haruka ~アタシの想い~
とうとう三十話目に突入しました。投稿を始めてからちょうど満2ヶ月が経った計算です。ここまで規則的に執筆&投稿ができた小説はこれが初めてかもしれません。ユニークアクセス4300人を突破しました。ご愛読ありがとうございます。予定より長くなってしまったシリアスパートですが、そこまで暗くは無く、不良になった慶斗とそれを囲む仲間との絆を強調して書いてるつもりです。これからもよろしくです。
~前回のあらすじ~
慶斗がいなくなってから、渚は落ち込んでいた。偶然慶斗と出会うことができた渚だったが、慶斗は冷たくあしらってしまう。
~予告~
今回は白虎遥視点。
アタシは久しぶりに怒ったよ。あそこまで往生際の悪い娘がいたなんてね。
アタシが不良を始めてからもう二年程が経つ。きっかけは思い出したくも無いね。ただ、“人の心の闇”を見た。とでも言っておこうか。慶斗と初めて会ったあの日、アタシは慶斗の中にアタシが持っている物と同じものを見た。確実に慶斗は心の闇を見た事がある。“コイツ私と同じ場を踏んだ事がある”と直感で感じた。だから行く当てが無いと言われた時、真っ先にアタシの部屋に連れ込んだ。同じ境遇の者同士なら仲良くやれる。んまぁ、確かに慶斗を最初女だと勘違いしたことは認めるさ。慶斗を見れば分かるよ、この気持ち…。
元々学校は不登校気味だったアタシだ。夏休みは有って無い物に等しい。毎日が自由な日々さ。そんな中に転がり込んで来た慶斗は、アタシにとって心の癒し?見たいな物だった。同じ境遇を知る者ならでこそ、分かり合える気がした。
分かり合ってたはずだった。ある日アタシが買い物から帰った時。カレーでも作ろうと思っていた。部屋には慶斗は居らず、一枚の置手紙だけが残されていた。“元の生活に戻る”と。いくらアタシでも泣きそうになったよ。信頼してたものに裏切られる気持ちが分かった。アタシはどうすればいいんだい?埋まりかけてた空虚な穴を更に広げられてさ…。
何が起こったかは分からない。だが、朱雀慶斗と言う人間は9月の初日にアタシの目の前に再び現れた。理由は知らないが、戻って来た事は嬉しかったはず。だけど口から飛び出た言動は正反対だった。戻って来た嬉しさよりも、空虚さを広げられた恨みの方が強かった。その内慶斗は立ち去っていった…。
でもさ、やっぱり忘れがたいのさ。気がつけば後を追っていた。勘を頼りに歩いていたら、怒鳴り声が聞こえた。喧嘩か…。私もするのは好きだが、見るのも満更じゃないんだよね…。慶斗を探すついでだと思いながら通りかかった。驚いたよ、その当事者が慶斗だったんだから。アイツには素質があるとは思っていた。その力の根源は本人曰く、“イライラ”らしい。あんな可愛い顔してねぇ…。
「…達者なのは口だけじゃないよ。だって、白虎遥のお墨付きなんだから。」
恐ろしく早かった。あの頭突き、完全に急所を突いていた。どこで身につけたんだろうね?そんな事を思っている間に、慶斗は慣れた手つきで財布を取り出し、金だけを抜き出した。まったく、誰から習ったんだい?
「勝手にアタシの名前を使わないでくれるかな?」
それから話を聞いた。なるほど、要は慶斗の幼馴染を名乗るその女子が原因か。その女が不良だったら直ぐに殴りに行ってたよ。
最終的にアタシの部屋に戻って来た慶斗。何かとアタシも甘いよ。でも、戻ってきてくれてありがたかったさ。だって、人生で始めての心を許せる相棒なんだから。
とある日だった。慶斗に頼まれごとをされた。“日用品を持ってきて欲しい”と。なんで自分で行かないのかが疑問だった。でもまあ慶斗の頼みなら、と夜中を待ってから向った。場所は聞いてたから直ぐに見つかる。へぇ、随分いい家じゃないか。こんな所で一人暮らししてたなんてね。
そこで疑問が過ぎった。“鍵が開いてる”のかどうか。慶斗は鍵を渡さなかったんだからね。半分諦めの気持ちでドアに手を掛けた。しかし、簡単にドアは開く。無用心なことで…。
「慶斗?」
ふと聞こえた声。誰かが電気を付けた。慶斗は一人暮らしのはず。出迎える奴なんていないはずだが…。目の前に立っていたのは女子だった。せいぜいアタシと同年代からそこらだろう。
「誰だい?」
どうやらあっちも同じ気持ちらしい。同じ質問を同時にぶつけてきた。いや、もしかしたら…。ううん、絶対。コイツが慶斗の言ってた幼馴染か。
「アンタが慶斗の幼馴染かい?」
「そう、です…」
何なんだいコイツは…!慶斗を傷つけておきながらノコノコ家に上がりこんで…。苛立ちが抑えきれず、一気に詰め寄って胸倉を掴んだ。泣きそうな目をしてるし。そんな目されたって、アタシにはこれっぽっちも効かないよ。
「慶斗はね、アンタのせいで辛い目の遭ってたんだ。」
ムカついた。目の前の慶斗の幼馴染と名乗る女子がムカついた。慶斗の心を傷付けておいて、自分は泣けば許されると思ってる。
「…もう会いたくないってよ。分かったらさっさと帰りな。」
目の前の女子の拘束を解いて自由にする。今の言葉はアタシの作った嘘だ。だけど、慶斗だって会いたいと言ってる訳じゃない。さっさと帰るかと思ったが、そこに留まり続けた。“どこにいるの?”答えるものか。アンタはアタシから何回慶斗を奪えば気が済むんだい!?
「煩いね、さっさと帰んな。」
追い立てるようにしてドアの外に出す。アタシは慶斗の部屋から服などの日用品を集め、手近なリュックに詰めた。さっさと帰ろうとしたが…。
「まだいたのかい?」
まだいた。しつこい。睨んだ目で見るが、相手も負けていなかった。泣き目ながらも言葉を続ける。
「これ、この家の鍵…。あと、“私は慶斗に会いたい”の!」
アタシが何かを言う前にソイツは去って行ってしまった。会わせるものか、慶斗だって会わない事を望んでるに決まってるさ。
そして、今日。あの日から数週間たった今日。夕食に立ち寄ったファストフード店だった。
「慶斗、だよね?」
アタシはあえて振り向かなかった。このままだと後ろに立つ女子を殴ってしまいそうだったよ。それに、慶斗の本当の気持ちが聞けると思ったのさ。
「お願い、慶斗。戻ってきて…」
「次は…、殴るからね。遥、僕は帰るから。」
これでハッキリしたさ。慶斗は私が思ってた通り、この目の前の女子には会いたくないそうだ。
「んにゃ。OKさ。」
その答えを聞いて慶斗は店を出て行った。同じように店を出て行こうとするその女子の襟を掴んで引き戻した。
「アンタも懲りない女だね。本当に殴られた方が良いんじゃないかい?」
お釣りを受けとる時間が惜しく、直ぐにアタシも店を出た。少し走ると慶斗の後姿が見えてきた。
「やぁ、慶斗。清々しいほどの不良っぷりだったよ。流石はアタシの相棒さ。…慶斗?」
気になって顔を覗き込むと、慶斗は泣いていた。何故だい慶斗?どうして泣くのさ。
「ハンバーガー、もらえる?」
「あぁ。はいよ。」
一つ差し出すと、ガツガツと食べだした。無理しないでいいさ、慶斗。
・玄武大那の交換日記
よっしゃぁ!渚さんと夢さんとの交換日記じゃぁ!!ふむ、なぜ俺があの二人を好きになったか、それを語るには俺の半生から語らなくてはなるまい。
…あれはと新年のことだった。俺は一人で初詣へ向かっていた。ここで勘違いするな、俺の誘いを女子に断られたのではなく、予定があるからと言われただけだ!忌々しい予定さえなければ一発OKの返事は間違いなしなんだからな。まぁいい。そしてその帰りのことだ。三人ほどの女子がムサい、そしてウザイ男共に囲まれていた。なんというシチュだ!これならフラグ成立は間違い無しだ!所謂ギャルゲの主人公になったのだ。アハハハ!
正義の味方登場とばかりに駆けつけ、一人のムサく、ウザク、暑苦しそうな顔に拳を入れる。…其の前に投げ飛ばされた。くそっ、こんなことでは90%立ちかけたフラグを台無しにしてしまう!
しかし、次の瞬間影が躍った。一つ現れたと思ったら、三つにソレは増えた。あっという間に男共を伸した奴ら。月明かりが照らし出し、三つの影をあらわにする。ブロンドの美少女、黒髪の美少女、茶髪の美少女、うん。完璧だ。これは神様が日ごろの行いのよすぎる俺への褒美としてくれたのだ。うんうん、フラグ生産日だな、今日は。
「あっ、けー君。こんな所に残ってるよ。」
「適当にやっておいて。」
次の瞬間、足の裏が俺の顔を踏みつけていた。それ以後の記憶はない。だが、茶髪の少女にもっといじめられたいと思ったのは確かだ。うん。
今日もフラグ生産日なり。