第五百八十七話
「今は情報管制を敷いているが、早晩どこからかマスコミに漏れるだろう。中尉への取材攻勢は収まりそうにないな」
「取材対象が増えてマスコミも分散されてくれたら嬉しいのですが・・・」
養子先と通っていた学校は九州なので取材は九州のマスコミがやるだろうけど、元の家とベルウッド学園は東京だ。そちらにここから人手を割いてくれれば助かる。
「今後どのような情報が入るかでどう転ぶか分からない。マスコミ対策は臨機応変にするとしよう。まあ、今日と明日は缶詰だな。ゆっくり休んでくれ」
通話を切り妖狐に変わる。迷い家に戻ると皆はリビングで待っていた。
「ただいま。例の事件の捜査に関する報告だったよ」
「それはまだ聞かない方が良いのだろうな。だが、折り返しの件は説明してくれるのか?」
「そっちは大丈夫。滝本優のスマホに玉藻が出る訳にはいかなかったんだよ。無いとは思うけど盗聴されている危険もあるからね」
俺の個人的なスマホも盗聴防止機能を強化した物に変えてある。だけど、絶対に盗聴されないという保証は無いのだ。
「確かに、優ちゃんのスマホに玉藻ちゃんが出たのを誰かに聞かれたら疑問に思われるわね」
「優、盗聴を警戒するなら事件の情報を話すのはマズイだろう?」
「中佐は早くにマスコミに漏れるだろうと言っていたから大丈夫。あまり褒められた話じゃないけどね」
こういうのは捜査関係者からマスコミに情報が漏れるものだ。情報の漏洩を完全に防ぐ手だてなんてありはしない。
「そうだな。父さんとニックは午後は釣りをする。皆はどうする?」
「舞はアーシャちゃんとクマさんの検証をやる!」
「お母さんは夕食の仕込みをやるわ」
それぞれにやる事は決めてあるようだ。俺は午前中にやっていたおやつの補充も終わったし、特にやるべき事は無い。
「俺はネットの確認をしているよ。何処でどんな情報が飛び出すか分からないからね」
ネット上にはテレビで報道されないような内容が出てくる。その全てが真実ではないにしろ、チェックしておいた方が良いだろう。
父さんとニックは岩場に、舞とアーシャが縁側に移動し、母さんもキッチンに移動した。俺は一人でリビングに残り、スマホでネットを見ていった。
幸い身元の情報は漏れておらず、飛び交う情報は憶測や推測を元にした物が多かった。宇宙や異世界からの侵略説なんて物まであったが、流石に相手にされていなかった。
念の為寝る前までネットやマスコミの報道を追っていたが、情報は漏れていなかった。
因みに、うちとロマノフ親子が迷い家に入っていたので迎賓館で用意した昼食と夕食が浮いてしまった。なのでうちとニック親子付きの者達で食べたというトラブルが発生した。
迷い家を厨房の人達に言えない以上、食事をいらないと言う事も出来ない。いらないなら何処で食べるのかという話になってしまうから。
執事さん達は賓客用のお食事を頂けるので問題ありませんと言うけれど、何とかしないとね。