第六百九十七話
「お帰り、優。また派手にバラしたな」
「不本意じゃったが、被害を抑えるには他に手段が無かった故な」
玉藻の姿で帰った俺を両親と舞が出迎えてくれた。正体をバラした事は知っているようだ。
理想を言えば、関中佐と打ち合わせをして根回しとマスコミ対策を充分に行った上で公表したかった。しかし、状況がそれを許さなかったのだ。
「あの凄い炎の玉の被害をあれだけで抑えたのは玉藻ちゃんだったからよ。お母さんは誇らしいわ」
「今報道されている範囲では、重傷者二名と軽傷者が少しって言われてるわね」
母さんに抱きしめられた俺に舞が現状で判明している負傷者の情報を教えてくれた。重傷者は林原さんと緒方元少将だろう。
「軽傷者は逃げようとして転んだらしい。それは防ぎようがないからな。考えられる限り最も少ない負傷者だろう」
「丁度事件現場を捉えた防犯カメラの映像が公開されてるのよ。優ちゃんが玉藻ちゃんになる所もハッキリと映っていたわ」
映っている人間に許可なく公表したのか!と思ったが、ネットに繋がっているカメラの映像はダダ漏れになっているという情報を思い出した。
パスワードを初期の物から変えていないのが原因だろうと言われていて、判明しているだけでも屋内と屋外合わせて三千件近くあるそうだ。
それだけのカメラ映像が流出しているのならば、あの現場近くにあったカメラの映像が流れていても不思議ではない。
「お陰で父さんと母さんのスマホは着信が続いている。舞もそうみたいだし、優のスマホは凄い事になっていないか?」
「・・・通話やメールの着信が山のようになっておるな。これ、どうしろと言うのじゃろうな」
着信へのかけ直しやメールの返信を全てやったら、どれだけの時間がかかるだろうか。しかも、今も尚それは増え続けているのだ。
同じ人間が複数回通話しようとしたりメールしたりしているだろうから、表示されている件数だけ返す事にはならないだろう。それでも四桁に迫る件数を返す事になりそうだ。
「玉藻お姉ちゃん、来週のお出かけ出来るのかなぁ」
「警備を担当する埼玉県警に問い合わせる必要があるじゃろうな。先方には迷惑をかけるが、出来れば予定通り買い物に行きたいがのぅ」
こうなったら、俺もはっちゃけて鬱憤晴らしをやりたい。今日はもう夕方だし、明日は日曜日だから月曜日に問い合わせてみよう。警察は年中無休二十四時間営業だけど、日曜祝日は当番の人だけ出勤しているだろうからね。
「心配していたが、思ったより平穏なようで安心したよ」
「見ていたテレビがいきなり緊急報道に変わって驚きました。お怪我はありませんか?」
俺が戻った事を聞いたのか、ニックとアーシャも駆けつけてきた。アーシャは尻尾が焦げていないか確認している。
「怪我は無い筈じゃ。落とし亀の大盾を溶かされたのがちと痛かったがのぅ」
あの大盾は優の時の防御を担当する武具だった。また九階層に潜って亀を乱獲して来ようかな。




