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第九十話

 渦を抜け、十九階層に入る。素早い動きと二羽の連携が厄介な夫婦鶏を相手にする場合、大盾で片方の攻撃を防いだ所に相方の攻撃を受ける恐れがある。


 双剣を装備して周囲を探る。迷宮や洞窟のステージならぱ前後の警戒だけで済むので楽だったのだが、残念ながら森林ステージとなっていた。


 右側の高い位置の枝から夫婦鶏の雄が飛びかかってくる。鋭い爪を剣で弾くが時間差で雌の爪が迫る。右手の剣は雄の攻撃を弾くのに使ってしまった。左の剣は間に合うか微妙。しゃがんで躱す。


 先に着地した雄が翼を広げて飛び、胴体を狙い体当たりを仕掛ける。その背後からの雌の攻撃を警戒しバックステップで避けた。


 しかし雌は雄に続いて飛んでおらず、低い体勢から足を狙って嘴を繰り出して来た。反射的に足を下げて避けると通過する雌鶏を蹴り上げた。


 無防備に蹴り上げを食らった雌鶏は空中に跳ね上がる。左右の剣を振るい連撃を叩き込むと魔石へと変化した。


 連れ合いを倒されて怒りに燃えた雄鶏は再度飛び上がり、爪を突き立てようと迫る。しかしそんな単純な攻撃を受ける筈もなく、左の剣で爪を弾くと右の剣で首筋を切り裂く。


 雄鶏は雌鶏の仇を討つ事叶わず魔石へと変化した。寄り添うように転がる魔石を拾いリュックに収納する。


「これは思ったよりも消耗するな」


 無傷で勝つ事は出来る。しかし、二羽による連携が鋭く速度も早い為気が抜けない。適時迷い家での休憩を取るべきだろう。


「だが俺は戦う。鶏肉を確保する為に!」


 俺は家族の期待を背負っている。父さんの為に、母さんの為に、舞の為に、美味しい鶏肉を十分な量確保しなければ。


 その後三対の夫婦鶏を倒し鶏肉も一つ確保する事に成功した。休憩と昼食の為に玉藻となり迷い家に入る。


 畑からトマトを収穫し母屋に入る。居間にリュックを置いて台所に向かいトマトを軽く洗った。切って皿に盛ったりはしない。丸ごとかぶりつく。


 俺以外の探索者は、この十九階層に来るまでに体力と精神力を消耗して来る。俺はサクサクと進んで来ているが、普通はこうはいかないのだ。


 そしてろくに回復する事も出来ないままに強くなっていくモンスターへの対応を強いられる。そして増々体力と精神力が削られる。


 撤退となっても帰りにもモンスターへの対応が待っている。運良くモンスターに遭遇しなければ良いが、そんな事はまず無いだろう。


 なので対応出来る限界まで潜る事は出来ない。そこを見誤ったパーティーが払う代償は自分達の命となるのだ。


「それをひっくり返す鬼札がこの迷い家だ。本当にありがたい」


 今更何をと言われるかもしれないが、精神力をゴリゴリ削られる戦いをして迷い家で回復したからこそその威力が改めて実感できた。


 十分に回復したので戦いに戻る事にする。次は玉藻で夫婦鶏の相手をしてみよう。


「神様、本当に凄いスキルをありがとうございます。絶対にダンジョン探索を進める事を誓います」


 お社に参って神様への感謝と決意を告げる。あっ、鶏肉料理の奉納もしますのでご安心を。


 玉藻での戦闘は呆気なかった。基本スペックが優の上位互換となる為夫婦鶏の攻撃を躱す事は容易く、躱して鉄扇で首を切るだけのお仕事となった。


 空歩で空中からの狐火を使えば戦闘にすらならない。高度を取れば飛んでくる前に焼く事が出来たし、同高度まで上がられても機動力はこちらが完全に上なのだ。


 玉藻で乱獲をして俺は、十分過ぎる量の鶏肉を確保出来た。全て持ち帰っては多すぎる為、半数を迷い家に残していく。


 暫く鶏肉に不自由しなくなってしまった。次の目標は打撃武器の購入にしよう。ゴーレムを倒せる手段が欲しい。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  一昨日から読み始めました!  少し違う平行世界だけど、現代ダンジョン物語って、もし現実にダンジョンがあったらって妄想が進んでワクワクしますよね。  これからもよろしくお願いします。 [気…
[一言] 次のミッションは海鮮の確保かな?
[良い点] 更新ありがとうございます モチベーションは大事ですよね。食欲>ダンジョン攻略でも美味しい物目当てに下層へ突き進めば問題なし(笑) [気になる点] 雌鶏、玉子はドロップしないのかな? [一言…
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