第七十三話
前話における佐倉さんの攻撃が無差別爆撃になってるようで・・・
勿論作者も被弾しました(泣)
「それでは費用はこの額で。鞘は明日の午前中に、大盾は明後日の午後にはできるだろう」
「随分と早いですね。ありがたいですけど大丈夫ですか?」
「こんな面白い仕事、優先するしかないだろう。幸い急ぎの仕事もないしな」
宮野さんが大丈夫と言うのだからお任せしよう。俺としても早い方が有り難い。打ち合わせも終わり、宮野さんと握手を交わして立ち上がった所でギルド長が復活した。
「ちょ、ちょっと待った滝本君。ダンジョンで獣人の少女を見なかったか?」
「獣人の少女ですか?少女に限らず獣人の方は見かけていませんね」
昨日地上に向かった玉藻の報告がギルド長にも行っていたのだろう。間引き部隊との接触で軍とギルドはその存在を知っているのだから、情報を得ようとするのは当然だ。
「以前軍の部隊が接触したという狐の獣人ですか。本当に居たんですね」
「らしいな。少なくともこの帝国では狐の獣人は初の目撃例だ。本人から色々と聞きたいのだが足取りが掴めていない」
そりゃあ足取りなんて掴める筈はない。本人が目の前に居るのだが、獣人化のスキルを使ったら元の姿に戻れないという刷り込みがあるから気付かれる事はまずない。
「噂では聞きましたが、本当に居るのですね。残念ながら亀狩りで九階層に籠もっていましたから」
俺が九階層にずっと居たという物証は目の前にある。売却した多数の魔石に加え、出現率の低い落とし亀の甲羅。倒しにくい落とし亀をこの数狩ったのだから疑う余地はない。
もっとも、それは事前に用意された偽の証拠なのだが。どこのダンジョンでドロップしたのか判別しようがない以上、この偽の証拠がバレる可能性は限りなく低い。
それに、もし疑われても俺のステータスカードには1999ダンジョンの踏破記録が九階層までしか無い。玉藻が潜ったのは十七階層だから、簡単に否定する事が出来る。
「昨日の午前中に十七階層から上に戻って行ったらしいのだが、出口のギルド員から通過報告をされていないんだ。狐獣人なんてインパクト有り過ぎる存在、見落とす筈はないんだがなぁ・・・」
「そうですね、これを持ち帰った俺も話しかけられましたから。前例のない狐獣人なんて通ったら絶対に話しかけるでしょうね」
とすっとぼけた感想を返しているが、当の本人なのである。笑いを堪えて普通にやり取りするのがちょっときつくなってきた。
「だよなぁ。となると、出入り口のギルド員に気付かれずに出ていったかまだダンジョン内に居るかだ。人の多い浅い階層で目撃報告が無いから、どうにかして出ているのか・・・」
ギルド長は腕を組み考え込んでしまった。取り敢えずやるべき事は終わったので、宮野さんと共に退室する。一応ギルド長に声を掛けたが聞こえたかどうかはわからない。
宮野さんと別れ受付の方に戻る。受付嬢に軽く頭を下げて挨拶し、探索者達がたむろするスペースに入る。
「本当だって、すっげえ可愛い狐獣人の娘が居たんだよ」
「そりゃ絶対にスカウトしなくちゃな。まだ出てないんだろう?」
「らしいな。ダンジョンから出たという情報はない。だから早く見つけて勧誘するんだ!リーダーは何やってるんだ、早く来ないと先を越されるぞ」
ギルド内は玉藻の話題でもちきりだった。落とし亀の甲羅を持ち帰った俺も注目を浴びたが、希少な獣人、しかもソロで美少女と比べれば大盾使いなど無視されても仕方ない。
・・・自分で自分を美少女と言うのかって?顔立ちが整っていて狐耳とフサフサの尻尾を装備した巫女服の少女が可愛くないと?
 




