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第六百二十四話

「玉藻様、先日は丸々と太ったアオをありがとうございました。厨房から仕入れ先を教えてほしいと懇願されましたが、何とか誤魔化しました」


「好評だったようで何よりじゃ」


 アオとは背中に青みがかかった鰻を指す。天然物の上品である証拠であり、高級料亭に卸される為一般家庭で手に入れる事は不可能に近い。それ故厨房の料理人達は入手経路を聞きたがったのだろう。侍従長さん、誤魔化すの苦労しただろうな。


「迷い家の川に罠を沈めると面白いように捕れる。あれは楽しかった」


「あの鰻は皇帝陛下が捕られた鰻だったのか。余も一度やってみたいものだ」


 献上された鰻をニックが捕ったと知った今上陛下が侍従長さんと俺をチラ見する。俺は迷い家を開いて陛下を招くくらい構わない。侍従長さんは苦笑いしつつ首を縦に振った。


 衛士の二人に誰も入れないよう頼み迷い家に入る。入り口は消しておくので誰か入っても迷い家がバレる事は無いが、いる筈の天皇陛下や皇帝陛下が居ないとなれば大騒ぎを通り越して大パニックになってしまう。


「来る度に思うのだが、何故かこの風景を見ると安心する」


「ふむ、それは興味深い。流れる小川に田畑や果樹園が並ぶこの光景は帝国の原風景だ。我ら帝国人がそう感じるのは自然だと思うが、ロシア出身の皇帝陛下もそう感じるとは・・・これも神のお力なのか」


 日本の田舎の風景って、国籍問わず訴えかける何かがあると思う。前世でも外国からの観光客が何の変哲もない田舎に惹かれて移住するというケースがあった。


「里山があれば完璧だよね、玉藻お姉ちゃん」


「そこでフラグを立てられると、次の増強で山が加わりそうじゃな」


 楽しげに話す天皇陛下と皇帝陛下の背中を見ながら舞と雑談しつつ歩く。家屋に着くと二人の陛下は罠を持って川に行き、侍従長さんはザルと籠を持って着いて行った。


「陛下達は鰻漁に夢中じゃな。妾達はどうするかのぅ」


「「モフモフで!」」


 二人に即答され、俺は縁側に座り両脇の舞とアーシャに尻尾をモフらせる事に。一本余るので自分でもモフモフを堪能する事にする。


 三十分後、籠に十匹程のアオを入れた侍従長さんと楽しげに歓談する二人の陛下がやって来た。


「大漁じゃったようで何よりじゃ。侍従長殿、その鰻はそのまま持ち帰られよ」


「玉藻様、よろしいので?」


「どれだけ捕った所で一度閉じればまた捕れるのじゃ、遠慮はいらぬ」


 無限に生み出される作物や魚たち。それがどこから齎されるのかは考えるだけ無駄だ。なにせ神様にも分からないのだ、人間に分かる筈もない。


「資源保護の為漁獲量制限に躍起になっている官僚が聞いたら卒倒するな」


「ある意味、やっている仕事が無駄になりますからな」


 楽しげな天皇陛下に対して気が重そうな侍従長さん。この迷い家は資源保護という考え方に真っ向から喧嘩売ってるからなぁ。


「陛下、そろそろ戻りませんと」


「もっとニコライ殿と語りたい所だが仕方ないな。・・・譲位して上皇になるのもアリだな」


 陛下が不穏な事を呟いてるけど、まさか実行に移したりはしないよね?

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― 新着の感想 ―
現代社会でなら青鰻自体は養殖もあります。まあ、養殖でも入荷するかどうかわからないような代物ですが
ここから海に流せば無限の資源が…
一応日本語には、天皇や皇帝の一人称は朕、征夷大将軍や○○藩の藩主クラスは余、公家なら麿、武士なら拙者、某、我輩等々と歴史がある人たちは色々面倒は決まりごとがあるってことを覚えておいた方がいいかも
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