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第九十六話 学校にて

 職員会議から数日後、今年度の体育祭で行われる種目が発表された。今年は例年の出し物に加え、対抗戦に関係ない種目が追加された事が話題となった。


 そんな中、優君がスキルを得るまで所属していた二年一組では体育祭の出場枠を決める話し合いがされていた。


「先生、この仮装競争というのは文字通り仮装して走るという事ですか?」


「そうです、この種目は得点は入りません。皆で楽しむだけの息抜きのような物です。そこで先生からお願いがあるのですが、滝本優君を仮装競争の出走者として受け入れてもらえませんか?」


 先生のお願いに男子生徒は例外なく渋い顔をし、逆に女子生徒は嬉しそうな顔をした。当然、男子生徒は反対し女子生徒は賛成する。


 男子生徒と女子生徒の言い合いは平行線を辿り、落とし所も見つからないと思われた。しかし、とある男子が打開策を提案する。


「条件付きで受け入れても良いですよ。二つの条件を女子が呑むと言うのなら賛成しましょう」


 突然の裏切りに男子生徒は発言した男子に詰め寄る。しかしその男子は男子生徒全員を教室の隅に集めて説得しだした。


「仮装競争は女子だけが出走する事と、仮装は俺達が指定した物にする事を条件にするんだ」


「女子だけって、滝本は男だろうがよ」


「忘れたのか?滝本は女にもなれるんだぞ」


 この時点で男子の一部は賛成に意見が傾いた。見せ物になる競争に自分が出る可能性が無くなるのなら良い条件だと思ったようだ。しかし、それは本命ではなかった。


「仮装だからな。普段しない格好をさせられるんだろ。例えばバニーガールとか、ハイレグ水着とか」


「おおっ、お前天才かっ!」


「走った振動でポロリ、なんてアクシデントは仕方ないよな」


 この瞬間、全ての男子の意見は賛成に翻った。何としてもこの条件を女子に呑ませる、その思いで皆の意思は固く結ばれた。


「・・・学校行事という事を忘れてないわよね?そんなの許される筈がないでしょう?」


 熱い思いを抱いた男子生徒に水を差す言葉が投げかけられた。男子が恐る恐る声の主の方を見ると、こめかみに青筋を浮かせた先生が鬼の形相で睨んでいた。


「男子全員、お説教が必要なようね。保護者も呼んで顛末を説明しようかしら?」


「「「「すいませんでしたー!」」」」


 下心満載の条件付けを親に、とりわけ母親にバラされようものならどんな罰が言い渡されるか分かった物ではない。男子は一人残らず土下座をして許しを請うた。


「じゃあ、滝本君の参加は決定ね。無条件というのも可哀想だから、仮装競争は女子で参加にしましょうか。女子も良いわね?」


 元より女子に異存などある筈もなく、優君が二年一組の一員として仮装競争に出場する事が決定した。


「と言っても、まだ本人に確認を取っていないので不参加となる可能性もあります。ですが、学校側としては参加してくれるよう説得するつもりです」


 こうして、優君が一般生徒として参加しても問題の無い種目に出場させる事で全方位からの苦情を避ける策は実行された。


「先生、滝本君は男の娘としての出走ですか?女の子としての出走ですか?」


「彼は校内で女性になる事を避けているから、男の娘としての出走になると思うわ。そこはちゃんと本人に確認してね」


 女子達は優にどんな衣装を着せようかを楽しげに相談しだした。果たして優君はどんな衣装で走る事になるのだろうか。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ガツンと男子に指導してくれて嬉しい。 いるんだ……息子のクラスに、高校生にもなってまだ同じ様なレベルな事を言ってくる子が………。 私達が言う前、気づく前に担任の先生方が謝ってくるんで、今、…
[一言] 優君の知らぬ間に 外堀どころか 内堀まで埋まっていた件
[一言] 相変わらずのぶっ飛んだ設定。 楽しませて貰ってますが、無理を重ねない程度の更新頻度で構わないので、連載頑張ってください
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