしたはずなのに…。


 次の日からが大変だった。気付けば料金滞納の為、電気も水道もガスも止められていた。佐渡さんに相談して、復旧してもらう。それから携帯電話も新しく契約した。一人暮らしだから固定電話は不要に思ったから。余談だけど、その直ぐ後に渚と夢も買ったみたい。

 金髪を黒髪に染め直し、学校へ戻る。担任の先生に、直ぐ生徒指導室に連れて行かれ、反省文を書かされた。最低30枚は酷い。だけど、ちょっと驚いたことがあった。

「さて、お前にはこれから反省文を書いてもらうぞ、朱雀。最低30枚だ。そこの女子と一緒に仲良くやってろ。」

「?…夢!」

「あ、けー君!同じ中学だったんだね~。」

 意外なことに、夢は同じ中学に在校していた。どうやら僕と同じ理由で反省文を書かされたことになったらしい。

「そこ!喋ってると10枚追加するからな!」

 反省文が終わっても、学校に行っていなかった時に進んだ勉強が大変だった。必死で勉強して、渚にも手伝ってもらう。どうにかテストでも中程度の順位まで入ることができた。そして、季節は過ぎて夏も間近。進路希望表が配布された。


「けー君、どうしようか。」

「二人とも何処に行くの?」

 渚と夢。この二人はとても仲良くしていた。勿論渚は、夢が元不良だと知っている。だけど、それをさげすんだりすることは無い。そんな大らかな所も渚の美点の一つだと思う。

「う~ん。やっぱり家から近い所が便利だし、勉強だって自分が頑張れば進学校に行く必要も無いしね。だって、進学校に行けば有名大学にいけるわけじゃないでしょ?」

 渚の言う事は最もだ。確かに勉強をする環境は揃うけど、やっぱり勉強は自分自身でやらなきゃいけない。

「だから、やっぱり妥当に考えれば南陽高校かなぁって。」

「私はパパから西花高校にすればってて言われるんだ…。」

 家からの通学を考えて、手近な高校を考えれば、4つの高校が思い浮かぶ。だけど、全部癖が強い学校だ。男子である僕は、女子高の西花へは行けない。東谷高校は変な噂が絶えないし、北川高校は不良の溜り場…。もしかしたら、遥が居るかもしれない。と一瞬考えてしまった。やはり、普通に考えれば南陽が妥当だと思う。だけど、一回だけ殴りこみに行ったんだよなぁ…。あの時に顔を覚えられてると受からないかもしれないし…。

「よし、決まりだね!皆で南陽高校に受かろう!」

 僕の考え事の間に、事は進んでいたようだった。


・倉元留美の交換日記

やったです、とうとうお兄との交換日記を手に入れたです。あ、今度また出れることになったので、その時はお兄と私よろしくです。でも、私の設定がチート少女って何ですか?

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