第七百十三話
ヘリを引き連れながら車は走り、新都心に近付く。国道の上に建設された高速道路はループしてくるりと回り、高度を落として地中へと入る。
「申し訳ありません、ここで埼玉県警が手配した車両に乗り換えをお願いします」
トンネルの中にはスモークで窓から中が窺えなくなっているワゴン車が待機していた。乗ってきた車を降りた俺達はそちらの車に乗り換える。
疑いもなく素直に乗り換えた理由。それは開いた運転席のドアの前に埼玉県警本部長が立っていたからだ。
「ここからは本官が皆様をお送り致します!」
「本部長自ら運転されるとは・・・お願いします」
部下に運転させて助手席に同乗するならまだ分かるが、本部長が自分で運転するって良いの?
「マスコミがあちらを追って行ったのを確認後出発致します。この車両に護衛は居ませんが、カリオ上尾までの要所に配置してありますのでご安心を」
俺達が乗っていた車は高速道路を終点まで走り、県道を使い帝都に戻るらしい。少ししてマスコミが釣られた事が確認され、高速道路から出て旧中山道を北上する。
「高い地位の人達が買い物に行かず商人を呼び寄せるのって合理的だったのね」
「気軽にお買い物が出来る人達が少し羨ましく思います」
ここまで厳重なのは一握りの人達だけだと思うけどね。まあ、アーシャはその一握りだから諦めて貰うしかない。
車は順調に進み、旧中山道から左折して県道に入る。暫くすると右手に広い林が見えてきた。県道との間にはコンクリートの塀が続いている。
「塀に囲まれた林?何で林を囲っているのかしら?」
「ああ、あれは製薬会社の研究所ですよ。自然由来の素材を採取するた為の林だそうです」
前世でもここは製薬会社の敷地だった。歴史が変わっていてもここは変わっていなかったようだ。
「さあ、着きました。ここがカリオ上尾店です」
バイパスに隣接した土地に作られた巨大なショッピングモール。駐車場は多数の車で埋まり、利用客の多さを物語っている。
「忘れ物は無いな?これを過信せず目立たないよう心掛けてくれよ」
「「は〜い!」」
腕に巻いたレイスの布を指さしつつ注意事項を告げる。俺は滝本優のまま二人を連れて買い物に臨む決断を下したのだ。
しかしそのままでは警備する埼玉県警側が納得しない為、警備の人間が元の予定より増量されている。俺が護衛側から護衛対象になった穴埋めの為だ。
「アーシャちゃん、お兄ちゃん早く!」
「舞ちゃん待って。優お兄さん、行きましょう」
今にも駆け出しそうな舞に右手を引かれ、左手をアーシャに引かれて歩く。一般客を装った警備の人が俺達を見てほっこりしているが、警備に集中して下さい。
「うわぁ、色々なお店が入ってるね。凄く広いよ!」
「全部は回れそうにないな。回る店を決めておこうか」
家具屋さんとかスマホショップに行っても買うものは無いしね。ご利用は計画的に!
作者「この林、カブト虫が沢山捕れたんだよ」
玉藻「作者よ、お主作品を私物化しすぎじゃ」
それが作者の特権です。




