スベラスとの戦い
今回から終盤!スベラスとの因縁決戦です!
クルーゼの自己紹介につばめが驚いてしまったが、すぐに切り替えて前を向く。
「クルーゼ様でしたね。何故私をこの世界に召喚させたのですか?」
「ええ。その事については今から説明します。話はフェリカから聞いた通り、アンバラスが何者かによって復活しようとしているのはご存知ですね」
「はい」
クルーゼの質問につばめは返事をしながら頷く。
「復活したアンバラスについてですが、前よりも強くなっています。封印しても不可能の為、倒すしか方法はない。それを倒すには選ばれし戦士達だけでなく、異世界の者の力が必要不可欠だったのです」
「そうだったのですか……でも、なんで私を選んだのですか?」
つばめは納得するが、何故自身を選んだのかを疑問に感じる。自分でなくても他の人なら対象ではないかと感じたからだ。
「ただ、異世界の者を選ぶにしても条件があります。それは、優しさと仲間思い、そして心の中に秘めたる勇気を持つ者なのです」
「全て私に当てはまっている……それで私がこの世界に召喚されたんだ……」
つばめはクルーゼの説明に納得した後、すぐに前を向く。
「分かりました。そうでなかったらパイルマン達と出会う事は無かったし、私自身が変わる事はできなかった。この世界に呼び出してくれてありがとうございます!」
「いえいえ。さて、本題に入りましょう。ファールスから聞いた通り、スベラスが復活させようとしています。そしてこの元凶についてですが、その犯人は……グルバルガという男です!」
「「「グルバルガ?」」」
元凶の説明につばめ達は首を傾げるが、エルメダスはすぐに察する。
「グルバルガと言ったら……指名手配の凶悪犯ですね」
「知っているのか!?」
エルメダスがグルバルガを知っている事に、つばめ達は驚きを隠せずにいた。
「彼は爆発テロ、強盗殺人、放火殺人、泥棒など様々な悪事を起こしていて、懸賞金まで付けられているの。しかし、彼は凶悪な闇を持っている為、殆どが返り討ちに遭ってしまったわ。その中には死人は勿論、後遺症、冒険者を辞めた者もいるの」
「まさかその凶悪犯がこの騒動の元凶だなんて……普通に考えたらおかしく無いし、ますます放っておけないよ!」
つばめの決意にリリアンヌ達も頷く。
「その通りです。アンバラスの復活阻止についてですが、4つの紋章とアカシアの宝玉が埋め込まれたブレイブバングルの力を使います。そこを私の魔術で完全消滅すれば大丈夫です」
「襲ってくる敵を守るのは私のバリアでなんとかするわ!」
クルーゼとフェリカの説明につばめ達も納得する。
「俺はスベラスの暴走を止めておくよ。あいつとは決着を着けたいし、これまでの恨みを晴らしておくチャンスだからな」
「分かったわ。あまり無理はしないでね」
「大丈夫だ。今の俺はあの時とは違う。精一杯戦い、必ず奴の野望を止めてみせる!」
パイルマンはスベラスの野望を止める為に彼と戦う事を決断。つばめ達も納得し、彼は決意の意気込みをする。
「なら、大丈夫ですね。では、アンバラスが封印されている場所に転移します!」
クルーゼはすぐに魔法陣を展開し、アンバラスが封印されている場所へと転移した。
※
転移した場所は荒れ果てた野原で、辺り一面に動物や人間の骨が転がっていた。
「ここはロストエリア。死の場所と呼ばれていて、アンバラスもここに封印されています」
「随分殺風景の場所ね……」
ロストエリアの風景につばめが冷や汗を流す中、フェリカがアンバラスが封印されている石碑を見つける。
「あったわ!そこにアンバラスが封印されているわ!」
「幸い誰も来ていないみたいですね。すぐに消滅の作業を用意しましょう!」
クルーゼはつばめ、リリアンヌ、シリア、エルメダスと共にアンバラスの消滅に取り掛かり、パイルマンはスベラスを待ち構えていた。
「スベラスの野郎……見つけたら……いたぞ!」
パイルマンは前の方を見ると、スベラスが遠くから歩きながら姿を現していた。
「パイルマン……その姿……レベルアップしたみたいだな」
「正確には姿を変えさせて貰ったけどな。それよりもスベラス。ファールス様から話は聞かせてもらったぜ。お前は臆病で虐められていたが、グルバルガという男に出会ってから変わってしまったんだよな……」
「ちっ!姉ちゃんからの話を聞いていたみたいだな」
スベラスは拳にオーラを溜め、そのままパイルマンを睨みつける。
「そこを通せ!俺はアンバラスを復活させるんだ!」
「悪いがそうはさせない!それにお前は分かっているのか!?アンバラスを復活させたら世界が終わってしまう事になるぞ!」
「構わない!俺は……もうあの時の頃には戻りたくないんだ!俺を変わらせてくれたあの人の命令を遂行する為にも!」
スベラスはパイルマンに襲い掛かるが、彼は一閃の斬撃で、スベラスの胸部分を切り裂いた。
「な!?」
「甘く見ていたのはお前の方だったな」
スベラスは尻餅をついてしまうが、すぐに立ち上がる。
「俺はまだここで倒れないぜ」
「だろうな。けど、お前を変わらせたグルバルガについてだが、あいつは凶悪犯だ。奴の言う事を信用した時点で、お前は悪い方向に進んでいたんだよ」
「!……あの人を……馬鹿にするなァァァァァ!!」
スベラスは怒りで我を忘れてパイルマンに立ち向かうが、彼は攻撃を回避したと同時に剣の先をスベラスの心臓部分に突き刺した。
「かは……」
剣を抜いたと同時にスベラスは仰向けに倒れてしまい、パイルマンは彼を見下ろす。
「勝負ありだな」
「まだ……まだだ……!」
スベラスは最後の力を振り絞り、禁忌の術を発動してしまう。
「我は契約する……全てを捨てて、悪魔になる事を!」
するとスベラスの傷が治りまくり、彼の身体に悪魔の羽、悪魔の角、悪魔の爪が生えてしまった。
「これが禁忌の姿……堕ちる所まで堕ちていたか……」
「煩い……黙れ……殺す……」
スベラスは既に正気をなくしていて、全てを破壊するサイボーグの様になってしまった。
「なら……俺の手で……安らかに葬るしかないな……」
パイルマンがスベラスに再び立ち向かう中、クルーゼ達はアンバラスを滅する準備を終えていた。
「では、紋章を掲げてください!」
クルーゼの合図でつばめ達は紋章を掲げ、紋章が光り輝いたと同時にフェリカがバリアを発動する。
「ブレイブバングルを光らせて!」
フェリカの合図と同時に、つばめ達はブレイブバングルを光らせて紋章の威力を強くし始める。
「では、終わらせます!破邪の剣!」
クルーゼは光の剣を召喚し、石碑の下にそのまま突き刺す。すると地面が光輝いたと同時に、地面から邪悪な煙がモクモクと出てきて大空へと消えていく。
「ああ……アンバラスが……」
この光景を見たスベラスが呆然としていたその時、パイルマンは剣をそのまま光らせる。
「スベラス……お前は間違っていたんだよ……お前がグルバルガの言葉を信じず、そのやり方に反対すれば……自分自身で変わる事ができた筈だ……そしてそれができなかった敗因は……」
パイルマンは駆け出したと同時に剣を振り下ろす態勢に入り、そのままスベラスを縦一線に切り裂く。
「お前自身の勇気がまだ未熟だったからだ!」
「そ、そうだったのか……姉ちゃん……俺……僕は……やっぱり……駄目な戦士だったよ……もっと早く……姉ちゃんに……真実を伝えておけば……良かった……か……も……」
スベラスが涙を流した直後、彼は真っ二つに切り裂かれてしまい、そのまま塵となって消滅してしまった。
「スベラス……本当にお前は馬鹿な奴だよ……」
パイルマンが後ろを向いたその時、つばめ達が駆け付けてきた。
「アンバラスは消滅したよ!そっちも終わったみたいだね」
「ああ。スベラスは消滅したからな」
パイルマンは曇っている空を見上げ、リリアンヌは自身の胸に手を当てる。
「スベラス……あのグルバルガに出会わなければ……自身が罪を犯す事も……悪魔となって滅ぼされる事もなかったのに……」
リリアンヌの涙にシリア達も同意する。
「そうかもね……でも、まだグルバルガという男が残っているわ!奴はこの件について黙ってはいられないし」
「何れにしても戦うしかないみたいね」
シリアとエルメダスはグルバルガと戦う事を決断し、それにリリアンヌ達も顔を見合わせながら頷く。
「何れにしても、グルバルガはここに来ます。恐らくスベラスを倒した事で黙ってはいられないでしょう」
「ええ。来るとしたら……」
すると空に紫の煙が姿を現し、そのまま何処かへ向かっていく。
「紫色の煙が!?」
「どういう事!?」
突然の事態に皆が驚く中、髭を生やした男がズンズンと姿を現す。しかも、その煙は彼によって吸い込まれていたのだ。
「間違いない!この人こそグルバルガです!」
「この人が!?」
グルバルガの姿につばめ達が驚く中、彼は足を止めて彼女達を睨みつける。
「スベラスの奴……しくじったな……だが、アンバラスの闇の煙は手に入れた……これでわしは誰にも止められない……」
グルバルガから紫色の煙のオーラが噴出し、その姿にリリアンヌ達は冷や汗を流してしまう。
「グルバルガ!あなたはこれ以上罪を重ねて何をするつもりですか!?」
「決まっている!わしはこの世界を自分自身の者にする為にも、その障害をすべて取り除く!わしの邪魔をする者は……殺すのみだ!」
グルバルガは右足を強く踏んで地面を鳴らし、右の拳を前に出す。
「グルバルガは闇の格闘家であり、スベラスに技を教えた実力者です!アンバラスの力を取り込んだ以上、彼は強くなっています!」
「いよいよ最後の戦いとなるわけか……もし、この戦いが終わったら……帰ってしまうんだよな……」
パイルマンはつばめの方を向き、クルーゼはコクリと頷く。
「戦いが終わり次第、彼女には最後の質問を行った後……元の世界に送り戻さないといけません。それがこの世界のルールです」
「そうか……もっと話をしたいけど、今は……グルバルガを倒しておかないと!」
シリアが杖を構えた直後、リリアンヌとエルメダスも剣を構える。
「やるからには皆で生きて帰ろう!」
「どんな敵でも、皆がいれば怖くない!」
彼女達の戦う姿につばめとパイルマンも武器を構える。
「彼女達は覚悟を決めたみたいだ。つばめ、準備はいいか?」
「うん。この世界に来てから色んな事があり、自身を変える事ができた。だからこそ、絶対に勝とう!」
「勿論だ!」
5人は戦闘態勢に入り、クルーゼとフェリカは後方に下がる。
「あなた達の覚悟、信じています!」
クルーゼが祈りを捧げたと同時に、最後の戦いが幕を開けたのだった。
いよいよラスボス戦!戦いの行方はどうなるのか!?