第八十六話
家族の団らんを満喫した翌日、十一階層での牛狩りの誘惑を振り切って十二階層に進出した。途中出くわした牛さんは魔石しか落としてくれませんでした。
物欲センサーさん、たまにはお休みしても良いのですよ。夏休みだし、長期休暇を取られては如何でしょうか。目指せ、ホワイトな労働環境!
なんておバカな事を考えていると頭上から火の玉が降ってきた。落とし亀の大盾でガードしたので受けたダメージは無い。
頭上を見ると火鷹が旋回している。余計な事を考えていて奇襲を許すとか、穴に埋まって反省するレベルの失態だ。繰り返さぬようにしなければ。
再び火の玉が放たれるも難なく防ぐ。火鷹はただ撃つだけでは防がれると思ったのか高度を下げながら俺の周りを回りだした。
いくら素早く飛べる火鷹であろうとも、大きく回っているので横や後ろを取られないよう正対するのは難しい事ではない。
距離が短くなった分火の玉の発射から着弾までの時間は短くなったが、盾で防ぐ余裕は十分にある。しかしこちらも飛び道具が無いので攻撃出来ない。
膠着状態に嫌気が差したのか、火鷹が更に距離を詰める。旋回半径が小さくなった事で向き合うのが遅れ、俺は火鷹に盾で守られていない側面を曝す事となった。
それをチャンスと見た火鷹は火の玉を撃ちつつその後を追い追撃する構えを見せる。しかし、それは俺の誘いによる罠だった。
横へのステップで火の玉を躱す。鋭い爪で攻撃しようと軌道を修正した火鷹に大盾を構え、接触の瞬間に力強く押し出した。
シールドバッシュをまともに食らった火鷹は飛行を維持出来ず地面に落ちた。大盾から双剣に換装した俺はその胴体に二本の剣を突き刺して止めを刺す。
光に包まれ魔石へと変化した火鷹を確認して息をつく。双剣を大盾に換装し直して魔石を拾い、リュックに放り込んだ。
突撃牛よりも遥かに軽い火鷹の攻撃は落とし亀の大盾を使えば楽に防ぐ事が出来る。倒すのも双剣で充分なのが確認出来たので、十三階層に進んでしまおう。
火鷹は飛ぶ相手との戦闘、魔法を撃ってくる相手の戦闘の練習という点では良い相手だが、接近を待たねば攻撃出来ないので時間が掛かりすぎる。
更に一羽の火鷹を倒し十三階層への渦に到着した。接近するまで時間が掛かったのでもう昼に近い。昼食をここで取ろうか十三階層で取るかを少し考えたが、十三階層で取る事にした。
十二階層で食べていて火鷹に襲撃されたら、またそこで時間を食ってしまう。それは避けたかったのだ。
十三階層に出て渦を背後に昼食を取る。今日の昼食はオーク肉のカツサンドだ。食パンで母さん特製ソースがかかったオークカツと千切りキャベツを贅沢に挟んだ一品である。
一つ目を食べきり、次のカツサンドに手をかけた時、コボルドが駆け寄ってきた。このダンジョンの十三階層は迷宮ステージなので、気配を殺していても接近してくるのが丸見えになる。
仕方なくカツサンドを弁当箱に戻してリュックにしまい、お手拭きで手を拭いて大盾を構える。その間にコボルドはすぐ近くまで接近していて、右腕で鋭い爪を突き出して来た。
それを大盾で防ぐも、左右の腕を繰り出し爪を突き立てようとラッシュをかけられる。全てを防いでいるとこちらが攻撃しない事に慢心したのかラッシュが緩くなった。
正面から受けていた攻撃を上に流すよう弾くと、コボルドは上体を流されて柔らかい腹部を曝す。換装した双剣で連撃を繰り出して引き裂くと、呆気なく魔石へと変化した。
作者「なあ、迷い家に入ればゆっくりと食事出来ただろ?」
優「あっ・・・」




