マリンタウンの宝玉奪還戦
2つ目の紋章を巡る戦いです!
一つ目の紋章を手に入れてから2日後の夕方、パイルマン達はマリンタウンへと到着した。
「着いた!海に行くのって久し振り!」
「そうか?俺としては時々来ているが」
つばめが笑顔で背伸びをしていて、パイルマンは首を傾げながら普通に応える。
「マリンタウンは綺麗な青い海として有名だからね……けど、ここで新たな事件が起きて困っているのよ」
「新たな事件?」
「町の人達に話を聞いてみましょう」
フェリカはつばめとパイルマンを連れて町の中に入った直後、リリアンヌ達もマリンタウンに到着した。
「ここにパイルマンがいるのね」
「ええ。あのスベラスは何を考えているのか分からないし、放って置くと大変な事になるわ!」
「ともかくパイルマンを探しましょう!スベラスの事を伝えないと!」
「そうね。急ぎましょう!」
3人はそのまま町の中入り、パイルマンを探し始めた。
※
「ええっ!?巨大タコによって大変な事になっている!?」
つばめ達はマリンタウンの町長からの話に驚きを隠せず、彼はコクリと頷く。
「そうなんじゃ。昨日、巨大タコが突如出現して漁もできず、挙句の果てには海水浴もできやしない。本当に商売上がったりで困っているのじゃよ」
「その巨大タコとはどうなっているのですか?」
「確かピンク色でハートのマークが付けられておったのう……」
「なるほど。怖いかも知れないけど、私達で必ず倒します!」
町長からの話を聞き、つばめは胸に手を当てながら彼に宣言をする。
「では、お願いします。しかし……もしかすると巨大タコが出現したのはあれが切欠かも知れないな」
「あれ?」
町長の呟きにフェリカが反応し、彼は説明を始める。
「実はこの海にレッドベルという海賊が出現していたのじゃ。そいつ等は向こうの島にある宝玉を盗んでいて、今もあの船がそこにある。どうやら次はわし等の町を狙うに違いない」
「じゃあ、その宝玉を取り返せば……」
「騒動は収まるじゃろう。しかし、海賊達は無茶苦茶強い。お主等だけで大丈夫かのう?」
町長に言われた三人が考えたその時だった。
「なら、私達を加えれば問題ないですよ」
「その声……リリアンヌなのか!?」
パイルマンが声のした方を振り向くと、そこにはリリアンヌ、シリア、エルメダスの三人が彼等の後ろに立っていた。
「お前等!どうしてここに!?スベラスは!?」
パイルマンは驚きながらも3人の元に駆け寄った。
「スベラスはパーティーから抜けたからね。それに私達にとってはパイルマンが必要だから」
「そうか。そう言われると嬉しくなるな……」
リリアンヌの笑顔にパイルマンが照れ臭くなり、つばめは嫉妬で頬を膨らませていた。
「あれ?この女の子達は?」
エルメダスはつばめとフェリカに気付き、パイルマンが彼女達に視線を移す。
「ああ。俺の新たな仲間のつばめとフェリカだ。つばめは異世界から来ていて、フェリカは神様からの使いだ」
「「「ええっ!?」」」
パイルマンの説明にリリアンヌ達は驚き、彼女はつばめに近付く。
「異世界から来たの!?噂には聞いていたけど、何かあったのか教えて!」
「え、ええ……実は……」
つばめはいきなりの展開に驚きながらも、これまでの事をリリアンヌ達に話し始めた。
※
「そう……まさかいきなり異世界転移されてしまい、その危機を救えないと元の世界に帰れないのね……」
マリンタウンの酒場では、リリアンヌがジュースを飲みながらつばめの説明に納得していた。
「はい……アンバラスという化物の封印を解こうとしている者がいます。その人とアンバラスを倒さない限りは……」
「アンバラスか……話は聞いていたけど、かなり手強そうね……」
エルメダスが真剣な表情で考える中、シリアは宝玉の事について考えていた。
「アンバラスについての対策はババーラ様が知っているけど、今は宝玉をどうやって奪還するかよ。あの大きい海賊船に乗り込み、宝玉をどう奪還するかね」
「そうね。それなら私に策があるわ!」
エルメダスはアイデアを思いつき、その内容をつばめ達に話す。
「それならイケるかも!」
「エルメダス、良いアイデアを持ったわね」
「うん。こう見えても海賊については色々知っているし……それに、私もこの海賊達とは因縁があるんだ……」
「「「?」」」
エルメダスの突然の俯きにつばめ達は疑問に感じ始めた。
※
それから翌日、フェリカが用意した魔法の絨毯に乗りながら、彼女達はレッドベルの海賊船へと向かい出した。
「確かこの辺りに……あったわ!」
フェリカが指差す方を見ると、目的となる海賊船が見えていた。
「あれが海賊船ね。エルメダス、準備はいい?」
「ええ。彼奴等とは決着を着ける覚悟よ。もう迷わないから!」
「分かったわ。私達も覚悟を決めて立ち向かうから!」
エルメダスの覚悟にリリアンヌ達も頷き、彼女達は海賊船に近付き始める。
「ここはステルスで!」
シリアはステルスの魔術を全員に掛け、そのまま海賊船に乗り込み始めた。
※
レッドベルの海賊船内部にある船長の部屋では、アラビア服を着た女性船長であるファルナが机の上にある宝玉を部下に見せていた。
「これがクレナル島の宝玉ですね」
「まあな。これは高額で売れるだろうし、後はこの場所からトンズラすればOKだ」
ファルナが笑おうとしたその時、部屋に突然ハチが姿を現して攻撃を仕掛けてきたのだ。
「何故ハチが!?」
「痛い痛い!」
するとステルス魔術を自身に掛けていたつばめ達が中に入り、リリアンヌが机の上に置いてある宝玉を奪い取る。
(今の内に!)
宝玉を奪い取ったリリアンヌ達は素早く部屋から脱出し、そのまま船のデッキに移動する。
「おい、こっちだ!」
絨毯の上に乗っているパイルマンの叫びが聞こえる中、リリアンヌ達はすぐに彼の元に向かっていく。
「ちょっと待て!」
するとファルナの叫びが聞こえ、彼女が姿を現す。その顔はハチに刺されて所々が膨れていた。
「まさか私のハチ召喚術で耐え切れるなんてね」
ハチを召喚したのはシリアであり、彼女はほくそ笑んでいた。
「よくもやってくれたな!お前等は一体何者だ!?」
ファルナの叫びにエルメダスが前に出て、剣の先を彼女に向ける。
「!?お前はあの時の騎士団の生き残りの!?」
ファルナがエルメダスを見て驚きを隠せず、すぐに剣を構える。
「そうだ。私は元ファルベル騎士団の最後の生き残りだ!」
エルメダスが宣言した直後、彼女の脳裏に過去の記憶が浮かび上がり始めた。
※
数年前……グラン海の戦いでファルベル騎士団とレッドベル海賊団が争っていた。ファルナの指揮でレッドベルの猛攻は止まらず、ファルベルはピンチに陥っていた。
「このままだとまずい!エルメダス、お前だけでも逃げろ!」
「団長、最後まで戦い抜くのが騎士の務めだと言っていたじゃないですか!私はそんな事に屈しません!」
団長がエルメダスに叫ぶが、彼女は拒否をしていた。
「だが、我々が全滅すればこの海賊団は勢いを増して強くなる!その為にもお前が生き残り、我々の意志を継いでこの海賊団を終わらせるんだ!」
「団長……」
団長の魂の叫びにエルメダスは何も言えなくなってしまい、そのまま回れ右をしてワイバーンに乗り去った。
(皆……必死で最期まで戦っているのに……断る勇気がない私は……大馬鹿者にしかすぎない……)
エルメダスは涙を流しながら悔し泣きをしてしまい、その数分後にファルベル騎士団は全滅したのだった……
※
(あの時の私は勇気がなかった……けど、今はもう違う!)
エルメダスは前を向き、ファルナに向かって立ち向かう。
「チッ!」
「させない!」
ファルナが銃を構えた直後、シリアがアイススピアを発射し、ファルナが持っている銃を弾き飛ばした。
「あっ!」
「今よ!」
「はあああああああ!!」
シリアの合図でエルメダスは駆け出し、ファルナの心臓部分に剣を突き刺した。
「がは……」
「皆の怒りを思い知れ!」
エルメダスが剣を抜いた直後、ファルナはヨロヨロと後ろに後退してしまい、そのまま後ろから倒れて海に落ちてしまった。
「やった……!仇を取れた……!」
エルメダスが空を見上げたその時、いきなり巨大タコが姿を現し、触手で船を真っ二つに叩き壊してしまった。
「船が!」
「早く急げ!」
エルメダス達は絨毯に乗り込んでその場から移動し、船はバラバラとなって海の中に沈んでいき、海賊達は次々と海に落下してしまった。
「もしかするとあのタコ……宝玉を奪った犯人を始末しようとしているみたいだ」
「じゃあ、この宝玉を渡せば……!」
パイルマンの推測にリリアンヌが宝玉を見た途端、巨大タコがこちらの方を向く。
「待って!この宝玉を返しに来たの!」
リリアンヌが宝玉を見せた途端、巨大タコは攻撃を止める。
「おお。もう既にお前達が奪い返したのか。忝いな」
「あの海賊達とは因縁あったからね。早くこの宝玉を返してババーラ様に会いに行くの」
「ババーラ様……」
ババーラという言葉に反応した巨大タコは、リリアンヌ達の方を見る。
「それなら俺が案内するよ。実はこの宝玉、ババーラ様の物なんだ」
「えっ?知っているの?」
「ああ。俺はオクトン。ババーラ様の弟子なんだ」
「「「ええっ!?」」」
オクトンの自己紹介にリリアンヌ達は驚きを隠せなかった。
※
「という訳でババーラ様。宝玉はこの人達が取り返しました!」
その後、オクトンの案内でつばめ達はババーラのいるクロビカ島に辿り着き、浜辺で彼がババーラに報告をしていた。
「そうかい。宝玉をどうもありがとね」
「いえ。私達もあの海賊団には因縁ありましたし、船長も始末しました!」
「見事じゃ。さて、礼として……青の紋章を渡すとしよう」
ババーラは魔術で青の紋章を召喚し、それをつばめに渡す。
「ありがとうございます!」
「礼儀正しいね。さて、折角だから話をしよう。アビルから話は聞いておるが、数百年前の勇者達はある物を装備せず亡くなってしまった。その装備というのはアカシアの宝玉じゃ」
「「「アカシアの宝玉?」」」
ババーラの説明につばめ達は首を傾げた。
「そうじゃ。奴等は紋章の事ばかり集中していて、宝玉の事は考えていなかった。それが原因で今のようになったのじゃよ」
「じゃあ、その宝玉を手に入れればアンバラスを倒せるのですか?」
シリアの質問にババーラは首を横に振る。
「それだけでは駄目じゃ。倒すとしたらブレイブバングルも必要になる。お主達全員が装備するだけでなく、レベルアップもしないと勝てる事は不可能じゃよ」
「なるほど……となるとブレイブバングルとアカシアの宝玉を探さないと駄目ですね……」
リリアンヌは真剣な表情で考え、シリア達も頷く。
「じゃが、アカシアの宝玉についてはスノーマウンテンにいるノスル、ブレイブバングルはサンドキャニオンにいるファールスが何とかしてくれる。しかも彼等は紋章を渡してくれるが、それぞれの試練をクリアして手に入れるしかあるまい」
「貴重な情報をありがとうございます!」
「うむ。必ずアンバラスを倒す事を信じておるぞ!」
「頑張れよ!」
つばめ達の一礼にババーラとオクトンは彼女達にエールを送った。
※
マリンタウンに戻ったつばめ達は、町長達に事情を説明した後、お礼として新鮮な海鮮料理をご馳走されていた。
「凄い!刺し身だけでなく、焼き魚もあるんだ!」
「はい!騒動を解決してくれたお礼です。この町の名物料理ですよ!」
町長はリリアンヌ達に、マリンタウン名物の海鮮料理を紹介する。
「サーモのサラダに、カジマグロのムニエル、サザボンの壺焼きもあるのね!」
「それだけじゃない。手毬寿司もあるわ!」
「私の世界でもあるけど、美味しそう!」
シリア達は豪華な海鮮料理に目を輝かせているが、パイルマンは……何故かサンマ飯だった。
「おい……俺も人間の料理を食べれるけど、なんでこんな扱いなんだ?」
パイルマンはこの扱いに関して疑問に感じるが、フェリカが彼をじっと見る。
「しょうがないでしょ?狼なんだから」
「畜生……スベラスの野郎、お前を倒して呪いを終わらせてやるからな!」
パイルマンは涙ながらの怒りでスベラスを倒す事を決意したのだった……
パイルマン、狼なのでこんな扱いされました。
今後の投稿予定は月、木の更新となります。ご迷惑をお掛けしますが、宜しくお願い致します!