第五百八十六話
美味しい海鮮丼を堪能し、食休みをとっていると俺名義のスマホに関中佐からの着信が入った。俺はスマホを父さんに渡して代わりに出てもらう。
「父さん、俺は席を外しているから折り返すと言ってくれないか」
「わかった」
理由も言わずに頼んだのだが、父さんは二つ返事で引き受けてくれた。後でちゃんと理由を説明するから許してほしい。
「お世話になっています関中佐、優の父です。優はちょっと席を外していまして、すぐに折り返しさせます」
「むっ、そうなのか。では急ぎお願いします」
関中佐も察してくれたようで、すぐに通話を切った。急いでいた様子なので、父さんからスマホを受け取り迷い家から出る。
迷い家の入り口を閉じて妖狐化と女性体を解き関中佐に電話した。待っていたようで、ワンコールで通話は繋がった。
「滝本中尉です。先程は失礼しました」
「通話に出れない状態だったなら仕方ない事だ。それよりも、例の件で進展があった。亡くなった少年の身元が判明したよ」
事件が発生したのが昨日の昼過ぎで、警察が捜査に着手したのは早くて夕方くらいだっただろう。なのに一日足らずで身元を調べるとは、警察はどんな捜査をしたのだろう。
「半年前に彼の家から捜索願いが出ていたそうだ」
「あっ、それでこんなに早く身元が判明したのですね」
蓋を開ければ簡単な話だった。年頃でフィルター掛けて、捜索願いが出ている少年を検索しただけだった。
顔写真を照合する作業も、現代ではコンピューターにやらせればあっという間に終わってしまう。便利な世の中になったものだ。
「・・・それだと時間かかってません?」
「捜索願いが出ていたのは九州だったからだ。よもや都内どころか関東から遠く離れた九州の人間だとは思いもしなかったのだろう」
そう言われれば納得してしまう。検索するならまず都内、ヒットしなければ関東圏と近場から探すのが常道だろうからね。
「福岡の小松という地元の名家の長男だそうだ」
「福岡の小松・・・覚えがありませんね」
俺は前世でも今世でも九州に行った事は無い。彼は俺の名を呼んでいたが、テレビか何かで俺の顔を覚えていたのだろう。
「しかし彼は東京から養子に入っていた事が判明してな。こちらに居た時はベルウッド学園に在籍していたそうだ」
「ベルウッド学園に・・・そう言えば、養子に入って転校して行った男子生徒が居たような!」
うっすら覚えている。登校したら埋まっていた筈の席が一つ空いていて、転校したと聞いたんだ。
「そう、彼だ。中尉とはクラスメートだったのだ。何か彼について覚えている事は無いかな?」
「仲が良かった訳ではなく、養子に行ったのを知ったのも転校して居なくなった後でしたからね。残念ながら何も知りません」
「そうか・・・となると元の家族やベルウッド学園、養子先や転校先の学校を調べる事になりそうだな」
予想外な所で俺との接点が見つかったが、これは偶然なのだろうか。今後の調査に期待するしか無いだろうな。




