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第五百五十四話

「視界だけじゃない、本当に飛んでる!」


「あっ、アーシャちゃんはスキルで視界だけ飛ばしたから・・・」


 マフィンを食べた後、舞はアーシャに手伝ってもらい新たな訓練を行った。それは自身が飛びながら他人も飛ばすという応用技だ。自身が飛んだ挙動と俺を飛ばした挙動を同時にやれぱ可能だが、言うは易く行うは難いという奴だ。


「スキルの同時行使って、高等技術な筈なんだけどな。我が妹ながら規格外過ぎる」


「そこはお姉ちゃんに似ました!」


 舞さんや、俺の場合は神様の意図による三人分の魂の器という反則技ありきだからね。それが無い天然な舞の方が凄いから。


「玉藻お姉ちゃん、次は空歩を使わないでね。舞が飛ばすから」


「舞も含めて三人同時に飛ばすって、今日は止めておいた方が良い」


 スキルの行使には空中の魔力が利用されているらしい。だから魔力切れで墜落、なんて事にはならないが神経を使うので精神的に疲弊する。


 繊細な運用をしたり複数の対象に行使すれば疲弊の度合いも大きくなる。今日はこれで止めさせるべきだ。


「舞、何を焦っている?舞のスキルは充分実用に耐えるレベルになっているぞ」


「だって、昨日みたいな事があった時にお姉ちゃんとアーシャちゃんも連れて飛べれば逃げられたから」


 昨日は事前に熊谷の部隊にバックアップを頼んでいたから迅速に対応してもらえ現場から離脱できた。しかし、今後常に軍の部隊が付いてくれるとは限らない。舞はそれを危惧しているのか。


「舞、いざとなったら二人を迷い家に入れて逃げれば良い。それに、俺は護衛役だから舞はアーシャを連れて逃げる事を優先すれば良いんだよ」


「私は嫌です!玉藻お姉さんも舞ちゃんも、二人とも無事でないと嫌なんです!」


 俺と舞のやり取りを聞いていたアーシャが叫んだ。どうやら言葉が足りなくて誤解させてしまったようだ。


「ちょっと言葉が足りなかったか。何も俺が犠牲になるという訳じゃない。アーシャが側に居たら守りを優先する必要があるが、舞がアーシャの安全を確保してくれたら俺は攻めに転じて相手を制圧できる」


「私は玉藻お姉さんを護衛だなんて思っていません」


 頬を膨らませ怒ってますアピールをするアーシャ。そんな怒り方されても可愛いだけだから効果は無いぞ。


「実際、アーシャやニックと居るのは当たり前になってるから何処までが任務で何処からがプライベートかの線引きは難しいな」


「舞もアーシャちゃんの補佐役としてお給料が出るんだって。関中佐さんが太政官さんと調整したって」


 多分、アーシャの護衛として充分なスキル持ちになったからだろうな。関中佐は舞も陸軍に引き込むつもりだろうか。


「舞、それ誰に聞いたんだ?」


「お母さんだよ。舞も扶養家族から外れるだろうって言ってた」


 舞は側近候補という扱いだったが、候補が抜けたと見るべきか。これは関中佐や太政官さんと話し合う必要がありそうだな。

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― 新着の感想 ―
多少便利な能力持ったからって護衛は絶対無理。 専門的な訓練を受けたプロじゃないと要人護衛なんか任せられないって。 文字通り命がけだし失敗したときの責任や心の傷考えたら中学生女子にやらせるとか正気の沙汰…
舞ちゃんの意向に沿っているとはいえ、女子中学生に要人の護衛とかさせるのは大人として許される範囲なのか、膝詰めして話し合う必要がありますね
良かった、毎月うまい棒3本で働かさられる舞ちゃんはいなかったんだな
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