第六十ニ話
少々仮眠して夕食に突撃豚の生姜焼きをおかずにご飯を食べた。採りたてキャベツの千切りは何もつけずとも甘みがあって美味しかった。・・・畑の作物、増えてるような気がする。
ダンジョン内の昼夜は無いが、時計は夜の十時を示している。人間とは不思議なもので、夜がないダンジョンの中でも地上と同じタイムスケジュールで動いてしまう。
つまり、これからの時間はダンジョンから引き上げる探索者が多い上、泊りがけで深く潜る探索者も休息を取るので玉藻の姿で探索しても目撃されにくいのだ。
まずは十階層に降りて今回初経験となる十一階層を目指す。途中遭遇したオークは狐火で丸焼きになってもらう。
地図を頼りに十一階層へと進む。このダンジョンの十一階層は草原になっていた。こちらからモンスターを探すまでもなく突撃してくる影が見える。
「ブモォォ!」
突撃豚を超える速度を発揮し、突撃豚よりも大きな体躯を誇る上位互換と言えるモンスター突撃牛。もう少し捻ったネーミング出来なかったのか?とツッコミを入れたくなる。
下らない事を考えている間に目の前へと迫った突撃牛を横に躱す。攻撃を外したと察した突撃牛は足を踏ん張り急制動をかけて停止した。
そして即座に反転し再び迫ってくる。俺は狐火を一発出すと突撃牛めがけて飛ばした。突撃牛は気付いたようだが、躱せる程小回りは利かないようだ。
そのまま頭に狐火を食らった突撃牛は燃え上り、火の牛となって突っ込んできた。慌てて空歩を使い空中に逃げる。俺が居た場所を通り過ぎた突撃牛はヨロヨロと数歩歩いてから魔石へと変化した。
突撃牛は突撃豚と違い、突進を避けて壁に激突させても平然と向きを変えて再突撃してくる。なので突撃豚よりも生命力が高いだろうと思っていたが、狐火一発を当ててもそのまま突っ込んで来るとは思わなかった。
魔石を拾い、一瞬開けた迷い家に放り込む。十二階層への最短ルートから外れて次の獲物を探す。程なくして次の突撃牛が突撃してきた。
真横に跳んで躱し、すれ違いざまに扇で首を切断し跳んで返り血を避けた。多量の出血は堪えたようで、通り過ぎた突撃牛は次第に足が止まりそのままブロック肉に変化した。
「おおっ、早くもレアドロップの牛肉がっ!」
今日持ち込んだ調味料ではステーキにするしかないが、他の調味料や食材を持ち込んでダンジョン内ですき焼きなんて贅沢もできそうだ。
「もっと深く潜ろうかと思ってたけど、少し寄り道しても構わないよな」
少し本気で走って次の牛肉・・・もとい、突撃牛を探す。狐火一発では即死しなかったので二発同時に当ててみると、突撃牛は即座に魔石へと変化した。
目的が肉集めに変化した俺は空歩を使い空中から突撃牛を狩っていく。この階層で夜を過ごす変わり者は居ないので、安心して狩る事が出来た。
本格的に深く潜る連中はもっと下で野営するし、訓練の為浅い階層で野営するなら九階層を選ぶ。落とし亀は移動しないので、野営しやすいのだ。
「くっ、物欲センサーさん、生真面目に仕事しなくても・・・」
二匹目であっさりドロップしたお肉は、中々ドロップしてくれなかった。物欲センサーさん、たまにはお仕事をサボっても誰も文句言いませんよ?
ちょっ、玉藻さん、そこはサクサクと次の階層に潜って行く予定だったのに何で牛さん狩りやってるの?!




