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第ハ十二話

優「おい作者、本格インドカレーの店でビーフカレーは可怪しくないか?とツッコミ入ってるぞ」

作者「指摘されて俺も思った。だけどあれ、実体験なんだよ。もう30年程前だからもう閉店してるかもだけど、ナンを初めて食べたから覚えてるんだ」

 俺が住む街の駅前からは、一時間に一本の割合で川向こうの小江戸と呼ばれる街に行くバスが出ている。今、俺と舞はそのバスに乗っている。


「あら、可愛い姉妹ね。二人でお出かけかしら?」


「はい、お姉ちゃんと染料タウンに行くんです」


 近くに座った品の良さげな老婦人の問いに満面の笑みで答える舞。俺は微笑みを顔に貼り付けてそれを見ている。しかし二人の談笑は長くは続かず、バスは染料タウン前のバス停に停車した。


 この染料タウンは全国にショッピングモールを展開している大企業が作った巨大モールだ。この市は染料となる花が特産なので、そこから名前を決めたらしい。


「お姉ちゃん、早く行こう!」


「ちょっ、舞、引っ張らないで!」


 楽しそうに腕を引く舞と一緒に建物に入る。着慣れないスカートを着ているので少し歩きにくい。膝下までの長さはあるけれど、捲れてしまいそうで怖い。


 会話で察してくれたと思うが、今の俺はスキル女性体を発動させている。舞に希望を聞いた時、お姉ちゃんとお出かけと言われた為だ。


 言質を取られた俺に拒否権などあるはずも無く、こうして女性の姿でお出かけとなってしまった。こればかりは自分の迂闊さが招いた事なので誰も責められない。


「あっ、ニャンコだ。可愛いなぁ」


 入ってすぐの場所にあるペットショップでは、子猫や子犬が展示スペースで戯れていた。ボールで遊ぶ子や半分寝ている子がいて個性が感じられる。


「あっ、舞ちゃんだ。舞ちゃんも来てたんだ」


「うん、お姉ちゃんと一緒に来たの!」


 ペットショップを離れ洋服店で洋服を見ていると、少女が舞に話しかけてきた。舞は見せつけるように俺と腕を組む。


「いのりちゃん、お友達?」


「うん、同じクラスの舞ちゃん。舞ちゃん、お姉ちゃんいたんだ。知らなかったよ」


 このショッピングモールは色々なテナントが入っているので家族連れでの来店が多い。舞のクラスメートと出会う事もあるだろう。


 少し話しをしていのりちゃん親子と別れる。舞がお姉ちゃん自慢をしていたような気がするが、聞かなかった事にしておこう。


 その後、本屋で新刊をチェックし小物店でアクセサリーを見て鞄屋でウエストポーチやバッグを見ていった。俺には買わぬ商品を次々と見る楽しさは分からないが、舞は小学生でも女性ということだな。


「ふうっ、ここのおうどん美味しいね」


「うどんは腰があるし、天ぷらはサクッとして美味しいわね」


 昼時になったのでフードコートで昼食をとる。ここでも舞の同級生と出くわし、舞はお姉ちゃん自慢をやっていた。


「舞、ここに来たのはそれが目的だったの?」


「え、そ、そんな事は・・・」


 数人の同級生と遭遇したが、舞は必ずお姉ちゃん自慢をやっていた。舞にとって自慢出来るような兄でありたいとは思っていたが、これは少し恥ずかしい。


「だって、お兄ちゃん中々お姉ちゃんになってくれないし、綺麗なお姉ちゃんを自慢したかったし・・・」


「舞、恥ずかしいから程々にね」


 何だかんだで許してしまう自分は甘いのだろう。しかし、前世の某ラノベの主人公は「子の躾は親の仕事。祖父はただ甘やかせば良い」という旨の発言をしていた。


 同様に兄も妹に少しばかり甘くとも許されるのではないか。許されるという事にしておこう。


 その後、食後のデザートにアイスを食べて食品売り場で頼まれていた夕食のおかずを購入する。はしゃぎすぎたのか舞も少し疲れた様子だった。


「・・・荷物もあるし、タクシー呼んで帰ろっか」


「うん、お姉ちゃん大好き!」


 タクシーを呼んだのは、帰りのバスも一時間に一本で時間が合わなかったからだ。決して舞に甘いからではない。

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― 新着の感想 ―
確かに食べたんだ。インドカレー屋のビーフカレー…まるで天使みたいに笑って…
[一言] ビーフカレーの店は確かに少ないけど、ない訳じゃないからねぇ。 まぁ、知らん人はそれなりにいそう…
[一言] 実はインドは牛肉の輸出が世界一の国です。食べてはいけない牛は品種が決まっています
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