第五百九話
ダンジョン入口から見えない場所まで来たので、中佐と共に迷い家に入る。後は日付けが変わるのを待って皆で迷い家から出るだけだ。
「お待たせ致しました。ダンジョンの一階層に着きました。入口からは見えない場所に移動してあります」
「うむ。関中佐、手数を掛けるな」
リビングで待機していた皆に中佐が報告し、ニックがそれに応えた。日付けが変わるまでまだ少し間があるので俺と中佐も着席する。
「我々は皇女殿下が授かったスキルを秘匿致します。それを知るのはここに居る者のみとする事を改めて誓います」
「軍の上層部や政府、皇室にも伝えぬと?」
「はい。本職の胸に留める所存に御座います。これは陛下や政府の承認を受けており、独断ではありません」
日本の皇族もスキルは秘匿されているらしいから、アーシャも同様の扱いという事だろう。英国がコナかけてきている現状、スキルを聞き出して愛想を尽かされるのは避けたいというところか。
「ああ、零時を回りました。皆様、移動致しましょう」
話をしている間に日付けが変わったようだ。まずは俺が出て周囲を警戒、安全を確認し皆を呼んだ。
「ここがダンジョン・・・暗くて良く見えないわ」
「舞、まずステータスが開けるか確認してくれ。アーシャも頼む」
役所の施設ならばモンスターは出ないのでゆっくり確認していても問題ないが、ここは一階層とはいえモンスターが出現するダンジョンなのだ。ステータスが開ける事を確認したら迷い家に戻りたい。
「大丈夫、開けたよ玉藻お姉ちゃん!」
「私も開けました」
「よし、それでは迷い家に戻りましょう」
舞やアーシャ、父さんと母さんは初めて入ったダンジョンに興味津々といった感じだったが、今は安全を優先してほしい。
突撃豚の攻撃で命を落とす事はほぼ無いとはいえ、下手をすれば骨が折れてしまう。神炎一発で倒せるとはいえ、この人数を一人て守るのは少々キツイ。
迷い家のリビングに戻り、舞とアーシャのスキルを確認する事になった。まずは舞からだ。
「ステータスオープン・・・舞のスキルは慣性制御と範囲制御だって。慣性制御は慣性を操る?かな。範囲制御はスキルの範囲を変える・・・よく分からないや」
「私は千里眼と転写というスキルです。遠くを見たり、物を透かして見たり出来るようです。転写は思い浮かべた物を写す・・・みたいです」
スキルは授かると使い方を漠然と分かるようになっている。二人はまだ授かったばかりなので本当に曖昧にしかどのようなスキルか分からないのだろう。
「もし舞が授かったスキルが想像通りなら、かなり強力なスキルを貰ったな。アーシャのスキルもかなり有用だと思う」
「父さんにはさっぱりだが、優にはどんなスキルか分かるのか」
「前世知識の賜物だけどね」
前世のネット小説やラノベでは様々なスキルや能力が登場している。二人のスキルはかなり分かりやすい部類だと思う。
そして、それが俺の想定したものであるならば、アーシャの身を守るのに大きな力になるだろう。そして俺のダンジョン攻略にも。




