第五百五十七話
あれから一週間。秩父の事件は所轄や県警、県庁や警察庁に多大な影響を与えて終息した。三人組に与していた警察官はあの二人だけではなく複数居た事が判明した。
それにより当人達は当然懲戒免職の上逮捕、余罪を追及し全ての罪状にて裁判を行う予定だそうだ。彼等の上司は降格処分が決定しているらしい。
所轄の署長は引責辞任、県警の本部長は本部長の役職を辞任するとの事。そして事件の余波は県庁にも及んだ。
県警本部長がスキャンダルを起こした訳では無いが、失態を演じたのは事実。となると、彼を就任させた国家公安委員会や彼の就任を了承した県の公安委員会にも非難の目が向けられる。
「こんな犯罪を野放しにしてきた所轄や県警の上層部は辞任させるべきです!」
「市民を守るべき警察官が犯罪者に加担し、市民の声を封殺してきた。市民の絶望感たるや想像を絶するものだったでしょう」
マスコミはここぞとばかりに警察組織を攻撃した。非は一方的に警察にあるので、マスコミは言いたい放題いっている。
その際、事件の記録と称して俺や舞、アーシャが写った動画や静止画が必ずと言って良い程番組内で流される。
俺は舞と並んで座り大画面テレビでそれを見ていた。この騒動、いつまで続くのやら。
「舞は学校で囲まれたりしなかったか?」
「黒田さんが代表して聞きに来たわ。黒田さんの派閥は近くで聞いていて、それ以外の人は聞き耳立てていたみたい」
どうやら黒田侯爵令嬢は、お姉さんが父さんに助けられた縁で舞やアーシャと近い関係と認定されているようだ。
「あっ、それと黒田さんからお兄ちゃんに伝言があるの。出回ったデンシカの角が多過ぎる件で、陸軍に探りを入れる動きが複数あるから気を付けてって。情報部は掴んでいるだろうけど念の為って言ってた」
「財界か貴族家の動きかな。黒田さんは律儀だね、今度舞からお礼を言っておいてくれ。知っているかもしれないが、関中佐にメールしておく」
陸軍や宮内省も小出しにしてくれれば探られなかったのに、と思ってしまうがどこかに卸せば他から突き上げられて出さずにいられなかったのだろう。それに、出す量を半分にしても充分に異常な量なので詮索されるのは防げなかった可能性は高い。
「そうそう、試験にむけて放課後に黒田さん達と舞とアーシャちゃんで勉強会をやるから帰りが少し遅くなるの」
「そっか、もうすぐ中間試験か。士官学校の中間試験は六月だから少し遅いんだよな」
普通の学校は公立でも私立でも五月半ばから終わりに中間試験をやるのだが、何故か士官学校の中間試験は六月なのだ。
「士官学校の授業、軍の知識もあるのでしょう?お兄ちゃん、大丈夫?」
「今の所は大丈夫かな。軍務で休んだ時のノートを見せてくれる人も居るし」
辻谷君の真意は未だ不明だが、助かっているので良しとしよう。生徒は陸軍が調査をしていると思うし、おかしな輩は入学していないだろう。




