第六百八十二話
無事にマスコミの追跡を撒いた俺は玉藻になって水中村ダンジョンに潜っている。滝本中尉が行方不明になるが、秘匿性が高い情報部の任務に就いているのだから消息が途絶えたとて問題にならない。
「むっ、やはり威力が上がっておる」
現在最高到達階層である三十四階層、そこに闊歩する大亀相手に神炎を撃ち込んだ俺は前回倒した時より早くに大亀が倒れた事に気が付いた。
二十階層で避けて通れなかったブロンズゴーレムを焼いた時にも感じたのだが、亀を焼いて確証が持てた。体感で三割程神炎の火力が上がっていた。
強くなった事は嬉しいが、今日のお題は強さの確認ではない。三十五階層への渦を見つける為に空歩で上空に上がり視界を広くして探索する。
「くっ、アーシャのスキルの偉大さを実感するのぅ」
広大なフィールドで手掛かりもなく渦を探すのは大変だ。万が一見落としたら端から確認し直さなければならないというプレッシャーもある。
その上、地上から大亀による岩塊射出が襲ってくるのだ。現在位置を把握しながら岩塊の狙撃を避け、見落とす事なく渦を探していく。
そんな苦労もアーシャの千里眼があればしなくて済むのだ。ロシア帝国皇女殿下という身分が無ければ是非とも同行して欲しい逸材である。
「結局、今日一日走り回って見つからなんだ。アーシャの凄さを思い知らされたわ」
「玉藻お姉ちゃん、それならアーシャちゃんと舞も一緒に・・・」
「学校を休ませる訳にはいかんじゃろう。アーシャも残念そうな顔をするでない」
迷い家に戻って夕食の後、舞から電話してとメールが入っていたので電話するとアーシャと共に待っていた。内心同行を提案した舞に賛成したかったが、そういう訳にもいかない。
「玉藻お姉さん、電話してもらったのは別の話があったからです。今日黒田先輩からお聞きしたのですが、パーティーで黒田侯爵が英国大使と会ったそうです。そこで滝本家について聞かれたとの事です」
「お兄ちゃん、大使さんに勧誘されてたって聞いたから知らせた方が良いと思って」
これは関中佐に伝えておくべきだろう。舞とアーシャは直接関中佐に連絡出来ないから俺に伝えてくれたのだな。
「助かるぞえ。戻ったら何か礼をせねばな」
「「それはモフモフし放題でっ!」」
「う、うむ。それで良いのじゃな」
声を揃え、食い入るように報酬をねだる舞とアーシャ。二人とも重度なモフモフ中毒になっているな。
翌日も朝から渦を探し、見つけ出したのは夕方になってからであった。端から端まで探し終わりもう一度探すのかとゲンナリしていた所に居た大亀を八つ当たり気味に焼いたのだが、大亀が消えた影から渦が姿を現したのだ。
「亀の影にあるとか、ちいと意地悪ではないかえ?」
なんてダンジョンに文句を言っても仕方ない。見つかったので良しと思うとしよう。これで明日は三十五階層に突入する事が出来る。
前人未到の三十五階層。一体どんなモンスターが現れるのやら。




