第六話
「みんな乗ったな、車を出すぞ」
「夜中に家族でお出掛けなんて、何だかワクワクするわね」
今日は四月の二十八日。明日は俺の十四歳の誕生日だ。午前零時にスキルを授かる為、俺は指定された役所に家族と向かっている。
スキルの登録は一生に一度のイベントとなる為、家族総出で出掛けるのが慣習となっている。尚、入院等で出頭出来ない場合は該当者を保護している施設がその旨を役所に知らせる義務を負う。
「お兄ちゃんなら、とんでもないスキルを授かりそうな気がするわ」
「いや、こればかりはどうなるか分からないからな」
スキルを授かる俺よりも、舞の方が浮かれている。可愛い妹に好かれているのは嬉しいが、少々病み気味な所が気になってしまう。
夜の空いた道を車は順調に走り、指定された役所に到着した。スキル登録を行う役所には陸軍施設が併設されていて、もし戦闘系スキルを授かった者が暴れても早期に鎮圧出来るようになっている。
駐車場に車を停めて施設に入る。中は小ぢんまりとした役場という感じで、三つある窓口のうち唯一開いている窓口で届いた通達を見せる。
「すいません、今晩スキルを授かるので登録を・・・」
「ああ、はい。滝本優君ですね、お待ちしていました。ご家族の方もこちらにどうぞ」
窓口に居たお姉さんは窓口を閉めると脇の通路から出てきて俺達を誘導する。多分今晩の登録は俺だけなのだろう。
「まだ時間がありますので、こちらで待機をお願いします。日付が変わる十分前にまた迎えに来ますので」
俺達家族は小さい会議室のような場所に通された。飲料や菓子の自販機が置いてあるので、待機の為の部屋なのかもしれない。
「お菓子の自販機はあるけど、緊張して食べられないよ」
「だから、何故スキルを授かる俺よりも舞の方が緊張するんだ?」
「逆に優は何故そんなに落ち着いているの?」
「慌てた所で結果は変わらないし、進路ももう決まっているから」
緊張もせずに落ち着いている俺にお母さんが聞いてきたが、俺はどんなスキルを授かろうともダンジョンに潜る事は確定しているのだ。変な例えだが消化試合のように感じている。
「時間です、優君のみこちらへ。ご家族の方はここでお待ち下さい」
先程のお姉さんに案内されて、六畳程の部屋に通された。この部屋は鉄板と強化コンクリートで固めてあり、戦闘系スキルを暴発させても被害を外に出さないらしい。
「もうすぐ日付が変わるわ。・・・優君、ステータスオープンと唱えて頂戴」
「分かりました。ステータスオープン!」
スキルを授かると「ステータス」と唱えれば簡易なステータスを閲覧出来る。「ステータスオープン」と唱えると他者にも閲覧出来るので、この画面でステータスを登録する。
さて、俺はどんなスキルを授かったのやら。