第六十五話
時折現れるサラマンダーを倒しつつ十六階層に向かう。受けるダメージ無く倒す事は出来るのだが、狐火が通用しない為倒すのに時間がかかる。
まあ、本来パーティーを組んで複数人数で進む階層をソロで進めているのだから贅沢な悩みなのだが。
十六階層に出てくるモンスターは群れ狼だ。ここに来て複数同時に襲ってくるモンスターが登場する。ここまでは単独の相手を複数でタコ殴りという戦法が使えたが、それが崩れるので難易度が跳ね上がる。
ここの十六階層は迷宮フィールドだった。草原や荒野だと四方から襲われる危険性があるが、ここなら最悪でも前後からの挟み撃ちなので難易度はやや下がる。
「グルルルル・・・」
早速前方より五匹の狼が現れた。スペック的には孤独狼より少々上程度なのだが、集団で連携して襲ってくるので孤独狼と同等と高を括っていると痛い目を見る事になる。
まずは先頭の狼に狐火を一発お見舞いする。跳んで避けた所にもう一発の狐火を打ち込むと躱しきれずに燃え上がった。
動かなくなった狼はそのまま魔石に変化したので狐火一発で致命傷になる事はわかった。しかし、そのまま撃っても躱されるので二発必要と思った方が良い。
残り四匹のうち二匹が襲いかかってきた。跳ぶのは危険と学習したのか、低い体勢で駆けてくる。それぞれ一発の狐火を狼の手前に放ち牽制する。
足を止めて被弾を回避した狼の影から残りの二匹が飛び掛って来た。群れ狼が厄介なのはこの連携だ。しかし俺には通用しない。
すかさず狐火を生み出し狼二匹の顔面に直撃させる。燃えながら突っ込んでくる狼を避けて残りの二匹を見ると、そちらも飛び込んできていた。
しゃがんで狼の牙を避けつつ鉄扇で柔らかい腹を切り裂く。一匹は着地後反転して俺と対峙するが、斬られた狼は魔石へと変わっていた。
五匹でも敵わなかった狼がタイマンに持ち込まれれば勝ち目はない。俺が放った狐火を跳んで躱し壁を使った三角跳びでフェイントをかけるという芸当を見せるも、呆気なく鉄扇により切り裂かれた。
いきなりこの階層で最大数の五匹を相手にする事となったがダメージなく狩る事が出来た。二つ以上の群れに挟み撃ちされなければ問題なく進めるだろう。
その後も時々襲い来る狼を倒しつつ進む。レアドロップの毛皮も一枚入手し順調に進む事が出来た。
無事に十七階層への渦に到着したが、結構な時間が経ったので迷い家に入る。畑でじゃが芋と玉ねぎ、人参を収穫して突撃豚の肉じゃがを作った。
どこぞから食べたそうな思念を受信したような気がしたのでお社に奉納する。糸こんにゃくが入っていないという愚痴が聞こえたような気もしたが、持ち込んでなかったので勘弁してもらう。
入浴して疲れを癒やし、自分の尻尾をモフってから就寝する。我が尻尾ながらこのモフモフは癖になるモフモフだ。
充分な睡眠をとり、突撃牛の牛丼で朝食をとった。次回は紅生姜も忘れずに持ち込もうと心に刻む。
外に誰も居ない事を確認して迷い家から出る。十七階層への渦に入ると草原フィールドに出現した。ここには他のパーティーが居るようで、離れた場所から戦闘音が微かに聞こえる。
俺は空歩で高空に駆け上がり音の方に向かった。普通の探索者がどんな戦いをしているのか、ちょっと見学させてもらおう。




