おにいちゃん あやめ視点
※今回はあやめ視点です
今日はとっても大変な一日だったよ~
大学で仲良くなった佐藤君。
身長はわたしより少し高い程度で、どちらかというと可愛らしい。
わたしの印象としては「大人しい男の子」って感じかな。
佐藤君はカフェ巡りが趣味らしくて「美味しいと評判のお店のクーポンをちょうど手に入れたから一緒に行こう」と誘われた。
口コミを見てみるとローストチキンが有名らしいんだけど、デザートもとっても美味しいらしい!
しかも、佐藤君が持ってるクーポンでデザートが無料になると聞いてテンションが上がっちゃったよ。
ただ、入学式で友達になった百合ちゃんとカラオケに行く話になってたから、最初は断ったの。
でも、クーポンの期限が今日までらしくて、佐藤君が「カラオケの後でもいいから」ってお願いされたんだ。
それなら百合ちゃんも誘っていいならということでOKしたんだけど‥‥
カラオケの最中、百合ちゃんの彼氏から電話が来て、二人の間で少し揉めてた。
電話が終わった後も百合ちゃんがソワソワしてたから、事情を聞いたら、百合ちゃんが一人でカラオケに行っちゃったから、彼氏さんがやきもちを焼いてたみたい。
流石にこのまま彼氏さんとケンカになっちゃうと大変だから、百合ちゃんとはここでお別れする事にして、彼氏さんのところへ行ってもらうことにしたんだ。
「あやめちゃん、ほんっとーにごめんね!!」
百合ちゃんからは何度も謝ってもらったけど、こんな事でケンカになっちゃったらダメだしね。
という事で、結局わたし一人で佐藤君と合流。
流石に直前でキャンセルするわけにもいかないし。
合流するまでに私が迷子になったり色々あって、遅い時間になっちゃった。
その後、お店探しを開始したんだけど、どうやら佐藤君もお店の詳しい場所が分かってなかったみたいで、スマホでマップを見ながら目的地を探すことに。
途中でわたしがナビをしてみたけど、案の定目的地からどんどん離れていたみたい。
ここは佐藤君に頼るしかない、という事で改めて目的地周辺をぐるぐる。
ただ‥どうみてもホテル街にしか見えない。
煌々としたネオンライトが照らす建物を見上げ、その後スマホに視線を落とす。
マップを見る限りはこの周辺みたいだから、間違ってはいないと思うんだけど‥
しばらく歩き回ったけど結局見つからず。
佐藤君も中々見つからないからか、ちょっと焦ってるみたい。
何度も謝られたよ。
出来るだけ明るく大丈夫だよって伝えたつもりだけど、佐藤君の表情はまだ申し訳なさそうだった。
佐藤君は人と関わることにあまり慣れていないような雰囲気を感じる。
そんなに気にしなくていいのに。
それから少しして「疲れてない?」と聞かれたので、「少し疲れたかな」と答えると、一瞬黙り込んで、何か深刻に考え込むような表情をした。
あれ?冗談っぽく伝えたつもりだったんだけど‥
しばらく様子を見ていると、佐藤君は何かを決意したかのように深呼吸を一つしてから、真剣な眼差しで私を見つめた。
「た‥高橋さん! ちょ‥ちょ‥ちょっと休憩しませんか!」
佐藤君はそう言って、ガシっと腕を掴んできた。
「やめて!」
突然真剣な表情で腕を掴んできたので、驚いて思わず声を上げてしまった。
佐藤君も驚いて、すぐに手を離した。
「あ! ご‥ごめ‥」
「あやめ!」
佐藤君が何かを言おうとした瞬間、遠くから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「お兄ちゃん!?」
「お‥‥お兄さん!?‥‥し‥‥失礼しました~!」
驚きと共に、お兄ちゃんと声に出ていた。
その言葉を聞いた途端、佐藤君は顔面蒼白になりながら走って行ってしまった。
「なんでお兄ちゃんがこんなところに!?」
すると後ろから見覚えのある女性が息を切らしながら走って来た。
「はぁ‥‥はぁ‥‥高橋君‥‥あやめちゃんは大丈夫?」
「エミさんまで!?」
(お兄ちゃんとエミさん!?ここ!?ホテル街!?エミさんとお兄ちゃん‥)
次々と色々とありすぎて思考が少しまとまらない。
(こんな時間にこんな場所で、大人の男女‥‥ハッ!)
そしてわたしはある事実に気付いてしまった!
「あ‥‥お‥‥お邪魔しちゃったよ~!」
わたしは二人の邪魔をしてしまったと思い、お兄ちゃん達から逃げるように走り出した。
が、速攻でお兄ちゃんにガシっと捕まれ‥‥
「あやめ、ちょっと待て、誤解がありそうなのと、お前の話も聞かせなさい」
有無を言わさない笑顔?でお兄ちゃんから質問を受ける事になった。
☆☆☆☆☆
その後は、お互いに誤解があった事が分かり、落ち着いたところで家に向かうことになった。
エミさんとは途中の駅で別れ、わたし達も家の最寄り駅から歩いて夜道を歩く。
今日の帰り道は、街灯の明かりだけでなく、輝く月明かりも道を照らしていて、夜空の星々がきらめいていた。
そんな帰り道に、ふとわたしはお兄ちゃんの気持ちが気になって聞いてみた。
「ねえお兄ちゃん、エミさんのこと、どう思う?」
「‥えっと、エミか? いい子だよ。 優しくて、誰とでもすぐに打ち解けられるし、仕事もできる。 なんで?」
お兄ちゃんは一瞬躊躇い、そしてゆっくりと答えた。
(むぅ~ 私が欲しい答えじゃ無いなぁ~)
しかし、照れ隠しをしているようにしか見えないお兄ちゃんを見ていると、ついいたずらしたくなってしまう。
「うん、だってエミさん、お兄ちゃんのことをすごく尊敬してるって言ってたよ。 それにいつもお兄ちゃんの話をするとき、目がキラキラしてるんだもん」
お兄ちゃんの表情が驚いたような、戸惑っているような複雑な表情になった。
しかし、こちらを見てすぐに真顔になり。
「ウソかよ‥‥」
(そんなにわたしの顔に出てたかな?)
二人の関係を想像すると、ちょっとニヤニヤしてしまっていたかもしれない。
以前、家で料理を教えてもらっている時に、色々と話をしてみた。
料理の事、エミさんの事、お兄ちゃんの事。
確かにエミさんの目がキラキラしている気がするのは私の主観なので、なんとも言えない。
でも、尊敬していると言っていたのは本当。
それに楽しそうにお話してくれている所をみると、まんざらでもないんじゃ無いかな?ってわたしは思っているんだよね。
(そもそも、なんとも思ってない人の家に来ないよね?)
その後は、お兄ちゃんにデコピンされたり、はぐらかされたりしたけど、お兄ちゃんも意識しているのは間違いないと思う。
あれだけ美人で、性格も良くて、料理も出来る無敵女子なエミさんを好きにならない男性なんているのだろうか?
ましてや、お兄ちゃんの場合は、毎日のように顔を合わせているみたいだし。
お兄ちゃんは、なんでか諦めてるけど、一度告白してみたらいいのに。
理由を聞いても教えてくれないし。
やっても無いのになんで諦めちゃうの?
むぅ〜納得できない!
(あ!もしかして!)
そう思って、お兄ちゃんに聞いてみる。
「もしかして‥‥他に好きな人がいるの?」
「そ‥そんなこと関係ないだろ」
「だれだれ?」
「誰でもないよ」
”関係ない”‥って事は誰かいるってことだよね!
結局その後もおにいちゃんは教えてくれなくて、そのままお家に着いちゃった。
不完全燃焼だけど、これ以上聞いても教えてくれ無さそうだし、わたしも今日は疲れちゃったから、また今度聞いてみよう。
最後まで読んで頂きありがとうございます♪
妹の活躍はもう少し後になります。
更新頑張っていきますので、応援頂けると嬉しいです✨
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