クリムの森の巨大毒蜘蛛
今回は紋章集めとなる森の戦いです。
第一の紋章があるクリムの森に辿り着いたパイルマン達。そこは自然豊かな森で、様々な植物や動物もいる。
「ここに紋章があるの?」
「ええ。ここはスライムは勿論、木の魔物もいるから気を付けてね」
「木の魔物といえばトレントだな。あいつは目を光らせて追いかけてくるから気を付けろよ」
フェリカとパイルマンの説明につばめは息を呑んでしまう。
「あと、紋章についてはこの森に住んでいるコトダマ達に聴けば分かるわ。彼等からのミッションをクリアすれば紋章が手に入るの」
「コトダマ達か。どんなのかな?」
つばめはワクワクしながら森の中を進んだ途端、いきなり木が目を光らせて動き始めた。
「ひっ!?トレント!」
「早速お出ましだな!」
パイルマンは素早く炎の盾を操り、トレントを切り裂いて燃やし倒す。
「今の出現でどんどん出てくるな。気を付けろよ!」
「うん!」
つばめをロングロッドを回転し、襲い掛かるスライム達を次々と棒術で倒していく。更にパイルマンも武器を剣に変え、自分の意志で動かしながら倒しまくる。
「残りあと僅かだ!」
「ええ!」
パイルマンの合図につばめは呪文を唱え、敵に狙いを定める。
「ファイアーボール!」
火の球が次々と敵に炸裂して消滅し、この辺りの敵を倒し終える事に成功した。
「見事ね。取り敢えずはお疲れ様!」
「うん。慣れてくると怖くないかな」
「その調子だが油断するなよ。そろそろ目的の場所に着く頃だ」
パイルマンが前を向いた途端、木の上に丸い顔で黒い目、全身白い肌をした3人の小人達が出てきた。
「あっ!もしかして……君達が紋章を手に入れに来た人達なの?」
「えっ?もしかしてあなた達がコトダマなの?」
つばめが首を傾げながら質問し、小人達は一斉に頷く。
「そう。僕等はコトダマ族。因みに僕の名はトン。この森に住んでいるけど……実はある問題に直面しているんだ」
「直面?もしかしてこの紋章と関係があるの?」
「うん、この事については僕の家で話すから、今すぐ案内するよ。チン、カン!」
「「おうよ!」」
トン、チン、カンの3人はつばめ達を連れて自分達の集落へと向かい出した。
※
コトダマの集落に辿り着くと、そこでは何故かコトダマ達が泥鰌掬いを躍っていた。しかも、皆アホ面で……
「泥鰌掬い……これの何処が問題なの?」
つばめは呆れた表情をしながら、俯いているトン達の方を向く。
「昨日、空から蜘蛛のモンスターが降ってきて、僕達に謎の粉を振り掛けてきたんだ。そしたら今の状態になってしまったんだ」
「俺達は効果がなかったけど……」
トンとチンの説明にフェリカはジト目で彼等を見る。
「もしかして……アホには効果が無いんじゃない?トンチンカンだから」
「「「ぐほっ!!」」」
フェリカの言葉はトンチンカンに突き刺さり、彼等は地面に手を付けて落ち込んでしまう。
「気にしていたのね。御免なさい……」
「ええんや……ただ一つ分かっているのはあの蜘蛛や。蜘蛛はあそこの神殿に潜んでいるみたいやで」
カンが指差す方を見ると、近くに石造りの神殿が建てられていて、そこから邪悪なオーラが出ていた。
「間違いないわ!そこの神殿に紋章があるわよ!」
「恐らくあの緑の紋章も毒蜘蛛が持っているかもしれへんな。せっかくやから案内しまっせ」
「じゃあ、お願いね」
「「「イエッサ!」」」
トンチンカンの3人は敬礼したと同時に、つばめ達を連れて神殿へと向かい出した。
※
つばめ達はトンチンカンの案内で森の中を進んでいるが、3人はつばめのサロペットスカートのポケットの中に入っていた。
「なんで私のサロペットスカートのポケットの中に入るのかな?」
「僕等は小さいからね。こうした方が移動的にも楽だし……」
「トンはまだいいよ。俺達は腰ポケットだぞ」
チンがトンに対して文句を言っている中、カンが神殿にいるモンスターを調べる。
「神殿の中にもモンスターがいるさかい。蛇のガラガラ、ローリングハリネズミがおるで。ガラガラは尻尾と噛みつきでの攻撃で毒を持っとる。ローリングハリネズミは転がって突進してくるで」
「なるほど。頼りにしているね」
「任せときや。弱点ならワイが見つけられるで」
カンが自信満々にガッツポーズをしたその時、神殿の前に辿り着いた。
「あれが神殿か。凄く大きいな」
「この神殿はコトダマ神であるアビル様がいるんだ。しかし、あの蜘蛛が現れて囚われの身に……」
「となると、あの蜘蛛を倒さないとね!怖いけど、頑張らないと!」
つばめはすぐに神殿の中に駆け出し、フェリカも後を追いかける。
「つばめの奴、少し成長したな」
パイルマンは微笑みながらもつばめの後を追いかけた。
※
神殿の中は薄暗いが、炎のランプで明かりが照らされている。トンチンカンの案内で進む中、とある壁画を見つける。
「なんだろ、この壁画……」
壁画には多くのコトダマ達が神様に対して祈りを捧げていて、神様は胡座をかいて座っていた。因みに神様であるアビルはコトダマで白いヒゲを生やしている。
「あれこそアビル様だよ。コトダマ属の祖先と言われているんだ」
「俺達コトダマ族は300年生きているからな」
「300年!?私より寿命長いじゃない!」
トンとチンの説明につばめが驚いたその時、ガラガラが姿を現した。
「ガラガラが来たで!奴は無属性や!」
「任せて。ここは新技で……ロックボール!」
大きな岩の塊が姿を現し、そのままガラガラに向かって激突した。
「おお!凄い威力や!」
ガラガラはそのまま倒れてしまい、素材と金貨になった。
「おお。新技も覚えたのか。成長が早いな」
「そうかな?大した事じゃないけどね」
パイルマンの褒め言葉につばめが苦笑いする中、フェリカがルートを確認する。
「神殿には仕掛けはないみたいね。でも、気を付けて。ローリングハリネズミも出てくるから」
「うん。十分気を付けるね」
(あいつ、ここまで成長するとは凄いな……って、何やっているんだ俺は!?俺だって頑張らないと駄目だろ!)
パイルマンがつばめの成長に感心するが、いきなり我に返って自身に喝を入れ始めた。
※
神殿の祭壇に辿り着くと、そこには巨大な毒蜘蛛が待ち構えていた。
「良く来たな。それにコトダマ達もいるとは」
(この毒蜘蛛、喋るんだ……)
毒蜘蛛が迎える中、つばめは心の中でそう思っていた。
「俺はメテオスパイダー。あるお方の命令でこの神殿に来た」
「あるお方?その命令は何なの?」
「お方は教えられないが、命令なら教えてやるよ。一つ目はアビルの監禁とこのコトダマ達に呪いの粉をかける事。もう一つは紋章を手に入れに来た奴を始末する事だ!」
すると、メテオスパイダーの身体が変化し、新たな姿になる。蜘蛛の姿はメカになっていて足にトゲが付いている。更に背中には大砲、ミサイルランチャーが付いていて正に全身兵器の蜘蛛となったのだ。
「そんなのあり!?しかも、ファンタジーなのに現代技術の兵器まで搭載しているじゃない!」
「ごちゃごちゃ煩い!始末してくれる!」
メテオスパイダーはランチャーからミサイルを発射。つばめ達は素早い動きで回避して攻撃しに向かう。
「そうは行くか!」
「「「うわっ(きゃっ)!」」」
メテオスパイダーはタックルでつばめ達を弾き飛ばし、彼女は背中をうちつけてしまい、サロペットスカートから白のパンツが見えてしまう。
「おい、大丈夫……あ」
「ひっ!?」
パンツを見てしまったトンチンカンは慌てて後ろを向き、つばめは慌てて起き上がり、サロペットスカートを抑えてしまう。
「悪いのは分かっているよね?」
「ええ。カン、教えて頂戴……」
つばめは怒りのあまり目を光らせてしまい、トンチンカンは思わず背筋を伸ばしてしまう。
「まずはランチャーを身体から切断や!ミサイル発射する時には止まってしまうで!」
カンの説明の直後、メテオスパイダーはミサイルを発射しようとする。
「そうはさせるか!」
するとパイルマンが駆け出したと同時に、自らの意志で剣を操り、メテオスパイダーの右側のランチャーの支点部分を切断した。
「な!?」
「切断成功!」
支点部分を切断されたランチャーはメテオスパイダーの身体から外れ、床に落ちてしまった。
「おのれ!ランチャーが落ちても大砲がある!」
メテオスパイダーは砲口に光を貯め始め、パイルマンは反対側のランチャーの視点部分も切断する。
「残るはあの大砲よ!大砲は砲口を塞げば……」
「それなら、ロックボール!」
岩の塊が召喚されたと同時に発射し、大砲の砲口に入ってしまう。
「あっ!光が出ない!」
メテオスパイダーは砲口が詰まらせた事にピンチを感じたその時、砲身が爆発して使い物にならなくなってしまった。
「弱点は頭の上よ!」
「最後は俺が行く!」
フェリカの合図でパイルマンが飛び出し、武器を盾に変えて強烈なシールドブーメランを頭に叩き込んだ。
「ぐおっ!?」
強烈な一撃を受けたメテオスパイダーは倒れてしまい、元の姿に戻ってしまった。
「お、おのれ……」
メテオスパイダーは息絶えたと同時に消滅し、アビルがつばめ達の前に姿を現し、彼女達に近付き始める。
「アビル様!」
「その様子じゃとメテオスパイダーを倒した様じゃな。礼を言うぞ」
「大した事ではないですよ。けど、無事で良かったです」
アビルの礼につばめは笑顔で返す。
「さて、助けてくれたお礼に紋章を渡そう。ふん!」
アビルは魔法の力で紋章を召喚し、それをつばめの掌の上に置いた。
「これこそ緑の紋章じゃ!受け取るが良い!」
「ありがとうございます!」
つばめはアビルに対して一礼し、パイルマンとフェリカも同じ動きをする。
「さて、アンバラスの事について話すとしよう。アンバラスは二足歩行でアンキロサウルスの尻尾に雪男の身体、手には長い爪、頭に3本の角、顔は怪物の化け物じゃ。そのサイズは人間と同じじゃが目茶苦茶強い」
「見かけによらず強いのですね……」
アビルの話につばめは冷や汗を流してしまう。
「何人がかりでも倒す事ができず、強大な闇の力を放つ難敵だった。そこで、当時の勇者達が立ち上がり、アンバラスを倒しに向かったのだ」
「フェリカの言っていた勇者達ですね。彼等は死亡したと聞きましたが……」
「そう。勇者達は強くなって装備を整え、手に入れた紋章の力を使ってアンバラスを見事封印した。しかし、戦いの時の怪我で全員死亡してしまったのじゃ……」
「そんな……」
アビルの話につばめの目に涙が浮かべた直後、彼は更に話を続ける。
「彼等は死ぬ覚悟で立ち向かったが、ある物を装備すればダメージを軽減させる事ができるのじゃが……」
「えっ!?あるのですか!?」
アビルの説明にパイルマン達は彼に食いつき始める。
「知っているとしたら、2つ目の紋章があるマリンタウンに向かうが良い。そこにわしの知り合いのババーラなら知っておる」
「貴重な情報をありがとうございます!」
「うむ!お主等のこれからを楽しみにしておるぞ」
つばめ達はアビルに一礼し、彼は頷きながら彼女達のこれからを信じていた。
※
コトダマ達と別れてクリムの森を後にしたパイルマン達は、マリンタウンに向かっていた。
「次はマリンタウンか。それにしてもつばめ、まさかお前があんな怒りを出すとは思いもしなかったな……」
「私に恥を掻かせたんだもん。そのぐらいいいでしょ?」
「まあ、俺としては当然いいと思うぜ。けど、お前の臆病も少しは克服したんじゃないか?」
パイルマンの質問につばめは胸に手を当てた後、彼に視線を移す。
「そうかもね」
つばめの笑顔にパイルマンとフェリカも笑顔で返し、彼等はそのままマリンタウンへと向かったのだった。
※
さて、山岳にあるムギウギ村の宿屋では、スベラスがリリアンヌ達に話をしていた。
「パーティーを抜ける?」
スベラスがパーティーを抜ける事に、リリアンヌ達は驚きを隠せずにいた。
「ああ。皆、俺の事を怪しがっているし、パイルマンを狼にして追放した事に納得できないからな。その責任を取って俺は抜けさせてもらうぜ」
「自分がした事を分かっているわね。で、これからどうするの?」
「俺は俺の道を進む。それだけさ」
スベラスは後ろを向き、宿屋から出てしまった。
「私達はどうしようか?」
「パイルマンの元に行きましょう。確か彼はマリンタウンに向かっているわ」
「そうね。彼が倒れる前に合流しないと!」
リリアンヌ達はこれからこれからの事を話し合い、パイルマン達と合流する事を決意したのだった。
パイルマン達はマリンタウンへ。リリアンヌ達も向かいます!