第五十九話
「お姉ちゃん、これも可愛いよ!あっ、あれ面白そう!」
「舞、そんなに走ったら転んじゃうよ」
旅館のお土産コーナーを小走りで動き回りお土産を物色する舞。お姉ちゃんの言葉で察してもらえていると思うが、今の俺は女体化している。
外出したい、冴子ちゃんに会いたいという舞を旅館内に留める代償として了承させられた。
「キーホルダーに木刀、タペストリー・・・世界が違っても発想はそうそう変わらないのねぇ」
並んでいるお土産は前世でお馴染みのラインナップと変わらない。これが効率を求めた場合同じような進化を辿るという収束進化というものだろうか。
「お客様、少々よろしいでしょうか?」
「えっ、私ですか?」
舞とお土産を物色していると、仲居さんに呼び止められた。笑顔を貼り付けてはいるものの、俺を警戒しているのがわかる。
「当旅館の浴衣をお召しですが、お客様に心当たりが御座居ません。お話をお聞かせいただきたいのですが」
「ああ、そうなりますよね。わかりました」
旅館側にしてみれば、宿泊していない不審人物が旅館の浴衣を着て宿泊客の少女と共に居るのだ。お客さんの安全確保の為には問い質す必要がある。
仲居さんに連れられて関係者以外立入禁止な区域に入る。事務室のような場所で椅子を勧められ、舞と少し離れた場所に座らされた。
舞は不満そうだが、今の俺はいつの間にか旅館に入り込んだ不審人物である。守るべき宿泊客と離すのは正しい行為だ。
「私は宿泊している滝本の長男です。ちゃんと宿泊名簿にも記載されている筈なので。この姿はスキルの効果です」
「滝本先生のご長男は1日中愛でたい程の男の娘ですが、紛れもない男性だった筈・・・えっ、スキルですか?」
不穏な発言をする仲居さんを小一時間お説教したい所だが、話が拗れて時間を使うのは勿体無いのでスルーする事にした。
「ええ、神様より女性体というスキルを賜ったのです。解除するとこの通り・・・」
俺は女体化を解除してTシャツにGパンというラフな格好の男性体に戻る。仲居さんは驚いてフリーズしているが当然の反応だろう。
「えっ、自由に女性にも男性にもなれるって、両方堪能でき・・・ゲフンゲフン、失礼しました。そんなスキル、存在したのですね。でも、衣服まで変わるのですか?」
「それは着せ替え人形という別のスキルによる効果です。他に例がないようなので、ご存知ないと思います」
ダメ押しにステータスカードを出して見せる。仲居さんは完全に納得してくれたようだ。
「お客様にまたお手数をお掛けするかもしれないので、従業員で情報を共有したいのですが宜しいでしょうか?」
「ええ、旅館内での共有ならば問題ありません」
知られて困るスキルではないが、進んで広めたいと思う代物でもない。この旅館内なら問題ないだろう。
「美少年も美少女も堪能出来る神スキル、羨ましいわ」
「どっちのお姉ちゃんも綺麗でしょう!」
「お客様、私の義妹になりませんか?」
何やら意気投合している仲居さんと舞。どっちのお姉ちゃんとはどういう意味なのかな?そして仲居さん、しれっと俺を狙わないで!
多少のトラブルは発生したものの、お土産も買って明日帰るだけとなった。ここからフラグが立ってイベント発生、とか・・・無いよね?




