第七百五十八話
「母さん、済まぬがお供え出来る料理はないかえ?」
「宇迦之御魂神様に供えるの?今天ぷらを揚げる準備をしていたのよ」
依頼されていた案件に関連する事とは言え、お願い事をするのだから対価は必要だ。ただ与えられるだけの関係というのは不健全で破綻する危険がある。
俺と舞、アーシャも手伝ってお供え用の天ぷらを揚げていく。山で採れたタラの芽にウド、ゼンマイといった山菜にシイタケやマイタケといったキノコ類。
「海老や烏賊が無いのが残念だわ」
「その辺は磯釣りで釣れないからのぅ」
少し不満そうな母さん。アジやキスはあるのだが、天ぷらでは定番の烏賊や海老は無かった。野菜類では迷い家の畑で採れた茄子やジャガイモ、さつま芋を揚げていく。
「種類が多いから量も多くなったわね」
「まあ、少ないよりは良いじゃろう。宇迦之御魂神様が食べ切らなければ仕える者が食すと思うでな」
奉納にはお母さんと舞、アーシャも一緒に来る事に。予想より多くなったお皿を一人で持てなかったので助かった。
「宇迦之御魂神様、ご依頼の件ですがダンジョンの最奥と思われる場所に到達致しました。しかし制御区画に進む手段が不明な為、お知恵をお借りしたく存じます」
天ぷらを供えて念じ、最奥に到達した事を報告した。するとすぐに宇迦之御魂神様からの物と思われる思念が届いた。
『えっ、もう到達?うむ、ようやってくれたのじゃ。制御区画の件は思兼命に問うてみる。暫し待つのじゃ』
どうやら宇迦之御魂神様も制御区画への侵入方法を知らないらしい。元々ダンジョンは異世界産なので、こっちの世界の神様の管轄外だからね。
『はふっ、はふっ、天ぷらは熱々が美味いのぅ。妾への念が籠っておるのも高ポイントじゃ。あっ、これ、思兼、勝手に食うでない!』
ちょっ、宇迦之御魂神様、念話繋がったままですが?もしかして、思兼命様が来て天ぷら食べられてます?
『父様まで!娘のおやつを食べる父親って・・・あっ、その茄子は妾が狙っておったのに!』
うん、素戔嗚命神様まで乱入して天ぷらの取り合いになっているみたいだ。これ、追加でお供えした方が良いのかな?
「玉藻ちゃん、何だか微妙な表情だけどどうしたのかしら?」
「えっと、もう少し天ぷらをお供えした方が良いかもしれぬ」
神界では天ぷらを巡って戦場になっているなんて、神様方の名誉の為にも口が裂けても言えやしない。なので詳細を語らず追加で天ぷらをお供えするようお願いした。
『最後の楽しみに取っておいた茄子天が・・・』
「宇迦之御魂神様、ただ今追加の天ぷらを揚げております。今暫くお待ち下さい」
『なっ、念話が切れておらぬ?ま、まさか筒抜けだったなんて事は・・・あ、あれは違うのじゃ。勝手にやって来て妾へのお供えを食べた思兼と父様が悪いのじゃ!』
どう返答してよいか分からず沈黙していると、宇迦之御魂神様は察したようで言い訳をし始めた。俺達が揚げた天ぷらを気に入っていただけたのならば光栄だし、気にする事は無いと思うけどね。
作者「話が進まない・・・」
玉藻「全てお主のせいじゃろうが」




