転移された女子高生
今回から本編スタートです!
ファルベルド。そこは西洋ファンタジーを元にした異世界だ。ドラゴンやペガサスは勿論、ドワーフやエルフもいる。
その中にあるクララ滝の川沿いでは、狼にされていたパイルマンが倒れていた。
「う……」
パイルマンが目を覚ますと、そこは滝の川沿いで小鳥のさえずりが響いていた。
「確か俺は狼になって……ん?背中に何か違和感があるな……」
パイルマンは自分の意志でウィンドウを起動させ、前足でその内容を見る。すると、武器が変化している事を確認し、その内容にはこう書いていた。
魔法の神器
剣、盾、鞭の三種を使える事が可能。剣は氷、盾は炎、鞭は雷の属性である。
また、神器は自らの意思で使える事ができ、チェンジや変化も可能である。
「なるほどな。いい武器を手に入れたのはいいが、狼の姿になったのは複雑だな……」
パイルマンがため息をつく中、空から光が舞い降りてきた。
「なんだ?」
パイルマンは光が落ちてくる場所に移動すると、光はゆっくりと地面に落ちて消滅し始める。すると、光の中から一人の女子高生が姿を現し、光が消えたと同時にそのまま仰向けに倒れてしまった。
「おい、大丈夫か!?」
パイルマンが慌てて女子高生の元に駆け付けると、彼女は目を覚まして彼の方を向く。
「ひっ!?」
女子高生はパイルマンの姿を見て驚いてしまい、そのまま頭を抑えてガタガタと震えてしまう。
「待ってくれよ!俺は怪しい者じゃない!狼だけど、アンタは食べないから!お願いだから俺を信じてくれ!」
「そ、そうなの……?」
パイルマンの説得に女子高生は顔を上げ、すぐに立ち上がって服に付いている草を落とし始める。
「私は星野つばめ。休日の公園でストレッチしていた時に、風でパンツが見えて慌てて抑えたその時、光に包まれて……」
「気が付いたらここにいたのか。どうやら異世界転移だな」
「異世界転移?」
パイルマンの推測につばめは首を傾げる。
「ああ。何かの現象によって異世界へと飛ばされてしまうという事態だ。ファンタジー世界ではよくある奴だし、この世界でも起きているけどな」
「じゃあ、元の世界に戻れないのかな……」
つばめは涙を流してしまい、パイルマンは慌てながら彼女の元に駆け寄る。
「待ってくれ!元の世界に戻る方法はあるはずだ!だから大丈夫だって!」
「本当?」
「ああ。俺が側にいるから大丈夫だ。心配するなって」
「うん……」
つばめは涙を拭いた後、すぐに立ち上がって背伸びをする。その瞬間……風が吹いてスカートが捲れ、白いパンツが見えてしまった。
「ひっ!」
つばめは慌てながらスカートを抑えてしまい、パイルマンは慌てながら横を向く。
「見たでしょ?」
「ミテナイデス」
つばめはジト目でパイルマンを見るが、彼はカタカナ言葉で返していた。
「ならいいわ。早くここから移動しないと」
つばめは回れ右してそのまま滝から移動し、パイルマンも彼女の後に続いて移動した。
※
滝から平原に移動したパイルマンとつばめは、これからどうするか考え始める。
「取り敢えず泉を出たけど、これからどうしようか……」
「ああ。まずはつばめの武器を……」
パイルマンが言い切ろうとしたその時だった。
「その必要はないよ」
「「?」」
二人が声のした方を見ると、赤い髪をした妖精が姿を現した。
「あなたは?」
「私はフェリカ。神様から派遣された妖精なの。今回、つばさがこの世界に来たのは最大のピンチを救って欲しいとの事なの」
「最大のピンチ?」
フェリカの説明につばさは首を傾げる。
「ええ。予言によると、一人の男がとんでもない力を手に入れて暴走するとの事だけど、その力というのは……封印された魔族の力よ」
「その魔族の力はどんなのだ?」
パイルマンの質問にフェリカが指を鳴らして本を召喚。そのまま読み始める。
「資料によると……数百年前に混沌の魔族であるアンバラスという輩が暴れ回っていたの。当時の勇者達は自らの身を犠牲にして魔族を封印する事に成功した。けど……一人の男がその封印を解こうとするとしていると聞いた神様は、つばめを召喚して……」
「今の状況になったという事か……でも、私は戦う事が難しいし……」
「どういう事?あなたの力が必要なのよ」
つばめの俯きにフェリカは首を傾げながら疑問に感じる。
「だって、私はビビリでガタガタと震えてしまうし、怖い物を見ただけですぐに腰を抜かしてしまうんだもん……この間なんかガラスを割る音がした途端、慌てて電柱の隅っこに隠れちゃったし……」
「そ、そこまでビビリだったのか?」
つばめが自身の事を話しまくるが、その内容にパイルマンが唖然としてしまう。
「何言ってるの。ほら、その時の為にあなた専用の武器を用意しているから」
フェリカは指を鳴らし、つばめの手元にロングロッドを召喚する。
「これ、何?」
「魔法が使えるだけでなく、武器としても扱えるロングロッドよ。これさえあればどんな敵でも倒せるし、戦わなければ元の世界に帰れないし、生き残る事ができないわ」
「魔法が使える……一度魔法を使ってみたかったの!どんなのができる?」
「確かファイアーボールが使えるわ。あそこに敵が……あっ、こっちに向いて……来たわ!」
フェリカが指差す方を見ると、いきなりウサギのモンスター達が彼女達に襲い掛かってきた。
「戦うしかないな。俺はこう見えてもお前と同じ臆病だった。けど、勇気があれば何だってできる!今までそうやって乗り越えてきたんだ!!」
パイルマンは叫んだと同時に駆け出し、自らの意志で剣を振り回しながら敵を倒していく。
「パイルマン……その様な過去があったなんて……私も彼みたいに勇気があれば……」
つばめは自身の持つロングロッドに視線を移した直後、すぐに前を向いてロッドを強く構える。
「いや、今からでも変えられるなら……私は覚悟を決めて戦うのみ!勇気さえあれば……誰が相手でも、負けはしない!!」
つばめは自らの勇気で決意を固めたと同時に、そのまま術を発動する。
「ファイアーボール!」
多くの火の球が姿を現して敵に襲い掛かり、次々と倒して敵の数を減らし始める。
「あいつ、戦う覚悟を決めたか……勇気さえあればその力は無限大だ!」
パイルマンはつばめの決意に感心し、自身に襲い掛かる敵を鞭で次々と倒していく。そして最後の一匹を炎の盾投げで倒し、彼はつばめの元に駆け寄る。
「やるじゃないか!今のお前は勇気があるからこそ倒せたんだ!」
「そうかな……初めてなのに褒められるなんて……」
つばめは照れ臭そうになるが、フェリカは彼女の頭を突付き始める。
「あうっ!?」
「何言ってるの。あなたが頑張ったからこそモンスター達を倒す事ができたじゃない。これでも当然の成果と言えるし、次に向けて頑張るのみよ。私はあなた達のこれからを信じているし、困った時こそサポートするわ」
「うん。ありがとう、フェリカ!」
つばめの笑顔にフェリカも笑顔で返す。
「取り敢えずはここにいる敵は大丈夫だ。しかし、この先色んなモンスターが出てくるから気を付けろよ」
「ウサギだけじゃなく、ドラゴンやスライムもいるのかな?」
「ああ。動く鎧などもいるからな。この先何が起こるか分からないが、共に戦いながら強くなろうぜ。アンバラスの封印解放を阻止する為にも!」
「ええ。やりましょう!」
パイルマンとつばめはお互い決意を固め合う中、フェリカはこの光景にうんうんと頷く。
「決意を固めたみたいで良かったわ。あと、アンバラスについてだけど、仮に封印がとかれても完全消滅させる方法があるの」
「何かあるのか?」
パイルマンの質問にフェリカは本を開きながら、その方法を確認する。
「4つの場所にある紋章を手に入れる事よ。4つの紋章が光り輝いたその時こそ、勇気の力によってパワーアップし、アンバラスを完全消滅させる事ができるの。けど、紋章を光らせるには紋章を全て揃えるだけでなく、ある方法をしない限りはできないの」
「詳しい事は分からないという事か……」
フェリカの説明にパイルマンは深刻な表情をする。
「まあ、考えても何も始まらないし、今は紋章を探す事に集中しないとな。フェリカ、案内を頼むぜ」
「任せて!まずはクリムの森から案内するわ。早速レッツゴーよ!」
フェリカはすぐにクリムの森へ向かい出し、パイルマンとつばめも後を追いかける。
(臆病だった私も彼等のお陰で少し前に進む事ができた。彼等となら何処でも行ける!自分に自信を持って頑張らないと!)
つばめは心の中で決意を固め、フェリカ、パイルマンと共に冒険の旅に出発したのだった。
※
一方、テンガルク鉱山ではリリアンヌ、シリア、エルメダスの3人が採掘を終えて出口に向かおうとしていた。
「これでおしまい。スベラスはどうするの?」
「もう少しここにいるけど、早めに終わるから!」
「じゃあ、先に行くね!」
3人が鉱山の出口に向かって行った直後、スベラスはノミを打ち込みながら採掘を続けていく。
(誰にも邪魔はさせない……俺の野望を止める奴は……仲間であろうとも殺すのみだ……其の為にも……今は我慢だ……!)
スベラスは心の中でどす黒い野望を抱きながら、採掘を続けていたのだった。
パイルマン達の冒険が始まりました!ここからどうなるかに注目です!