第七百十四話
「お兄ちゃん、ハンバーガー屋さんがあるよ!」
まず初めに入ったのは、チェーンしているハンバーガーショップのバーガーエンペラーだった。値段に対して美味しくて量もあると好評なお店らしい。
「ちょっと早いけど、お昼ご飯ここでも良い?」
「私も食べてみたいです」
二人にお願いされて否と言える訳がない。俺も興味があったものの来店は初めてなので乗り気になっていた。
「いらっしゃいませー、店内でお召し上がりですか?」
「はい、ここで食べます。舞はえっと・・・アボカドアッパーセットで!」
「私は・・・普通のアッパーセットにします」
キャイキャイとはしゃぎながら注文する舞とアーシャ。楽しそうで何よりだが、二人が頼んだメニューには少し懸念がある。
「舞、アーシャ。アッパーは普通のバーガーより大きい奴だぞ、食べきれるのか?」
「大丈夫だよ。もし食べきれなかったらお兄ちゃんが食べてくれるよね?」
「私も・・・お願いします」
無難に普通のバーガーにしておいてほしい所だが、俺の注文を普通のにして二人が残した場合に備えればいいか。
「仕方ないな。お兄ちゃんが引き受けるから、無理して食べ過ぎるなよ?」
「「ありがとう」ございます」
俺を見上げ笑顔でお礼を言う舞とアーシャ。可愛い美少女二人の笑顔、プライスレス。
「お客様、サービスでお巡りさん召喚の無料サービスを行っていますがセットで如何ですか?・・・可愛い女の子連れの男なんてタイーホされてしまえっ」
「それ、絶対に店員さんの個人的な感情だろっ!それに本音が漏れてるぞ!」
レイスの布では二人の可愛さは隠しきれないようだ。店員さんの嫉妬の視線が俺に容赦なく突き刺さっている。
「コホン、失礼しました。お詫びと言ってはなんですが、SNS会員のみに販売となっています期間限定メニューは如何でしょうか」
「へぇ、そんなメニューがあるんですね。どれどれ・・・」
差し出されたチラシに大きく載っていたハンバーガーは、ハンバーガーと呼んで良いのか迷う物だった。思わず硬直した俺の両脇から舞とアーシャが覗き込む。
「わぁ、ハンバーグの代わりにお稲荷さんを挟んだのですね」
「お稲荷様バーガー・・・これ、絶対にあの影響よね」
俺も舞の呟きが合っていると思う。これは玉藻効果を狙ったメニュー以外の何物でもないだろう。しかし、よくこんなメニューを出したなバーガーエンペラー総本部!
「SNS会員に期間限定という半端なフェアから察するに、推進派と反対派が対立。妥協案として販売対象と期間を限定したって所かな」
「何でそんな事読めるんですか!お客さん、もしかして高校生探偵とか言われてたりしてます?」
止めてくれ。そんな呼び名だったら出かける度に事件に遭遇して解決に乗り出したりしなくてはならなくなる。
「じゃあ、そのセットでお願いします」
この店員さんとの会話に疲れた俺は、メニューから選ぶ気力もなくなりお勧めされたセットを頼んだのだった。




