第六百九十六話
「どけ!どかないと公務執行妨害で逮捕するぞっ!」
「我々には報道の自由がある!臣民の知る権利を阻害する気かっ!」
動けなくなった覆面に気付いた警官がマスコミを除外しようとするが、マスコミも抵抗し車から離れない。
「中佐、公務員に対する肖像権ってどうなってますかね?」
「将官なら兎も角、尉官では公人と言えるかどうか・・・滝本中尉は会見にも出てるから微妙な線ですな」
今更かもしれないが、その辺の線引きをしっかりしておかないとトラブルが増えそうな気がする。
「玉藻は軍人ではないから完全に私人ですよね?」
「神使様を私人と言えるのかどうか・・・しかし、公的な身分という訳では無いし法的に定められてもいませんな」
なにせ前例が無いみたいだからなぁ。俺の前にも日本に転生者は送り込まれた筈だが、記憶を持ち越せなかったのだろうか。
マスコミが発達していない時代で、肖像権が確立されていなかったのかもしれないな。その可能性は高そうだ。
「・・・総務省に処罰を求めるよう上申しておきます」
「それは良い手だ。うちの上にも頼んでおこう」
はい、総務省は警察庁と陸軍から文句を言われる事が確定しました。これでマスコミ連中が少しは大人しくなってくれれば良いのだけど。
逮捕・制圧されるマスコミが増え、俺達が乗った覆面パトカーは何とか現場を離脱する事に成功した。所轄のお巡りさん、ありがとう。
「あれ押し退けて入るの、時間かかりそうですね」
「いや、無理だろう。済まんが迎賓館に回ってくれ」
市ヶ谷の本営前にもマスコミが詰めかけ、野次馬も集まっていた為入る事を諦めた。なので迎賓館に戻る事にしたのだが。
「まあ、こうなってるよなぁ・・・」
「どうします?」
俺が滞在していると知られている迎賓館にマスコミや野次馬が居ない筈がない。こちらも蟻が這い出る隙間もない程にマスコミと野次馬が包囲していた。
「ここから行きやすいのは練馬か。練馬基地に行ってほしい。あそこならノーマークだろう」
「わかりました」
いくらマスコミといえども、数ある陸軍基地全てに取材陣を張り込ませる事は出来ない。追尾していた記者連中も基地内には入れない為、漸くマスコミから逃れる事が出来た。
「司令、いきなりお邪魔してしまい申し訳ない」
「中佐、同じ陸軍ではないか。しかし滝本中尉が玉藻様だったとは驚きましたぞ」
車内から電話で伝えてはいたものの、正式なルートを通さずいきなりの来訪となるので基地司令にお詫びと挨拶をする。
「隠していた事は申し訳ない。こうなる事は予測しておったでのぅ」
基地司令もマスコミやSNSで知ってはいると思うが、実際に見せた方が納得するだろうと思い玉藻に変身する。司令は目を見開いて驚いていた。
「このままではここにマスコミが殺到するじゃろう。来て早々で申し訳ないのじゃが、お暇させていただくとしようぞ」
「それでは車の準備を・・・」
「車では先程と変わらぬ。自力で戻る故大丈夫じゃ」
司令と関中佐と共に屋上に移動する。そこで司令は俺が空を走れる事に思い至ったようだった。
司令と関中佐に見送られ、空歩で空を走り迎賓館を目指す。関中佐の脱出を助ける為にマスコミに姿を見せつけたから中佐も大丈夫だろう。




