第六十六話
「くっ、やはり固いな!」
「こんなのどうしろって言うんだよ!」
探索者のパーティーが戦闘を行っているが、どうやら旗色が悪そうだ。構成は片手半剣持ちが一人と片手剣にバックラー装備が一人。槍持ちが二人に短剣持ちが一人という五人パーティーだ。
近くに大きなリュックが置いてあるので、誰かが荷物持ちも兼任しているのだろう。全員二十代から三十代に見える男の集団だ。
果敢に攻撃をしているものの、剣の斬撃は表面を削るに留まり槍の突きは穂先が僅かに刺さる程度の効果しかない。短剣持ちは回り込んで切り付けているが、ダメージを与えられているとは思えない。
「くっ、この野郎!」
「おい、馬鹿、血迷ったか!」
片手半剣を振るっていた男が大きく振りかぶり、力任せに剣を叩き付けた。攻撃は腹部にヒットしたものの、渾身の一撃は表面に傷をつけるだけの結果となった。
「うっ、畜生!」
「関節を狙うならまだしも、そんな闇雲な攻撃が通る訳ないだろ!」
考え無しに放たれた一撃の代償は重かった。男の剣はポッキリと折れ、残った刃の長さは短刀程度となってしまった。
「やはり打撃武器無しでゴーレムは無理だって。撤退するぞ!」
「ちっ、役立たずめ!」
バックラー装備の男に窘められた片手半剣持ちは、残った柄をゴーレムに投げつける。そんな攻撃がゴーレムに効く筈もなく、柄は地面に落下した。
「おい、さっさと逃げるぞ。リュックを忘れるな!」
「ちょっ、待ってくれよ!」
ゴーレムは足が遅いので、逃げても氾濫を引き起こす恐れはほぼ無い。なので勝てなければ撤退という判断は悪くはなかった。
しかしそれは素早く撤退出来れば、の話である。短刀を使っていた斥候らしき男は慌ててリュックに駆け寄り背負う。しかし慌てている為か中々上手く背負えない。
「何やってんだ、グズグズするな。ゴーレムが来てるぞ!」
「待ってくれって、え、うわぁぁ!」
動作が速くないゴーレムだが、四メートルの身長を誇る為歩幅は広い。なので見た目よりも接近する速度は速いので油断をしていると強烈な一撃を食らう事となる。
短刀持ちの男を射程距離に捉えたゴーレムは右腕を振りかぶり、強烈な一撃を繰り出そうとしていた。剣士の方ならまだしも、斥候らしき男が食らったらただでは済まないだろう。
「見捨てるのも忍びない。仕方ないのぅ」
俺は空歩で作った足場を蹴ってゴーレム目掛けて跳んだ。そのまま空中で回転し、勢いをつけた蹴りをゴーレムの胴体に叩き込む。
「アキラー・・・えっ?」
絶体絶命となった短剣持ちの名(だと思う)を叫ぶ槍持ちの片割れが、間抜けな表情を晒す。仲間が殺られると思った瞬間、敵が吹っ飛んだのだから無理もない。
そしてゴーレムか居た位置に佇むのは、ダンジョンの十七階層というこの場所に居るはずのない巫女服を着た美少女なのだ。この状況を瞬時に理解出来たらその方がおかしい。
「危うい状況だった故、介入させてもろうた。横殴りをするつもりはないが、どうするかのぅ」
「あ、ああ、助かった。俺達じゃ倒す事など出来ない。倒せるならば倒してしまってもらえないか?」
「ふむ、了解じゃ。ならばあの獲物は貰う事にしようぞ」
我に返ったアキラ(仮)の了承を得たのであのゴーレムは貰う事にする。吹っ飛ばされたゴーレムは立ち上がり俺を見据え、俺を敵と認識したようだ。
狐火は効かないだろうし、鉄扇の斬撃も効果は薄いだろう。でも吹っ飛ばす事は出来たのだし、まあ負ける事は無いだろう。
作者「くっ、ストックがゴリゴリ減っていく!」
優「一話辺りの文字数は少ないんたからキリキリ書け!」