第五百十九話
「続いてアーシャですが・・・」
舞についての説明は終わったので、アーシャのスキルに対しての報告を行った。ダンジョン内では索敵やマッピングに絶大な効力を発揮する事、ダンジョン外では銃器や爆発物といった危険物を発見する事が出来ると思われる。
「中尉が危惧していた暗殺やテロに対する対抗スキルになっているな。マッピングも対応する必要があったが解決すると言えば解決するが・・・」
「アーシャもダンジョンに、とはいかないでしょう」
舞と同じく義務教育中の未成年である上に、代替の効かないやんごとないお方でもある。提案した段階で正気か疑われても文句は言えない。
「迷い家を使うので安全は保証出来ますけど、それを公表する訳にいかないのが歯痒いです。それを公表しても反対されるでしょうけど」
「皇帝陛下と皇女殿下は乗り気になるだろうけどなぁ。宮内省は半年から一年後を目途に公務を頼むつもりらしいが・・・」
中佐もニックとアーシャが日本に恩返しをしたいと思っている事を知っているようだ。そして宮内省がその場を設える方向で動いてるという。
「これが漫画やアニメならば都合が良い事件でも起きて問題解決といくのだがなぁ」
「中佐、ここは漫画の世界でもアニメの世界でもありませんよ」
そういった創作の世界ならば主人公サイドに都合良く事が運ぶ事が多いのだが、現実ではそうはいかない。
「取り敢えず、舞ちゃんとアナスタシア殿下を探索者登録しておいてダンジョンに潜れる下地だけは作っておくか」
「軍属としてではなく、一般の探索者としてならば誰にも止める権利はありませんね」
俺が軍属になる前にダンジョンに潜っていたように、個人で探索者となりダンジョンに潜る事を止める権限など誰にも無い。
「でも、登録出来ますか?舞は良いとして、皇女殿下がギルドのカウンターで探索者登録なんてしようとしたら大騒ぎになりますよ?」
「それなら上野のギルドで登録すれば良い、白鳥にやらせよう。そうだな、今週の土曜日にしよう」
また懐かしい名前が出てきた。白鳥さんは上野ギルドのギルド長さんだ。電話対応から逃げ出した関中佐が彼の所に逃げ込んだのが中佐との縁の始まりだった。
全然顔を出していないが元気だろうか。結局、大盾も一度もメンテに出していない。着せ替え人形の効力で自然に修復されるから必要ないからね。
「一応白鳥の都合も聞いておく。別の日になる可能性もあるから確定するまで言わないでおいてくれ」
「分かりました。二人に予定があったらマズイので、それとなく確認しておきます」
こうして舞とアーシャが探索者登録する事が決定した。アーシャを庇護下に置いている宮内省に話しておくべきとは思うが、反対される事が分かりきっているので勝手にやってしまう事に。
あ、舞とアーシャには探索者登録したいかどうかの確認はするつもりだ。本人の意思を無視して登録なんて出来ないのだから。まあ、二人とも喜んで登録すると思うけどね。




