第五百九十三話
「むうぅ、ダメだった・・・」
大盾の取り回しを鍛錬する俺の横でクマさんを抱きしめてむくれる舞。舞は母さんにクマさんを渡して起きぬけと出勤前を比べてもらったが、舞達と同じく大きさが変化したそうだ。
「これだと思ったのになぁ」
「これまで何人もが解明出来なかったんだ。そう簡単に解明出来ないだろう」
だからこそ安値で転売されていたのだ。武器防具を扱うプロである武具屋の店員やギルド職員が出来なかった事を一般人の中学生が出来る方がおかしい。
「クマさんはアーシャに持ってもらって、気長に条件を探すのがベターかな」
「えっ、お姉ちゃんが使うと思ってたけど違うの?」
俺も大盾から更新しようと考えていたが、アーシャが使う方に考えは傾いている。この盾にはクマさんの障壁では出来ない事も出来るしね。
「まず、クマさんの持ち運びが楽というメリットは着せ替え人形で相殺出来る。それと、クマさんではこれが出来ないからね」
俺は構えた大盾を前方に突き出す動きを見せる。俗にシールドバッシュと言われる技だ。
「これは攻撃を受けた後相手を押して崩す技なんだ。実体が無い障壁だとこれが出来ない」
代わりに盾が受けた衝撃が使い手に伝播しないという長所もあるが、どちらが良いかは使用者の好みにもよるだろう。
「そっか、盾って攻める事も出来るんだね。ねえ、お姉ちゃん。クマさんでその動きを出来ないかな?」
「障壁でシールドバッシュを?試した事は無いな、やってみようか」
実体が無い障壁で相手を押すという発想が無かったな。俺は大盾を置いてクマさんを舞から受け取った。
「うわぁ、凄く似合ってる。黒い衣装に白いクマさんが映えて、赤いリボンがアクセントに・・・」
熱い目で褒めながらスマホを構え連写する舞。そのスマホ、さっきまで持ってなかったよね。どこから取り出したのかな?
「取り敢えず障壁を・・・何だこの大きさ!」
撮影されている事をスルーして障壁を出すと、一メートル四方くらいの障壁が現れた。間違いなく過去最高の大きさだ。
「わっ、凄く大きい!」
「こんな大きさ初めて見た。何故こんなに大きくなったんだ?」
舞に渡して試して貰ったが、出せた障壁は四十センチ四方と普段通りだった。
「明日も同じ時間に試してみよう」
「クマさんの謎が解けるかもしれないね!」
気分屋なクマさんの法則がわかるかもしれないと期待した翌日、同じ時間に女性体を発動して試したが出来た障壁は五十センチ四方と昨日より小さい物だった。
「時間は同じ、でも障壁は小さい。さっぱり分からない」
「・・・お姉ちゃん、試しに黒ゴスで出してみて」
少し考え込んだ舞の提案を受け、着せ替え人形を発動し黒ゴスに大盾装備に変更する。大盾を置いてクマさんを使うと、昨日のように大きな障壁を出す事が出来たのだった。
「やっぱり!多分お洋服で大きさが変わるのよ!」
「洋服で変わるって、そんな事・・・」
その後舞と母さんに着替えながら試して貰った結果、舞の推測が正しい事が証明されたのだった。




