第六百四十八話
「まあ、米国がちょっかい出してくるのは海軍戦力を再建してからになるでしょうね。主戦場は太平洋になるでしょうから」
「となると、我ら陸軍の出番がない事になるが?」
「海軍が迎撃に成功すればそうなりますね。しかし、戦争は想定通りに進むものではありませんから」
陸軍がどんな判断をするかは俺の関与する所ではない。極端な事を言えば、俺の使命は帝国の安堵ではなくダンジョンの攻略なのだから。
「先の話は措いておくとして、玉藻様に水中ダンジョンの三十四階層まで潜ってもらう事は可能ですか?」
「ただ行って帰るだけならば短日数で済みますし、大丈夫だと思いますけど・・・クラゲと亀の確認ですね」
鈴置中将の目的は、クラゲと亀が通常モンスターなのかレアモンスターなのかの確認だろう。あの亀がレアモンスターならば先に進む道が見えるかもしれない。
「夏季休暇が終わる迄に行ってきましょう。物資は残っているので補給の必要もありません」
迷い家に保管されている保存食はあまり減っていない。肉と調味料以外を自給自足出来る迷い家の強みだ。
結局、亀対策になるかは別としてダンジョン産の武具を集めるのは続行となり、三人娘の去就は先送りとなった。会議はそれで終了となり、迎賓館に戻って家族に水中ダンジョンに潜る事を伝えたのだが。
「お盆で仕事も入っていない。今度は父さんも同行するかな」
「ここに籠もるより迷い家の方が楽しいですし・・・」
付いてくる気満々な父さんと母さん。そうなると舞だけ留守番とはいかず、家族全員で行く事になる。まあ、迷い家ならば海で遊べるからね。
「私達も行きたいのだが構わないかね?」
「宮内省を説得できますか?」
そうなると黙っていないのがニックとアーシャ。アーシャが居ると次の階層への渦を探す手間がないから助かるが、許可をとれるのかな?
「なに、太政官に迷い家以上に安全な場所があるなら教えてくれと問うたら一発だったよ」
「太政官さん、答えに困っただろうなぁ」
という訳で、定番のメンバーでダンジョン探索と相成った。お盆休みというのに詰めているマスコミ避けの為、皆にはここで迷い家に入ってもらう。情報部差し回しの車に乗って北上、マスコミを撒いて水中ダンジョンに入った。
時間短縮の為、すぐ玉藻になって爆走する。地図がある階層は空歩を利用してモンスターも無視して突き進んだ。
途中オーク肉やら牛肉の補充を行いつつ進み、アーシャの千里眼に頼りつつ潜る。そして出た結論は、クラゲと亀は通常モンスターだというものだった。
三十三階層ではクラゲが出現したし、三十四階層にはあの亀さんが出現した。二つのダンジョンで同じモンスターが出たので確定だ。
ちなみに、亀さんを神炎で焼いてみたのだが結構な時間がかかってしまった。甲羅の上から強引に焼いたとはいえ、ここまで梃子摺るとは思わなかった。
四肢や頭を狙ってみたが甲羅に引っ込んでしまうので、強引に焼いても必要な時間は然程変わらなかったのだ。
この先に進んだら、これと同等かこれ以上強いモンスターが出るのだろうか。となると、玉藻と優両者の力を使わないと進めなくなるかもしれないな。




