第五百六十四話
「貴国では砲熕兵器を陸上で運用されていると?」
「ええ、その通りです。どのような経緯で開発され、どのように運用されているのか。そのノウハウを提供する用意があります」
陸上用の砲熕兵器。自走砲か戦車のような物だろうけど、それが使われるようになった経緯は興味がある。
元々戦車は機関銃を設置した塹壕を抜く為に開発された兵器だ。日露戦争が発生せず塹壕戦が無かったこの世界で、何故戦車が開発されたのか。
無言で相手の腹の中を探ろうとする日本側と英国側。どれだけの情報を引き出せるのか、どちらが先に情報を出すのか。根負けしたのは日本側だった。
「仕方ありませんな。デンシカの角を持ち帰ったパーティーには協力者が同行していました。その協力者のスキルにより大量の角を持ち帰る事が出来たのです」
「矢張りそうでしたか。我々も第三者の同行は予想していました。して、そのスキルとは?」
「協力者は軍人ではありません。なので個人情報保護の観点から詳しい情報は本人の許可無しにお話する事は出来ません」
ここまで話すのは事前に決めてあった。鈴置中将は日本が妥協したように見せ掛けて、予定の範囲で情報を与えただけだったのだ。
「では、その協力者に許可を取ってもらいたい。何なら我々が直接聞きに行きましょう」
「協力者を明かすにしても本人の意志を確認する必要があります。ここでの即答は出来かねますな」
スキルをバラす同意を取り付けるか、協力者の名を明かせと迫る英国に個人情報保護を盾に躱していく鈴置中将。
「では、我々と神の使徒と自称する少女を引き合わせていただきたい」
「申し訳ない、神の使徒といえどもまだ未成年の少女なのです。ナンパはご遠慮頂きたい」
「ナンパちゃうわっ!」
英国武官の申し出に対する太政官さんの返答で場の緊張感が一気に消し飛んだのだが。ここはなんば花月だったかな?
「武官としての任務中にナンパとは・・・我が上司ながら情けない」
「お前も同調するなっ!」
上司さん、必死に否定してるけど前回やらかした前科があるからね。そう取られるのも必然と言える。
「コホン、その協力者が自称神の使徒だろうと我々は予想している。恐らく外れていないだろう。こちらは現役で稼働している兵器のデータを渡すのです。それくらいはしてもらっても良いと思いますが?」
「そのデータとやらを受け取っていない以上、判断がつきかねますな」
英国の言い分は、まだ払っていない代金に商品の価値が足りていないと文句を言っているようなものだ。ならば先に商品を払えと言うのが日本側の主張だ。
「そうですな、こちらも譲歩しなければ話が進まないでしょう。おい、あれを」
上司の指示で曽我部少佐が鞄からファイルを取り出し机に置いた。鈴置中将がそれを回収する。太政官さんと侍従長さんも顔を寄せてファイルの中身を確認しだした。
画面ではその内容までは確認出来ない。英国はどれだけの情報を出してきたのだろうか。




