第六百五話
「これはのぅ、流星錘という武器なのじゃよ」
次の宝箱に向かう道中、珠の使い方について話す。先程の騒動で付近のレイスは粗方倒したようで、全く襲われずただ歩くだけとなっているから出来る事だった。
「片方の珠を握り、もう片方を飛ばす。相手に巻き付けて拘束する。紐で相手の首を絞めるという使い方じゃな」
体に巻いて珠を飾りのように偽装し無手と装えるのが強みだ。癖がある武器なので実用レベルで使いこなすのは骨だが、暗殺や護身には使える武器となっている。
「しかもこれは、使い手の意思で紐が伸縮するようじゃ。遠距離武器として使えそうじゃの」
両端の珠は色合いと重さから緋緋色金と思われる。剣や槍と同じように魔力が乗るようなので、モンスターにもダメージを与えられそうだ。
「それを使うとしたら私か久川になると思います。ですが、私の戦闘スタイルにも久川の戦闘スタイルにも合いそうにありません」
「そうじゃな。しかも、勢いをつけたとしても一撃の威力が足りぬ。浅い階層か対人戦にしか使えぬよ」
致死性の少ない打撃武器で、拘束も可能。これは対DQN用に使うのが効果的な武器だな。
「次は長剣か大槌が出て欲しいですね」
「久川兵長、フラグを立てるでない」
アーシャに案内されて発見した宝箱。中身は久川兵長のフラグを回収したからか、またもや使えない武器だった。
「魔鉄製の鉤爪・・・これは需要あるのかな?」
「溶かして別の武器に打ち直した方が需要ありそうじゃな」
間合いが短く扱いにくい鉤爪なんて、使ってる探索者は居るのだろうか。それを使うなら短剣を使う方が良いだろう。
そして七階層最後の宝箱。ここもハズレと言えばハズレだった。強力な上希少品ではあるのだが、これを使える人がどれだけ居るのやら。
「凄く綺麗!」
「ちょっと着てみたいかも・・・うわっ、凄く重い!」
アーシャが見惚れる程美しい全身鎧だった。材質は恐らく緋緋色金で、炎がモチーフと思われる装飾に緋色が映えている。
思わず取り出そうとした舞が持とうとして全く持ち上がらなかった。硬いが重い緋緋色金の塊なのだ。そう簡単に持ち上がる筈がない。
「防御力は途轍もなく高そうですが、これを着て動ける人っていますかね?」
「重鎧のスキル持ちならば・・・そう言えば、同級生に一人重鎧持ちがおったのぅ」
引っ越してから会っていないが、元気にやっているだろうか。探索者なので万が一という事はあり得るが、無事に活動していると思いたい。
「玉藻様、これどうします?持ち上がりませんよ」
「持ち上げぬともやりようはあるじゃろう。舞、頼みがあるのじゃが・・・」
俺は舞に一仕事頼むと、先に迷い家に入ってもらう。そして迷い家への入り口を閉じた。
「玉藻様、何をなさるおつもりで?」
「迷い家の入り口は、妾が望んだ場所に出せるのじゃよ。そして、入り口は垂直ではなく水平に出す事も出来るのじゃ。このようにな」
迷い家の入り口を宝箱と全身鎧の間に出して全身鎧の通過を許可する。すると鎧は迷い家の入り口に落ちていった。
「鎧は舞がスキルで受け止めてくれる。これで回収終了じゃ」
三箇所回ったので時間を食ってしまった。八階層に行くのは明日の朝からになりそうだ。




