第六百五十話
「うむ、神炎の火力が上がっている気がするのぅ」
昨夜、母さんに言われて尻尾が増えていた事に気がついた。いつの間に増えたのやら。これで俺の尻尾は三本から四本に増量。モフモフ度が更にパワーアップした(当社比)。
地上に戻る道中モンスターを焼いているのだが、この辺のモンスターは元々一撃で魔石に変わる階層なので火力が上がったかの確信が持てない。
かと言って確認の為にまた潜るという訳にもいかないので、神炎さんの火力が向上したかどうかはまたの機会に確認する事になる。
そして、迷い家さんもパワーアップしている可能性があるが、誰かが迷い家に居るうちは変化しない。なのでこちらは地上に戻ってうちの家族とニック父娘を出さないと確認出来ないのだ。
浅い階層なので舞が居れば瞬殺出来ると言えば出来るのだが、父さんや母さんのステータスに水中ダンジョンの攻略情報が載ってしまう。
無いとは思うが、誰かに見られて不審感を抱かれる事になる可能性もあるのでそれは止めておく。少し早く確認したところで大した変わりはないのだから。
「お疲れ様でした玉藻様・・・って、玉藻様ですよね?」
「今回の探索で尻尾が増えたようでな。玉藻で合っておるよ」
入るときは三本だった尻尾が四本になっている為、水中ダンジョンを管理する情報部の先輩は別の狐かと思ったようだ。
狐の耳と尻尾を持つのは世界中で俺だけの筈だが、新たに神から派遣される可能性もゼロとは言い切れない。だから先輩も動揺したのだろう。
先輩が運転する車で市ヶ谷に向かう。関中佐に報告し、道中倒したモンスターの魔石やレアドロップを渡す必要があるのだ。
但し、お肉だけは渡さずストックする事を認めてもらっている。これは次回の探索の時に使うというのと、ロシア帝国皇帝陛下と皇女殿下への献上品となるという建前だ。
「玉藻様、四尾になられたという事は迷い家にも変化がおありで?」
「それは迷い家におる者全てが退出してみぬと分からぬ。まさかダンジョンで全員を出す訳にはいかぬ故、まだ試しておらぬのじゃ」
「どんな変化があるのか楽しみですね」
迷い家が変わっている事を前提で話しているが、これまでの前例からして変わっている可能性は高いだろう。
ギリギリUターンラッシュにかからなかったので順調に戻る事が出来た。地上に戻るのがもう一日遅かったら高速道路が渋滞して時間がかかっていただろう。
「お疲れの所をご足労いただきありがとうございます。戦利品はこちらにお願い致します」
情報部に入り、施錠された事を確認してから迷い家を開いて魔石やレアドロップを搬出する。渦への最短距離に居た避けられないモンスターだけを倒したので、そんなに量は多くない。
「これで搬出は終わりじゃな。ついでに頼みたい事があるのじゃが・・・」
「迷い家の検証ですね。喜んでやらせていただきますとも」
どんな変化が起きるか分からないが、情報部の先輩にも検証を手伝って貰えば早く済むだろう。先輩方も乗り気なようだし、早速試してみるとしよう。




