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第七百二十一話

「中尉殿、こちらです」


 兵に案内してもらい、製薬会社の敷地に入る。木々の奥から交戦している実戦部隊の声が聞こえてくる。


「無理はするな、間合いを広く取れ!」


「馬鹿、ダメだ!」


 体高三メートルを超えていそうな巨人が根や枝がついたままの木を反時計回りに薙ぐ。その動き出しに合わせて背後から片手剣持ちの兵が突きを繰り出すが、勢いに任せて一回転させた木が直撃した。


「おい、大丈夫かっ・・・息はある、誰か、後方に搬送をっ!」

 

 横に吹き飛ばされ、生えている木に当たって崩れ落ちた兵に駆け寄り状態を確認した。意識は無いが呼吸と鼓動はしっかりしている。命が脅かされる程の重傷ではないだろう。


「中尉殿、お手を煩わせてしまい申し訳ありません」


「改造人間との戦闘経験は俺が一番豊富だからな。犠牲者を抑える為に参戦させてもらいます」


「助かります。おい、滝本中尉が参戦なさる。距離を取れ!」


 ここの責任者と思われる軍曹と言葉を交わし、女性体と着せ替え人形を発動する。ドレスアーマーに双剣を装備して実験体と対峙した。


「だぎもどぉ・・・だぎもどなのがぁ」


「私の事を知っている?まさかまたベルウッドの関係者とか言わないよね?」


 女性体な上有名になった黒ゴスではなくドレスアーマーなので見た目で滝本優だと認識出来る人は少ない筈だが、先程軍曹が俺の名を叫んでいる。


「きざまがぁ、ぎさまがしだがわながったせいてぇぇぇ!」


「何だか逆恨みされてる?従わなかったってどういう事なんだよ!」


 聞き取りにくいが、貴様が従わなかったせいでと言っている。顔見知りのような物言いだが、一体誰なのか。


「ぎさまがみどりざまにじたかっていればよかっだのだぁぁぁ!」


「みどり様って言われても・・・」


 会話をしている最中にも木による攻撃は続けられている。大振りなのと生えている木で攻撃が制限されているから躱すのは然程苦労しない。


「あの怪物、滝本中尉殿のお知り合いか?」


「中尉殿は有名人だから、一方的に知っているという可能性もあるが・・・」


 攻撃対象が俺だけとなり、周りを囲う兵は余裕が生まれていた。俺と奴との会話を考察しているが、何かしらのヒントになるような情報持ってる人居ないかな。


「ぎさま、みどりざまをおぼえでいないというか!ゆるぜん、ゆるせんぞぉぉぉぉ!」


「いや、ちょっと待て。緑様と名前で言われても思い出せん。せめて名字を教えてくれ!」


「ぶざけるなぁ、みどりざまといえばすずきみどりざまにきまっでいるだろうがぁぁぁ!」


 流れで名字を聞いたら答えが返ってきた。今さらだが、こいつ結構理性を保ってないか?きちんと受け答え出来るのだから、説得して暴れるのを止められるのではなかろうか。


 彼とて改造された被害者だ。戦わずに説得して終わるならそれが最良だ。でも、何だか俺に恨み持ってるから話を聞いてくれるかどうか。


 もしかして、俺が出てこなかった方がすんなり解決したかも?

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― 新着の感想 ―
まあそもそもあの残念お嬢様と別に仲良かったわけじゃないしな 突然やってきて無茶振りしてお断りされてすごすご帰るみたいなのががだいたいのパターンだったしwww これで暗黒メガコーポ鈴木財閥に捜査のメス…
錯乱はしてるけど会話ができるほどに強度が高いのは華族の護衛だっただけありますね ただそれゆえエリート思想に凝り固まってるのが勿体ない
これ鈴木さんにも当然なから疑いの目が向くよね 芋づる式に鈴木財閥へも捜査の手が伸びそう 陸軍としてはあまり深いところまで捜査されると自分たちにも飛び火しそうだから困るかな? 今なら警察の不祥事で軍の立…
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