第七百四話
「道路交通法違反だぁっ!」
「官憲の横暴反対っ!」
翌朝、取材で迎賓館前に陣取るマスコミに対し警視庁は機動隊を投入。マスコミを道路交通法違反及び公務執行妨害で逮捕していった。
「お兄ちゃん、道路交通法違反ってどういう事?」
「道路は通る為の通路だからね。それ以外で使う場合警察署に届け出を出さないといけないんだ。この場合、マスコミは取材の為に陣取るという使い方をしていたから違反になるんだ」
違反にならない為には取材の為という理由で道路使用許可を取得する必要があるのだ。まあ、そんな理由で許可が降りるとは思わないが。
そんなこんなで多くのマスコミが排除され、両親や舞とアーシャは恙無く学校や仕事に向かう事が出来たのだった。
「それは良いとして、何をするべきか」
士官学校への出席を免除され、情報部のお仕事も入っていない。下手に外出すればマスコミに囲まれるので出る事も躊躇われる。
「ああ、やっぱりここは良いな」
「入り口は開いたままにしておきます」
困った時の迷い家さん。俺は同じく暇をしていたニックと一緒に迷い家に入った。ニックは釣りをすると言うので、俺はここの探索だ。
まずは海の先がどうなっているのかの確認だ。空歩で海の上をひたすら走っていく。体感で一時間程走った筈だが視界には青い海原が続くのみだった。
「ダメだ、これは下手すると帰れなくなる。戻った方が良さそうだ」
元の位置がわかる電波灯台でも設置しないと、海の上で迷子になりそうだ。来た方向に戻る事一時間、無事に戻る事が出来たのは僥倖だった。
「そんな事をしたのか。無茶がすぎるぞ」
「すいません、二度としませんよ」
ニックとお昼を食べながら海の探索を行った事を告げると怒られてしまった。我ながら浅薄な行動だと思っている。
午後は余計な事をせずにニックと並んで釣り糸を垂らす。精神を落ち着けるのに釣りは中々良いと思う。今回の事件は自分が思う以上に俺の心にダメージを与えているようだ。
「優、明日例の少女の診察に行く事になった」
「例の少女って、林原さん?」
夕食の席で父さんから急遽昏睡状態の少女の診断をして欲しいとの仕事が入った事を告げられた。彼女は目を覚ます気配がなく、その理由を父さんに突き止めて欲しいと依頼が入ったそうだ。
「それ、俺も行って大丈夫かな?」
「優も当事者だからな。多分大丈夫だと思うが聞いてみよう」
おれの身分と立場から断られるとは思わなかったが、予想通り俺の同行は許可が降りた。
「・・・父さん、いつもああなの?」
「いや、いつもは一台だけだぞ」
翌朝父さんを迎えに来たのは、五台の黒塗り高級車だった。そのうち四台は天井に赤ランプを乗せている。
「四台は優ちゃんの護衛よね」
「だよねぇ。そうなるよなぁ」
神使様が同行するとなれば護衛が強化されるのは当然だよね。完全に失念していたよ。関係者の皆さん、大変だっただろうなぁ。反省します!




