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第七百十話

「何時から、気付いていたのですか?」


「確信が持てたのは先の事件が起きた時じゃな。あれは流石に強引過ぎたじゃろ」


 まだ整地段階で見てもほぼ意味がない状態での視察に回り道をしてまで訪れた喫茶店。あれは俺を連れて林原さんが乗った車の後ろに付ける為にやった事だったのだろう。


「巣鴨の時は何処から来るのか不明だったので滝本中尉に巣鴨に居て貰いました。今回は対象が中野から乗るとの情報があったのでそこから尾行する事にしたのです」


「後から考えればあれも異常じゃった。妾が居ずとも取り置きをさせておけば良かったのじゃから」


 ギルドは陸軍の下部組織だ。当然、ギルド直営の店舗に影響を及ぼす事は充分に可能なのである。つまり、初めから関中佐はあの騒動対策の為に俺を巣鴨に居させたのだ。


「上からの命令に背けぬ中佐は、動かせる戦力で最大の妾を動かす事で被害を最小限に抑えようとした。そうじゃな」


「私には、それしか出来なかったのですよ。上に逆らい警察組織に告げる事も出来なかった小心者、それが私です」


「警察組織とてどこまで信用出来るか分からぬ。密告したとて動かず、中佐が消されるだけという事態もあり得たじゃろう」


 もし関中佐が軍に居なかったら。俺は陸軍を頼る事をしなかった可能性が高い。そうなればこの世界が辿った道は大きく変わっていた筈だ。


「その選択が最良かどうかは分からぬ。じゃが、悪い選択ではなかったのではないかと思うておるよ」


「しかし、少女が目覚めぬ理由は魂の欠損だと報告を受けました。そうなった理由は研究所で施された改造が理由としか思えません。そんな神の領域に手を出すような事を・・・」


 中佐の言葉に少し罪悪感が浮かぶ。確かに林原さんが目覚めない原因は魂の欠損で、大元は研究所とやらの所業なのだけど。


「それじゃがな、直接的な原因は多分妾なのじゃ」


「えっ、玉藻様が、ですか?」


「そうじゃ。妾は最後に炎を生み出しておる根源を神炎で焼いたのじゃ。彼女が生み出していた炎はスキルによる物じゃったろう。そしてスキルは魂に紐付く能力なのじゃ」


 スキルは魂の一部と言える。そのスキルを俺は神炎で焼滅させてしまった。なので魂が欠損状態となったというのが真相だろう。


「しかし、あそこで玉藻様が彼女を鎮めなければ被害は甚大な物となっていた筈です。咎められるべきは魂を改造した研究所ではありませんか!」


「そう言って貰えると少しは気が楽になるがのぅ。じゃが、それは中佐も同じじゃよ。元凶は研究所とやら。そしてその背後にある組織じゃて」


 中佐は泣きそうな、でも少し嬉しそうな顔で俺を見る。救いの言葉を否定しようにも、否定すれば玉藻も責める事になってしまう。


「じゃから辞職しようなどと思わぬ事じゃ。自ら命を断つなど言語道断じゃぞ」


「しかし、何かしらのけじめはつけねばなりません」


「お主が消えても上層部は変わらぬじゃろう。中佐の後任も被害を最小限にしようと考える保証は無いのじゃよ」


 責任を取りたいと言うのなら、逃げるのではなく最後まで共に戦ってほしい。個人的な感情も入ってるけど、間違えてはいないよね。

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― 新着の感想 ―
玉藻ちゃんが膝枕で頭よしよししてあげたら1発で元気になる(確信) 戻れなくなるかもしれんけど 関中佐もアレで真面目なんやなって そんなだから部下にも慕われ?てるんよね
関中佐おいたわしや いずれ報いがあらんことを 神炎 魂も燃やせるのか… 記憶とかトラウマとか形の無いものも燃やせそう なんか使い勝手の良い家事用だと思い込んでたw
関中佐が今の心根のままで少将や中将になって権力を掌握すれば、今よりかなりマシになりそうですけどね 緒方元少将も今なら協力してくれそう 不遇スキルでありながら少将までのし上がり、皇居ダンジョン攻略の責任…
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