sister ~肝試し~
~前回のあらすじ~
密談しようぜ!そしてキャンプファイアーは地獄の炎と化す。いい思い出になったことでしょう。
~予告~
ハーレムを作れ?を読んだ人は知ってるかもしれない妹キャラを流用しました。(何となく繋がってるようで、繋がってないような。)
遥たち北川高校の生徒により、キャンプファイアーは地獄の炎と化したけど、幸いにもけが人は出なかった。その後も、渚が麒麟さんから貰ったマシュマロを炙ったり、北川の人が持ち込んだ打ち上げ花火で打ち合いしたり。東谷の人が“炎よ俺達の恋と言う名の情熱をもっと燃やしてくれ”なんて言ってた。ウザい。
炎が収まる頃、僕らは肝試しを始める事となる。北川の人が準備に取り掛かり、他の高校は一緒に回る人を決め始めている。さて、僕も…。最後のマシュマロを口に放り込んで立ち上がった。
「けー君。一緒に行こ?」
「慶斗は私と。」
二人とも…、無理する事無いのに。だって、さっきから他の男子が渚たちを誘ってるの知ってるし。それなら、嘘をついてでも…。
「実はさ、僕一緒に行く人が決まってるんだ。だから、渚たちも自分が行きたい人と行けばいいんだよ。じゃぁ。」
答えの有無を聞かず、僕は走り出した。当てがあるわけじゃない。だけど二人の目の前から動かないと…。
二人にはあの様に嘘をついてきたけど、本当にどうしよう。一瞬“ボクが一緒に行きましょうか?え、でもそんな…。野外でなんて、イヤン♪”なんて声が聞こえたけど、幻聴に違いない。
腕組みしながら、これからどうしようかを考えていると、目の前に数人の女子が現れた。やば、南陽の体操着を着ていると言う事は、瀬波さんと同じクラブの人に違いない。僕が一人の所を見計らっていたんだ…。ライフ○ード出動。“逃げる”“受けて立つ”“平謝り”“女装以外でお願いを聞く”
さて、解析しよう。二番三番は嫌だ。こんな所でプライドは捨てたくない。四番目はうまく話しを運べば可能かも知れないけど、不可能に近い。選択肢は一番のみ!
神速の名の出番とばかりに、走り出そうとする僕。しかし、何時の間にだろう。囲まれていた。やばいぃぃ!囲んでいるのは全員女子、となると暴力を振るうわけには行かない。選択肢は四番となった。
「ちょっと朱雀君、いいかな?」
「女装は嫌です。それ以外なら何でもしますから!」
「あらそぅ、良かったわね、留美。一緒に行ってくれるって。」
あれ?意外に簡単だった。よく見てみれば、いつも僕を追い掛け回す女子じゃなかった。誰…?そんな事を思ってると、囲んでいた人の後ろから、少し小柄な女の子が現れる。髪は栗毛色のセミロング。パッチリとした目が印象的だった。
「まだ肝試しの相手、決まってないんでしょ?それならこの子と一緒に行ってくれない?」
「え、まぁいいけど…。」
「良かったね、留美ぃ。」
「うん…。」
「この子、倉本留美って言うの。仲良くしてあげて。じゃ、後は留美に任せた。私たちは適当に相手探しておくから~。」
そう言って、他の女子は去って行ってしまった。“倉本留美”と言う名の女の子を残して。
「えっと…、倉本さんだよね?初めましてかな?」
「は、はい…。よと、よろしくお願いします。…本当に良かったんですか?もしかして、本当は他に相手がいたとか…。」
「それは無いから大丈夫。そろそろスタートだから行こうか。」
スタート会場まで着くと、既に人が並んでいた。どうやらスタート順も適当らしい。東谷の生徒たちのほとんどは男子二人組みだった。ザマミロ☆
「これより第54次肝試しを勃発させる。総員かかれ~!」
一組、また一組と出発していく。僕らは真ん中の後ろよりなので、それなりに暇はあった。…会話が出来るかは別として。
「倉本さんは何か趣味とかある?」
「格闘技…。」
「すごいね。流派とかあるの?」
「我流…。」
「一人っ子?」
「お兄が以前行方不明に…。」
「あっ、ゴメン。」
すると、先程の女子が来て僕を引っ張っていった。話によると、彼女のお兄さんが昔に行方不明になったらしく、その後倉本さんは、イメージの中でそのお兄さんを思い描いていたようだ。そのせいで性格が少し暗いものになってしまった、と言うことらしい。で、僕はどこと無くそのお兄さんのイメージに似ているとか。
「あの子、ブラコン気味だから…。まぁ、そういう所には触れないであげて。」
「分かった。…因みに僕と倉本さんのお兄さんは、どこがどう似てるの?」
「詳しくは分からないんだ。んじゃね。」
そう言って、去って行ってしまった。僕は倉本さんの所に戻る。
「ゴメンね、変なこと聞いて。知らなかったんだ。」
「大丈夫。」
「そろそろ僕達も出発だね。」
「うん。」
なんやかんやで、僕らも出発する事になった。懐中電灯、蝋燭なし。月明かりのみが頼り。
最初の仕掛けは、僕が引っかかった。顔にベチャっと何かがへばりつく。こんにゃくか、ベタだね。引き剥がしてよく見ようと思ったら、こんにゃくが“またか、これで何人目じゃ…”とか喋りだした。待て待て待て!なんでゴロちゃんが此処にいるんだよ!?
「ゴロちゃん、何で此処に?」
「拉致られたZE☆」
突っ込みにくいので、あえてスルーしておいた。更に先へ進むと、火の魂が浮かんでいるのが見えてきた。よく出来てるね、だけど…、さっきから腕を放さない倉本さんがどうにかならないかなぁ…。いや、悪いとは思わないよ。僕は男だって自己認識してるわけだし。改めてライフカード。“無理に引き離す”“甘い言葉で何とかする”“ラジオ体操第3をする”“腕に関する怪談話をする”
まともな選択肢が無いのは気のせいだろうか?
先程の選択肢は全て破棄して、更に奥へ進む。あ、因みにさっきの火の魂だけど、光る親父の禿げ頭~。なに言ってるんだか、僕…。
またしばらく行くと、うめき声が聞こえてきた。この状況の中、不気味さが増す。恐る恐る近づくと、そこには巨大な蜘蛛の巣が張られており、生徒たちが餌食になっていた。どれだけ巨大な蜘蛛がいるんだよ!この森すごいよ!少年の家とか建てる場所じゃないって。
「あぁ!ケイじゃないか。皆喜んでくれ!萌えの貴公子が我々を助けてくれるぞ!」
僕はそこまでお人よしじゃないんだ。ドンマイ☆華麗なるスルーでそこを通り抜けようとした時、“キシャー”なんて言う声が聞こえた。振り返れば巣の主であろう巨大な蜘蛛がいた分けで…。待て待て!昨日の熊より大きいじゃん!よく見れば何かの動物の骨転がってるよ?
ジリジリと迫りくる不気味な八足動物から距離をとろうと、二人で後ろにゆっくりと動く。何時からこの小説は戦記物なったの!?そう思っていると、背中にビチャっと何かが張り付いた。あはは、嫌だなぁゴロちゃん。こんな時まで驚かそうとするなんて。流石は仙人だよ。恐れ入ったよ。ね、だからゴロちゃん何か言ってって!
背中に目を向ければ、目に映るのは白い粘着性の糸だった。しまった、罠にかけられた。僕らは何時の間にか追い詰められていたんだ。なんとか逃げ出さないと…。しかし、粘着質の為僕には千切れない。夢や蛇慰安戸君の様なパワータイプの仕事だ、これ。
「…王手秘儀、ブレイズシェア」
え、倉本さん何か言った?次の瞬間には倉本さんは消えてて、本来いた場所にはポッカリと空いた穴と黒く焦げた蜘蛛の糸。下を見れば倉本さん。
「我流奥義、灼熱回転ドロップキーック!」
「ギシェェェェェッ!」
よし、状況を言葉で表せる限り表現しよう。足に炎を纏った倉本さんは、空高くへジャンプしました。そして空中から回転しながら巨大蜘蛛にキック。こんな所だろうか?
倉本さんの奥義を食らった巨大蜘蛛は、仰向けになって淋死状態。あ、ゴメン。“臨死”ね。何が淋しいのかさっぱりだ。それでもって、“ギェギェギェ”とか気持ち悪い声を出している。さっさと死ね☆
その後、僕も巣から救出してもらった。
「こ、怖かったです~。」
うん、今頃言われても困るな。あんな技を見せられた後じゃ。
「お兄、ギュッてしてください。はぅっ、お兄じゃありませんでした。ごめんなさい…。」
「あぁ、謝らなくていいよ。助けてくれてありがとう。行こうか。」
「はいです。」
どこか口調に変化が起きていたのは気のせいだろうか。後ろから、“ケイ!これは何と言うプレイだ!?置き去りプレイか?それとも放置プレイか?もしかして、生贄プレイか何かか!”とか言ってるのは無視無視。どうせ蜘蛛の腹を破ってでも帰ってくるでしょ。だって、コメディーですから。
「ケイ、俺と言う人間は君を何処までも愛してるというのに、これは何だ?プレイの名も言わず立ち去るとは…。」
「ギェギェギェギェギェ!」
「そこ!笑うな!俺が一人演説をしているというのに!一角獣誠也に天馬鹿狩!」
「ギェギェ、…バレテやしたか。兄貴、ご苦労さんでさぁ。」
「蜘蛛の糸は空気に触れて糸となる。この着ぐるみは暑かった。」
どうやら、この蜘蛛は気ぐるみであり、その中にいたのは北川のあのコンビだったのだ。因みに、鳴き声担当が腰巾着こと一角獣誠也。動作担当が蛇慰安戸・馬鹿こと天馬鹿狩だ。
「神速は何処までやるんでしょうかねぇ?」
「何を言ってるんだよ。ケイの相手は昔から俺のみだ。」
「ふっ、全ての女性は僕の物さ。」
「黙れ、田中元太…「それ以上言うな!」…弱味見っけ。」
『ギェギェギェギェギェギェ…』
「おい、誰だよ。今更変な声出して。」
「俺じゃねぇよ。もちろん兄貴でもないでさぁ。」
「おい、田中ぁ~。」
しかし、彼らは気づいていなかった。一角獣誠也の出した声に集まりつつある、黒い巨体に…。
僕は先程から大変だ。蜘蛛の出現で覚醒してしまったらしい倉本さんは、次から次へと脅かそうと試みる北川高校の不良を片っ端から薙ぎ払ってしまうのだ。しかもそれが終わると、お決まりの決め台詞“怖かったです~”の羞恥プレイ。この差はなんだ?しかもその“お兄”と呼ばれる存在は一々抱きつくように教育したのだろうか?まったく…。
さて、そろそろゴールも見えてきた。この倉本さんのお陰で肝試しが肝試しらしくなかったことを追記しておきます。
「あ、あの、お願いがあるのです~。良かったら、本当のお兄が見つかるまで、朱雀さんをお兄と呼んでいいですか?」
「え、えっと…、それは…。」
「駄目ですか?」
「いや、でもさ…。」
「拒否権は無いです。」
てな訳で、僕は倉本さんから“お兄”と呼ばれるようになった。ついでに言うと、僕は倉本さんを“留美”と呼び捨てにしなくちゃいけないらしい。まぁ、兄妹なら妹を呼び捨てにするのは不思議じゃないし。それに、彼女が元気になったなら何よりだしね。そう考えれば、お安いものさ。
「お兄、ギュッてしてくださいです~。」
それはちょっと…。渚にもした事無いし…。
「お兄、駄目ですか?」
そんなウルウルした目で見ないで。本当にそういう目に弱いんだよ、僕。留美の本当のお兄さん、恨みます…。
「ちょっとだけだからね…。」
僕は留美を抱きしめる。細身の体は僕の力でも折れそうな感じがした。恥ずかしさも相まって、僕は直ぐに離してしまう。“何を勿体無い事を!”と思われるかもしれないけど、正直に言うよ、僕はチキンです。文句ある?
朱雀の交換日記
・次からちゃんと書くよ。