第八十五話
次からのオークも試行錯誤しながら倒していく。棍棒を全て流さず受けたり、シールドバッシュでどこまで体勢を崩せるか試したり、双剣だけで戦ったり。
オークの素早さでは俺の動きに付いてこれず、ヒットアンドアウェイで触らせずに倒す事が出来た。昼休憩を挟んで十一階層に降りる。
突撃牛の突撃は正面から受けると踏ん張りが効かずに押されてしまった。オークの棍棒は上から振り下ろされるので衝撃は地面に逃げるが、突撃牛の突撃は真正面からなので威力をそのまま受けてしまう。
華奢な俺では体重が足りないので抑えきれない。こればかりはどうしようもないのでそれを踏まえた上で戦わなければならない。
動きを止められながらも押してくる突撃牛を大盾を斜めにずらして横に誘導する。力を逃されて俺の横をすり抜ける突撃牛の首に換装した双剣で斬りつけた。
比較的筋肉の薄い首を切られた突撃牛は魔石へと変化する。突撃をいなすように防げば突撃牛も問題なく倒せそうだ。
その後は時間が許す限り突撃牛を倒し続けた。横からの衝撃を逃がす訓練の為であり、まとまった量の牛肉が入手出来たのは副次的な余録であったと明言しておく。
「母さん、暫く豚肉と牛肉は買う必要ないからね」
「優、これ、全部ダンジョンで狩って来たの?」
家に帰り持ち帰った豚肉と牛肉を出すと、母さんは盛大に驚いていた。体力が高いオークと突撃牛はパーティーで戦っても倒すのに時間がかかるものだからだ。
「牛肉を出すモンスターって、強いと聞いたような気がするが・・・」
「牛肉は十一階層の突撃牛のドロップだよ。今日は十階層のオークと十一階層の突撃牛で訓練してきたから」
事も無げに言うと、両親も舞も呆れたような目で俺を見つめる。ため息をついた父さんが口火を切った。
「二桁階層なんて、ソロで戦うのも大変だと記憶していたが、どうやったらこれだけの量を一日で狩れるんだ?」
「そこに行けないパーティーも居るのよね。我が息子ながら規格外な・・・」
「まあ、お兄ちゃんだから。何も考えずに受け入れるしかないでしょ」
非常識な行いだとは重々承知している。着せ替え人形とヘラクレス症候群の相性が良すぎた結果です。
「折角のお土産だし、明日は土曜日だし、優ちゃんが食べたいメニューを作るわよ。何が良いかしら?」
「挽き肉にしてハンバーグなんて良いかも」
翌日は朝食後から一家揃ってハンバーグ作りを行った。母さんがソースを作り、俺と舞がお肉をミンサーで挽き肉にしていく。
つなぎの玉ねぎは父さんがみじん切りにしていった。出来た具材を皆で捏ねて整形していく。
「昼はシンプルに焼いて、夜は煮込みハンバーグね」
「ダンジョン産の牛肉は美味しいと聞くし、これは楽しみだな」
突撃牛の肉も市場に出回る量が少ないので高級食材だったりする。なのでうちの食卓に上がるのは初だ。母さん特製ソースがかかったハンバーグは絶品だった。
「これは・・・ダンジョン産の肉だとこうも違う物なのか」
「豚肉も突撃豚じゃなくオーク肉だからね。同じ豚肉でも一味違うと思うよ」
一階層で取れる突撃豚の肉は倒すのも持ち帰るのも楽なので安価で出回っている。しかしオーク肉は持ち帰るのも倒すのも大変なのでこちらも高級食材である。
「ヤバイ、こんな味に慣れたら普通のお肉食べられなくなりそう」
「舞、心配するな。必要な分だけお兄ちゃんが取ってくるから」
夕食の食べた煮込みハンバーグも頬が落ちる程の美味でした。ダンジョンさん、美味しいお肉をありがとう。
 




