thriller ~ちゃんと歌え!~
~前回のあらすじ~
麒麟と名乗る新キャラに、近未来で迷惑をかけられる事を知った朱雀。ゲームはそっちのけでマシュマロ狩りに徹するのであった。
~予告~
ゲームにあの人が飛び入り参加。
ゲームの結果だけど、僕たちは尻尾を取られました。と言うより、渡した。実を言えば、これ以降出番が無さそうな名前も知らない男子が来て“尻尾を一本100円で買い取りたい。”って申し出てきたんだ。因みに僕が持っていたのは合計16本。渚と夢を足せば18本だから、1800円の儲けとなったのだ。別にゲーム自体に興味無かったので、渚たちと規定の場所に行って寝てた。木陰で寝るのは本当に気持ちがいい。その内訓練も終わったらしく、北川以外の全員の生徒が戻ってきた。
「うしゃぁ~!私の勝ちだよ!」
大量の尻尾を持っていたのは、あの生徒…、ではなくヤクミンだった。あれ?なんでヤクミン先生が実技訓練参加しちゃってるんですか!?その後ろから付いてきているのは、名も知らぬあの男子生徒。泣いてた。それもそうだよね。大枚叩いて尻尾集めたのに、自分のが取られるって言うオチはないね…。こんな情景が浮かぶ。
『尻尾貰った~!』
『何っ!?待った先生!先生の尻尾、一本百円で買いますよ。』
『残念、私は持ってないのだ!』
『なんとっ!?』
『いただき~!』
『ぎゃぁぁぁぁっ!』
『さぁ、あの夕日を追いかけようじゃないか!私について来い!』
『うえぇぇっぇぇ~ん』
以上、回想終了。十中八九あってる事は確実だろう。残念でした、ドンマイ☆
「さて、これから表彰式を行う。一番尻尾を多く取ったヤクミン先生、前へ。」
静々とヤクミン先生が表彰台を登る。ごく○んの最終回を思い浮かべたのは僕だけだろうか?
「合計、260本。よく頑張った。勲章だぞ。」
260本。これは全てあの男子生徒から奪ったものだろうから、彼はおよそ2万5千円以上を失った事になる。ドンマイ☆
「では、優勝者のヤクミン軍曹からの演説だ。」
「紹介に預かりました、ヤクミンこと錫久美恵です。この度は実技訓練にお招きいただいた事を感謝いたします。今私は新たな勲章を胸に、この台に立っています。これは私のみにならず、皆さんのおかげだと私は思います。この場を借りまして、お礼を申し上げます。ありがとうございました。」
パチパチパチと拍手が鳴る。色々突っ込ませてもらうよ。“貴方は招かれて無い。”“勲章は胸じゃなくて肩に付いてる。”“一人の男子生徒のお陰が100%です。貴方は何もしていません。”それでもなお、ヤクミン先生は話を続けるのだった。
「時には殴り合ってお互いの大切さを知り、時には他校の不良から仲間を救い出しました。そうやって彼らは大人への階段を登ってきました。私は教師としてそんな馬鹿共の世話をしながら、一番近いところで彼らを見てきました。ですが、それは苦ではありません。むしろ成長する姿を見せ付けられ、嬉しさを抱きました。…あの時のイタズラはマジでムカついたけど…。“黒板消し落とす”とかどれだけ古風な手を使ってんだよあいつら…。あぁ!考えてるだけでムカついてきたぁ!!ちょっとぁ締めてくる。」
そう言うと、壇を駆け下りて森の中に消えていった。
「以上でヤクミン軍曹の卒業式の挨拶の練習を終わる。全員敬礼!」
僕達は誰も立っていない壇上に敬礼をするのだった。
夜のキャンプファイアーに向けて少し早めの夕食を食べていた時、ヤクミン先生率いる北川高校の生徒が戻ってきた。遅くなったのは、きっと説教をしていたからだろう。僕らは夕食を食べ終えて、少しの時間の休憩に入ることにした。ベッドに寝転がっていると、東谷の二人が入ってきた。
「よし、これから密談しよう。」
「密談しようぜ。」
君たち、人が聞こえるような大声で、“バンドやろうぜ”みたいなノリでそういう事を言わないで欲しい。逆に気になるだろ?
「今日の肝試し、俺達はそこでハーレムの基礎を作り上げる。それで正しいか?」
「あぁ。」
無理だ。絶対無理だと思う。なんで発想が玄武君並なんだよ?あ、違う。玄武君の発想が東谷に似ているだけだった。元ネタは東谷高校なのだ。
「情報に寄れば、肝試しの組み合わせは自由だそうだ。下手なくじ引きよりは俺たちの様な美貌の持ち主に女子が寄ってくるはずだ。」
「そうだな。」
君たちはどうやら、昨日の勝負の結果を覚えていないようだね。でも、僕は誰と回ろうか…。くじ引きなら半強制的な所があるけど、自由って言うのは本当に難しい。パッと思いつくのは渚と夢と遥。遥は北川だから無理。渚たちもたくさんの男子からお呼びがかかることだろう。あの麒麟って言う人?論外です。命が危なそう。だからってあの人が敵対するような組織の人ともゴメンです。結局は成り行きに任せるしかない。おっと、話が逸れちゃった。
「いいか、ジョー。お前が女子にしつこく言い寄る役になれ。俺がそれを救う役になるから。そうすれば、俺がハーレムをだな…。」
「待て!それは俺を犠牲にする前提で言ってるよな?」
「?最初からそういうつもりだったが…。何か問題があったか?」
「ライアン…。本名で呼ぶぞ!」
「すまない、冗談だから、それだけは止めてくれ。」
仲間を踏み台にするか、ライアン・リノック…。いや、田中元太郎。弱味を握った、ニヤリ←僕の心からの笑み。
「ケイ、その笑顔、萌え…。い、殴るのだけはおやめくださいませ。そんな事より…。俺と肝試しを回らないか、ケイ?なぁに、怖くなったら俺の胸に飛び込んで来い!」
二段ベッドから直下型ドロップキックをかます僕。床にのめり込んだ翔太は死んだのだろう。動く事は無かった。下の階から悲鳴が聞こえるけど、きっと足が階下に貫通しただけだろう。大丈夫、これコメディーですから。あっ、そろそろキャンプファイアーに行こうか。
あれ?そう言えば、翔太も田中君も何時人間に戻ったのだろうか?果たして玄武君は戻っているのだろうか?いや、彼はどうでもいいか。
「翔太、いつ豚から人間に戻った?」
「豚?何の事だケイ?俺は決して豚などには…。っ!そうだったのか!すまないケイ、俺は今でも豚だよ。ふっ、君もそういう方面に興味がある、と言ってくれればいつでもやってあげたのに。そうさ、ケイは女王様役、そして俺はそれに虐められる忠実な豚野郎さ。」
次の瞬間には翔太は全ての階を通過していました。きっと豚の時の記憶はご都合主義で消えているのだろう。
キャンプファイアーの会場には、人がそれなりにいた。確か火を囲むように円陣を組めという話だった気がする。適当な場所に腰掛けると、遥が来た。
「やぁ、慶斗。どうだい?私たちの作ったキャンプファイアーは。壮観だろぉ?」
「う~ん、正直言ってイマイチ?燃えてないし。」
「萌えてない?」
「火がついてないって事。」
そんな馬鹿な話をしながら、僕らは話を続けていた。そんな時、遥がふと思い出したように言う。
「慶斗、“命が惜しいなら”ここ離れた方がいいと思うよ。」
そう言ってニヤッと笑うのだが、僕としては冷や汗が流れるほどだ。何故って?遥が“命が惜しいなら”とか“殺してもいいかい?”なんて聞いた時は、完全に危ない。素直に従った方が身のためと言う物だ。
僕の呼びかけで、渚と夢は僕らと一緒にキャンプファイアーから離れた場所に移動した。しばらくすると、辺りは暗くなり、生徒も集まってきたのだった。
「よし、きっと総員揃ったから夜の集いを始める。火の精霊よ、全員突撃。」
すると、トーチに火をつけて会場に入ってくる人がいた、合わせてバックグラウンドに音楽も流れはじめる。
『♪It's close to midnight…』
あぁ、雰囲気は出る気がするんだけど、選曲を微妙に間違っている。確か曲名は“thriller”だよね、有名な曲だし。
「♪ハンハンハン、スリラー!スリ~ラ~、ナ~イト。ハンハンハンハハン…」
歌詞うろ覚え?しかもスリラーしか聞き取れないし…。まぁ、歌はどうでもいいとして、その火の精霊たちがトーチをキャンプファイアーに点火した瞬間、いきなり燃え上がったのだ。
「遥?あれって…。」
「灯油さ。よく燃えてるだろ?」
使いすぎって突っ込もうと思った瞬間、生徒の座る場所に火が襲った。花火がドーンと上がり、てんやわんやの大騒ぎ。
「遥?」
「祭りは派手なのがいいだろ?」
・西花高校の先生
鞭使い。戦闘能力は5000AP。必殺技は鞭を蛇のようにしならせて相手を叩きのめす、“スネークパニック”。因みに、アイテム入手によってパワーアップが可能。(そのアイテムも数話後に解禁)