第八百六十二話
「つまり、駄洒落を聞いた相手をフリーズさせるスキルという訳じゃな」
「はい、駄洒落の下らなさによって効果時間が前後するみたいです」
羞恥で顔を真っ赤にしている白石さんからスキルの詳細を聞き出した。これ、前に調査に来た先輩は聞かなかったのかな?
「以前陸軍の方がお見えになった時はここまで知らなくて・・・その後放置はマズイのではと調べたのです」
ご両親が死んだ目をしているので、スキルの被験者にはご両親がなられたのだろう。ご夫妻はどれだけ駄洒落を聞かされたのやら。
「これ、ダンジョンのモンスターにも効くのかな?」
「例え効いても有効性は低いじゃろう。パーティーメンバーまでフリーズする故、モンスターが止まっても攻撃する者がおらぬ」
スキルを使った本人も羞恥心で硬直しているみたいだからね。回数熟せば羞恥が薄れて本人だけは攻撃出来るようになるかもしれないけど、当人の精神が耐えられるかどうか。
「それで、私はどうなるのでしょうか?」
「どうにもならぬから安心せい。妾達は先の事件を受けてスキルの再確認をしているだけじゃ。大したことが無いと思われておるスキルが大きな力を発揮するという例を示された故にな」
実際はこれに呪いの件もあっての再調査なのだが、あの件は一般には伏せられているのでこの場で言う訳にはいかない。
「お主がスキルを活かしたいと言うならば軍より仕事の斡旋があるやもしれぬ。じゃが、お主が使いたくないと言うのなら軍は干渉せぬよ」
「では封印すると言う事でお願いします。私はスキルを使いません!」
間髪入れずに宣言する白石さん。若い女性が親父ギャグを口にするのは恥ずかしかろう。
「スキルの確認も出来た事じゃし、お暇するべきかのぅ」
「玉藻様、滝本中尉に戻らないと騒ぎになりますって!」
任務が終わったので宿に帰ろうとしたが、先輩に止められた。慌てて妖狐化と女性体を解いて男の姿に戻る。
「神使様にお目にかかれただけでなく、お姿を変える様まで拝見出来るとは・・・」
「初めてこのスキルで恩恵を受けました」
この平和な島であのスキルが活躍するケースというのも無いだろう。このまま平穏に暮らして欲しいと願うばかりである。
「ところで先輩、猫が近寄ってこないように思うのですが・・・」
「そう言えば近くに来ないな。と言うか、俺たちから離れてないか?」
ニャンコが近くに来たらモフろうと画策していたのだが、何故か猫達は逃げるように離れて行ってしまう。これではニャンコをモフれない。
「ちょっとそこで止まってくれ・・・ああ、やはり。猫達は中尉から逃げているな」
先輩が近寄っても猫は逃げずに俺の方を見ていた。すぐ脇まで行って触っても逃げないのだ。
「中尉が特別だと本能で分かってるのでは?」
「神気は抑えた筈だったのですが・・・」
初対面の人に神気を浴びせる事になるので、限界まで神気を抑えていた。白石家の三人に異常は見られなかったから安心していたのだ。
「まあ、猫達が話せる訳ではないし、問題ないだろう。確か猫と話せるようなスキル持ちは居なかった筈だしな」
翌朝になっても猫に避けられた俺は、折角猫島に来たにもかかわらず猫と戯れる事が出来なかった。この鬱憤はダンジョンの八階層で晴らしてやる!
その後、巣鴨ダンジョン八階層で迷い猫をモフり倒す滝本中尉の姿が目撃された。




