usual ~僕らの日常~
~前回のあらすじ~
幼馴染に何時ものように起こされた朱雀は、登校途中に女子から耳をハミハミされてしまう。ミイラ取りがミイラに。何時の間にか『慶斗の耳ハミハミ対決』が始まってしまった。
~予告~
レギュラーメンバーがもう二人出ます。
校門を通って校舎を目指す。そのまま下駄箱に向おうと思ったんだけど、無理なんだよねこれが…。
「待っていましたわ、朱雀ちゃん。」
一人を先頭に、数人の先輩方が僕を待っていた。因みに全員女子ね。で、何の為に僕を待っているのかって言うと、『僕を女の子にする』んだって。噂では僕、童顔って言うか、女顔らしくて、男の子より女の子として生きた方が人生はハッピーになれるって何回も言われたんだ。最初は何かの新興宗教かと思ったんだけど、ペンダントの押し売りも無いみたいだし…。どうやら素で言われてるみたい。
じわじわと近寄ってくる先輩方に、僕は後ずさりして逃げようとする。でも、何時の間にか後ろに回りこまれてて…
「ウフフ、逃がさないわよ。ジュルリ…」
食べられちゃうぅ!?その時だった。僕を囲む女性軍の輪をジャンプして飛び越え、僕の前に立ちはだかった影。ヒーロー登場って感じ。やたー!
「やぁ、女性の皆さん。この俺、青龍翔太がケイに変わってお相手しましょう。」
僕の友達、青龍翔太。切れ目が印象的な、誰もが認めるイケメン。だけど、その切れ目が見るのは女の子の胸ばかりなんだってさ。あぁ、言うの恥ずかしい…。で、本人曰く、翔太のストライクゾーンは年齢が同じ、もしくは一個下なら、胸はオールレンジなんだって。そのせいか、僕を初めて見たときに、女の子と思ったみたい…。迷惑極まりないね。性別もオールレンジだと思う。
「ケイ、君は僕が守るよ。同性愛が何だ、君のその可愛い顔なら万人が認めるカップルになれるだろう。」
バキッ!今のは僕が翔太の顔を殴った音。少し吹っ飛んで、先輩方の足元に着地。翔太、目を覚まそう。とりあえず万人に認めさせなきゃいけないのは、君の脳は無性生殖生物よりはマシだって言うことだから。
「おぉ、絶景かな絶景かな…」
翔太が先輩のスカート覗きこんでた。勿論、そのまま蹴り飛ばされた。ドンマイ☆ 蹴られた衝撃で脳のしわが増えてる事を祈るよ。もしかしたら一度かき回して整形し直した方がいいかも知れないね。
「下衆な邪魔者はいなくなりましたわ。さぁ、朱雀さん。早速女子更衣室へ…。女子の制服からメイド服、チャイナ服まで用意していますわ。ジュルル…」
この学校のコスプレ委員会から借りた物だろうね…。どうしよう…。翔太は逝っちゃったし、女の子に拳は振るわないって決めてるから…。
「けー君は私が守る!」
「私も!」
再び誰かが飛び込んで来た。渚と夢、手を広げて僕を挟み込むように立っていた。よかったぁ…。すると、先輩方の方でも動きが起こる。
「お姉さま方、今は引き下がりましょう。時間はまだたっぷりと有りますわ。」
そう言ったのは、僕と同じ一年生の瀬波瑚南。モデル並みの体型で、美人。瀬波さんは僕専用女装クラブの副リーダーやってるみたいで、それなりに発言力があるみたい。彼女の発言で僕達を囲んでいた皆は去って行った。残ったのは瀬波さんだけ。
「ありがとう。瀬波さん。」
「貴方の為にやったわけじゃないの。渚と夢が傷つくのを防いだだけ。いい事?あの子達は絶対に君なんかにあげない!」
お礼言ったつもりなんだけどなぁ。瀬波さんは所謂『百合』っ娘で、特に渚と夢を気に入ってるみたいなんだ。で、何時も一緒にいる僕が目の上の瘤らしい。そこで、どうにかして僕を二人から遠ざけようと考えた結果、僕を女の子にするすれば渚と夢が寄り付かなくなるって思ったみたい。本人が惜しげもなく教えてくれた。そう言うことを考える所は翔太と同じ。
「瑚南、ありがと。」
「!渚に褒められたぁ!これ以上に嬉しいことは無い。さ、さぁ渚、早速二人だけの世界に…ゴクリ…」
始まっちゃった…。穢れしピンク色の空間。渚が嫌そうな顔してるけど、口を動かして『こっち来ちゃ駄目』って言ってる。僕が巻き込まれるのを危惧してるのかもしれないけど、絶対に行きたくない領域だよ。
「さぁぁ渚。心を預けて私に全てを委ねるのよ…。」
「あんっ、きゃ…」
朝から聞いちゃいけない声だよね?自重してよ。瀬波さんがこれ見よがしに僕に見せ付けてくる。僕はそんな風景見せられても、軽蔑しか浮かばないよ。そんな事思ってたら、後ろから夢が忍び寄って首筋に手刀を…。
「愛の試練か、それとも嫉妬か夢…」
と言って崩れ落ちた。流石は夢。対人戦闘術に優れてる。聞こえは悪いかもしれないけど、本当に感謝してるんだよ?朝からこんな事に巻き込まれる僕としてはね。
「さ、けー君行こう!」
僕の手を取って夢が歩き出す。渚も直ぐに僕のもう一方の手を取った。両手に花ってこういう事を言うんだろうけど、周りの眼が痛いよ。ぅぅ…。
「そう言えば、翔太どうする?」
何時の間にか起きてた翔太。頭部を重点的にやられたのに、脳震盪所か傷一つついてない。アレがイケメンの力、ご都合主義と言う便利な異次元的力か…。立ち上がって制服の汚れをパンパンと払い、髪をサラッと掻き揚げながらツカツカと此方にやってきた。
「独創的な愛情表現だな、ケイ。」
にっこり笑ってもう一発拳を入れておいた。男子に拳を振るうのはためらわないからね。
教室に入ると、何時の間にか翔太と瀬波さんがいた。
「それでさ、お前ってどっちが好みな訳?」
入室早々翔太が僕に聞いてきた質問。主語が抜けてるし、まずもって意味不明だし。だから、何の事?って聞いたら、
「け、ケイ…。その首を傾げながら聞くの止めろ、萌えるから…。いや、拳はもう止めてクダサイ。んで、俺が聞きたいのは渚ちゃんと夢ちゃん、どっちが好きなんだってことさ。」
「勿論、どっちもだよ。」
友達としてね。プシューって音がして振り向いたら、渚と夢が顔を真っ赤にしてた。どうしたのかな?翔太に至っては『童顔、しかも鈍感で鬼畜とか超萌え…』とか言ってたので、もう一度拳を入れておいた。二人とも美人だし、優しい。だけど、僕は二人を恋愛対象に見ちゃいけないと思うんだ。特に渚には。
「おーし、朝のHR勃発だ~。」
入ってきたのは、軍服に身を包んで赤いベレー帽と眼帯を付けた、口ひげが立派な男性。何を隠そう、このクラスの担任です。名前は、護国鬼一郎って言って、クラスメートから付けられたあだ名は『鬼曹長』。名前が相当痛いね。先生の両親の顔を見てみたい。で、この鬼曹長先生(歴史担当)は全ての事森羅万象万物を戦争とこじつけようとする。好きな言葉は『湾岸戦争』、嫌いな言葉は『無血開城』。根っからの戦争屋さんだってさ。所謂時代遅れな可愛そうな人。
「今日はお知らせが有る。たった今私の所属する機関によってこの国は占拠された。よって、今日の授業は全て家庭科とする。」
家庭科関係ないよね?しかも占拠されたって、何やってるのさこの国。って言うか先生の機関強過ぎでしょ…。
「曹長、作戦内容は!」
翔太が立ち上がって敬礼のポーズをしながら聞いた。ノリがいいね、翔太。先生は肩に掛けたライフル銃を掛けなおした。因みに銃弾の変わりにチョーク使ってるよ。予算の関係みたい。備品室からいくらでも拝借できるんだって。もちろん、返却予定は無いけど。
「ナパーム弾を作れ。」
ナパーム弾?あの燃焼系爆弾の事?
「かつ、食べれる範囲だ。」
無茶苦茶にも程があります。貴方はお腹の中で何の実験をしたいんですか?
「作戦開始時刻はマルキュウマルマルを持って開始する。総員持ち場に着け!」
『ラジャ!』
「やってらんねー。」
一人が何を思ったか、拒否した。君は勇気ある青年だったよ。鬼曹長先生に歯向かうなんて。だけど、さようなら…。
タタタタタッ
火花の代わりにチョークの白い粉が、弾丸の代わりに白チョークが放たれた。それは一人の男子学生の頭で砕け散り、赤い跡を額に残して倒れ伏した。
「貴様は軍に逆らった。誰か、衛生兵を呼んで置け。」
そう言い残して鬼曹長先生は教室を出て行く。直ぐに衛生兵(保健委員)が駆け寄り、肩を担いで教室を後にする。その光景を見ていたら、僕の制服がチョコンと摘まれた。振り返ると渚がいた。
「一緒に…、やろ?」
断れないよね。まぁ僕も誘おうかなって思ってたし。勿論、夢と翔太も一緒に。
で、家庭科室にマルキュウマルマル、即ち9時に集合した。エプロン代わりに、軍服を着用している。
「突撃!」
鬼曹長先生が言い放った。え?作り方の解説とかは?ガガガガガガガと黒板に何かを書いている先生。先ほどのライフルで黒板を穿ってた。で、書かれた内容が『イチゴーマルマル迄に完成させよ、不可能の場合には軍人会議に出頭すべし』と書かれていた。兎に角6時間はあるみたい。
集まったメンバーは、渚と夢、瀬波さんに翔太と僕の何時もの五人。先生は教師用の机にお皿を置いて、ナイフとフォークを持って座っていた。胸元には白いナプキンがしっかり取り付けられており、食べる準備万端。え?本気で食べるの?
「是より、作戦会議を始める。臨時でリーダーを務める事になった青龍だ。俺がリーダーを務める限り、死人が出ない事を約束しよう。ただし、訓練で死ぬこと無かれぇ!」
『サー、イエッサー!』
「よぉし…。是より原料を調達する。各自一番の好物を持参せよ。」
ナパーム弾関係ないよね?そんな物で作れるの?何考えてるの翔太…。いででででで、イタイイタイ!
「私の好物…。」
夢ぇ!僕の耳を引っ張らないでぇ!千切れちゃうから。
「あぁ、夢ちゃん。気が合うね。僕の一番の好物もケイだ。私情を持ち込むのはいけないが、よし、お前を一階級特進させてやろう。」
「ありがたき幸せ!」
バスコンッ!とりあえず翔太は殴っておいた。
「朱雀一等兵…。臨時とは言え、格上の私を殴るとは…。反逆罪と言いたいが、萌えにより、無罪放免…。」
とりあえず蹴っておいた。
「ねぇ、渚。渚の好きな物って何?」
「え!えっとね、あの…。」
何で顔を赤くしてモジモジするのさ?そんなに恥ずかしい物なの?
「熊の、お人形…。恥かしいッ…」
どうやら、熊のぬいぐるみらしい。渚もやっぱり好きなんだね。子供っぽいから恥かしがってたのか。
「慶斗のは?」
「僕は…。今、この時間かな。こうやって馬鹿みたいな事やってる今が好き。」
正直に言った。学生だから許されるこの時間は一生に一度しかないからね。こうやって、渚や夢と話したり、翔太を殴ったり。先輩方に追い詰められたり。全てが充実してると思う。いやいや、食べ物から遠ざかってるし、唯一僕のだけ実体無いし…。
「私の好物は勿論女の子よ。」
渚をかっさらうように抱きしめた瀬波さんは、腕の中でガッチリとホールドした渚に頬ずりしていた。
「やっぱり良いわぁ。女の子だからこそ、この感触。この柔らかさ。やっぱり女の子が一番ね…。」
右では翔太と夢が軍人ごっこしてるし、左では渚と瀬波さんの百合劇場が。何だか置いてけぼりを食らった感じだなぁ。
「宇津木二等兵!君ならナパーム弾に何をかけて食べる。」
「醤油であります。サー!」
「フム、俺はストレートに塩だ。醤油は良しとしよう。だが、ソース派は許せん!」
「恐れながら!私は先週までソース派でありました。サー!」
「なぬぅ!?まぁ、しかし朱雀一等兵は、萌えの塊だから特例で許可だ!」
「イエッサー!」
何だよあの軍人コント…。意味不明だし、第一ナパーム弾を目玉焼きと同一視していない?あぁ、こんな調子で作れるのかな…。今の内に僕だけでも作り方を調べなくちゃ。こういう時に役立つ『lumipedia』。ウィキじゃないから気をつけてね。僕の友達が私設で解説してるサイトだから。えっと、何々…。原料はヤシの実か…。要は燃えるものをたくさん入れれば良い訳だね。さてと、まずは原料から集めなくちゃ。