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explode ~飯盒炊爨~

~前回のあらすじ~

道との遭遇の後、道に迷った朱雀は、幾多の苦難を乗り越えて帰ってきたのであった。


~予告~

ピンクフリフリ、ドッカ~ン!

 さてさて、僕が意識を取り戻した所で飯盒炊爨が始まることとなった。集まったメンバーは僕と渚と遥と蛇慰安戸君とライアン君。翔太は玄武君の所に行ったし、夢は瀬波さんに連れて行かれてしまった。最近瀬波さんを見ないけど、夏休み以降にある“文化祭編”まで主だった出番は無いそうだ。と言う裏設定を聞いたことがある。そんな彼女に連れて行かれた夢、内心夢がこの班に参加していないのにホッとしているのは秘密だ。え?何でかって?日常編をご覧ください。

「じゃ、とりあえず役割分担でもするかい?アタシは渚っちと材料切ったりしてるかさ、男たちは火でも熾してくれよ。」

「ターメリックはウコンの粉末。分かった、俺達に火は任せろ。」

「慶斗はアタシたちといてもいいさ。」

「僕も火の番をするよ。あまり料理で力になれそうに無いから。」

「お嬢さん方、この俺、ライアン・リノックがご一緒いたしま…、薪を持ってきます。」

 まぁ、遥が包丁持ってたらそう答えるしかないよね…。

 そう言えば、渚がさっきから全く喋ってない。遥の様子を見てる限りではお互いを嫌ってるようには見えないんだけど…。もしかして、二日酔い?

「渚、大丈夫?」

「え、ぁぁうん…。まだ頭がガンガンするかな…。」

「おっかしいねぇ。アタシがあげた薬飲んだはずなのに。」

「遥は二日酔いなんて無いでしょ?」

「あたりまえさ。私があげたのは“酔い止め薬”さ。バイクじゃない乗り物には弱くてね。」

 遥…、それは何か違うよ。兎に角、渚は時間が経たない限り治りそうに無いね。指切らないように気をつけて。ゴロちゃんが僕の肩にチョコンと乗った。

 

 さて、僕達が薪を運ぶための台車を運んでくると、先に来ていた男子たちがヒイヒイ言っていた。どうやら薪を切っているらしい。近くの看板を見れば、“少年よ、大木を抱け by 少年の家管理者”と書かれていた。抱けじゃなくて、切れでしょ?全く、仕事を増やして…。

「赤松の下にマツタケあり。俺が引き受けよう。お前らは台車に乗せろ。」

 そう言って、蛇慰安戸君が薪切り用の斧を持ち上げた。何か思い出しかけたんだけど、思い出したくない気がする…。

 蛇慰安戸君の斧裁きは凄まじい光景だった。一振りで輪切りの大木が4つ8つになるんだもん。流石は力自慢だね。僕はそれを台車に乗せ始める。

「ほら、ライアン君も手伝って。」

「なぜ俺がこんな庶民の重労働なんかを。君も見たまえ。東谷の生徒が働いているのが見えるか?誰一人としていないだろう。これが現実と言うものさ、こんな仕事など、南陽と北川の下僕人のするべき事と言う意味なんだよ。」

 今マジでムカッて来たよ。青筋が浮かんだと思う。蛇慰安戸君も斧を動かす手を止めた。チラッと此方を見てくる。僕は軽く笑みを浮かべた。あっちも分かったと言わんばかりに頷く。ゴロちゃん、ちょっと危ないから。

 蛇慰安戸君が木を一本引き抜いてきた。僕はご都合主義で取り出した縄を構える。縄でライアン君を木に縛り付けた。

「この、お前ら何を!」

「さぁね?」

 そのまま木を立てる。ライアン君は所謂晒しと言うか、貼り付け状態。いきなりの出来事に皆が唖然とする中、僕は叫んだ。

「働かざる者、食うべからずって言葉あるよね?僕の辞書には“働かざる者、喰われるべし”って書いてあるんだ。ほら、調度いい所に死肉を漁りにくるような鳥さんも来たよ?特に東谷の生徒は働いた方が良いんじゃないかな?…、もし、この最初の犠牲者みたいになりたくなかったら…。」

 次の瞬間には全ての人間が動いていた。これでよし。蛇慰安戸君とニヤッとする。ライアン君、君の存在は中々有意義なものだったよ。後は食われるだけの運命だから。ドンマイ☆

「朱雀、さっきも言った気がするが、お前も中々のやり手じゃな。」

「褒め言葉として受け取っておくよ。」

 蛇慰安戸君が木を切り、僕が台車に積む。ライアン君は迫り来る鳥を追い払っていた。ゴロちゃん?必死に僕の肩に捕まっていたよ。

 そろそろ薪も十分だと思い、ライアン君は放置して僕らは戻ることとした。炊事場では渚と遥の周りに人だかりが出来ている。覗いてみると…

「秘儀、包丁の舞!」

「アタシだって負けないよ!」

 野菜や肉の山から食材を取り出して、包丁までも投げてしまう渚。しかし、数秒後には、渚の左手に持った鍋に等大に切られた食材が、右手には包丁が握られるのだった。

 遥の仲間と思われる北川の女子生徒が、次々に食材を遥に投げていく。それを包丁を二刀流で構えて振り回す。彼女の後ろに置かれたザルとゴミ袋には、それぞれ可食部分と捨てる部分がしっかりと分けられて行くのであった。どうやら、他の班も食材の下ごしらえを任せてしまっているらしい。ちゃっかりしてる。

 おっと。二人に見とれてないで、火を熾さなくちゃ。竈に薪を“井”の字型に組んで、その中に新聞紙や小枝など燃えやすい物を入れる。ここにマツボックリなる物を入れるとなおよし。あの人から習いました。マッチで火をつけると直ぐに燃え上がって来る。薪を適宜投入しながら、鍋の到着を待っていた。

 しばらくすると、お肉と野菜と水の入ったお鍋が到着する。それを火に掛け、しばらく待つ。



―所変わって、青龍と玄武のいる班

「花がねぇな…」

 青龍がそう言うのも仕方が無いだろう。この班にいるのは男子だけなのだ。いや、自称女性なら一人いるのだが…

「あらん、早く始めましょうよ。私が味見係をして、あ、げ、る。」

 ピンクフリフリでお馴染み、東谷高校の教師の克美がそこにいた。落下の衝撃で潰されたにも関わらず、生きていたらしい。今だにクネクネと体を動かしている。その姿は何処か水中生物を彷彿とさせるのは気のせいだろうか?

 青龍たちは顔を合わせて話し合いをしていた。男子だけとは言え、東谷の人間が一人もいないのだ。完全にのけ者扱いされていることが伺える。彼らの話し合いは、“どうやってこのニューハーフ教師を自分たちに寄せ付けないようにするか”である。

「おい、北川、ナイフ持って脅して来いよ。」

「いやだね、ナイフごと食われそうだ。」

「じゃあ銃でもガンでもハジキでも何でもいいから。」

「不良の分際でそんな物持ってるわけねぇだろ。不良舐めんなぁ!南陽こそ生贄くらい出せや。」

「んじゃ、玄武よろしく頼んだ。」

「合点承知の助。って、何で俺なんだよ!?俺には夢さん達の作ったカレーを食べるという義務があるんだ!」

 まったく纏まりの無い話し合いになってしまう。武器を用いた作戦を提案する南陽。生贄作戦を展開する北川。どこか考える方向性が逆になっている。しかし、玄武の場合、生贄に差し出されようが、宇津木のカレーを食べようが、昇天するのは確定事項なのであった。

 とりあえず、無視しようと言う結果に落ち着いた彼らは、早速準備に取り掛かる。北川が火を、南陽が食材をと言う風に。

「あらん、南陽の子たちがご飯の準備してるのね~。私も手伝いましょうか?」

「・・・・・・」

「あら、お肉のスジが切れてないわぁ。お姉さん、ちゃんと切ってくれないと硬くて食べられなぁい。」

「・・・・・・」

 “料理に集中しちゃってるのね。可愛い”とか言って、ピンクフリフリはその場を立ち去った。向った先は竈、北川の二人がいた。

「私もお手伝いしていい?」

「・・・・・・」

「んもう、照れちゃって。あ、そうだわ、私いいもの持ってるの。」

 と言って、フリルのたくさん付いたピンクのスカートを捲り上げて、その中から取り出したのは、エンジンオイルなどが入っていそうな銀色の缶容器だった。因みに、スカートを捲り上げた時に、脛毛が生えた足を見てしまった為、北川の二人が吐き気を催したのは言うまでもない。

「ほ~ら、魔法の液体よ~。これを使えば簡単に火がつくんだから。」

 そう言って、1ガロン(3.5リットル程度)を薪にドバドバかけていく。そして次に大型の機械を取り出した。

「マッチみたいなチャチな物使ってないで、こっち使いましょ。女は度胸なのよ、んふん。」

 持っているのは火炎放射器。北川の二人は色んな意味で自己の安全を確保するため、ピンクフリフリから離れるのだった。そして、スイッチが押され、炎が飛ぶ。


 …そして、爆発した。誰かがふと拾った缶には、“ガソリンにつき、火の元厳禁”と書かれていたそうな。爆散した竈から出てきたのは、体中を真っ黒に染めたピンクフリフリ、いやマックロフリフリと言った所か?

「やり直すか。」

「そうだな。あいつを葬ったのは俺達の手柄だ。」

 何かと犠牲者の多い東谷高校の人たちであった。



―また所は変わって朱雀達。

 僕達は今、鍋を気にしながら遊んでます。4人でUNOやってます。既視感に見舞われたんだけど、気にしない方が身の為だと思う。

「WILDカード発動、色は青にチェンジさ。」

「あぁ~、酷いよ遥。次でUNOって言えたのに…。」

 ものすごいデジャヴ。今さっき渚と遥に猫と狼の姿が重なったんだけど…。気のせいだね。

「そろそろご飯炊き始めようか。」

「そうしようかい。」

 僕らも手伝いをしに二人についていく。


「肉は腐りかけがうまい。神速、お前は白虎の元相棒なのは本当か?」

「白虎…、あぁ、遥ね。そうだよ。中学生時代の話だけど。」

「どうして今は不良を止めた?お前の実力なら北川の頭が張れる。」

「渚の存在が大きいかな。最終的に遥を裏切る形になったけどね。」

「ふむ、彼女が、好きなのか?」

「え、どっち?」

「どっちでもいい。」

「どちらも恋愛対象に見れないのは確かだけどね。」

「ハードルが高いんだな。」

 そうじゃないよ。渚と遥はとても美人だから、男子の誰が見ても好意を抱くのは事実。原因は全て僕にあるんだ。遥を裏切った僕、渚を泣かせてしまった僕。そう思うと、やりきれなくなってしまう。

「慶斗ー、これちょっと動かしてくれる?」

「ん、あ、OK!」

 でも、こうやって二人が僕に話しかけてくれる間は、これに甘えていたいと思う。僕って弱い人間だから。

ちょっと帰りが遅くなって更新が遅れました。ごめんなさい。


・護国鬼一郎

通称“鬼曹長”。朱雀達のクラスの担任。根っからの戦争屋さんで、古今東西森羅万象の事々を戦闘に置き換える癖がある。その為か、話口調はエセ軍人スタイル。

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