第五話
「優君おはよう」
「今日も可愛いわね」
「おはよう、俺は男なんだから可愛いは止めてくれ」
教室に入り、クラスメートと挨拶を交わす。女子と挨拶を交わす俺に男子から殺意の籠もった視線が集中するが、そんな視線は無視して席につく。
「明日は俺の転生した姿を見せてやるから楽しみにしてろよ」
「お前が転生なんてできる筈ないだろ。非戦闘系のしょうもないスキルが関の山って所か」
この世界では十四才の誕生日にスキルを授かる。この世界の日本ではその一ヶ月前に役所から通達が届き、誕生日前日の午後十時には指定された役所に出頭しなければならない。
誕生日の午前零時にスキルを授かりステータスを見られるようになる為、それを登録する義務があるのだ。スキルは悪用すれば多大な被害を生むため、それを防ぐ為の処置なのだ。
これが前世ならば抗議の声が上がりそうだが、この世界の日本は大戦が無かった為現在も帝国である。前世より遥かに公権力が強いので、そんな事で文句を言う者はいない。
「男子って、本当にお子ちゃまよね」
「転生スキルなんてそうそう出る筈無いのに。少しは現実を見なさいよ」
騒ぐ男子を女子が冷めた目で睨むが、当の男子達はそれに気付かない。男子が話題にした転生は本当に転生する訳では無い。
希少スキルに獣人化という物があり、そのスキルを発動するとその名の通り獣人となってしまい普通の人間に戻れなくなる。
獣人化するとその種族に付随した腕力強化や敏捷強化、聴力強化や視力強化などの戦闘に有利なスキルを習得する為、獣人化を得て使用しないという者はいない。
現在犬・猫・熊・兎の四種が確認されておりどれになってもダンジョンで活躍出来る為、転生した者は究極の勝ち組と認識されている。
「まあ、転生は無理だとしても魔法系スキルは欲しいよなぁ」
「お前、それでも充分に贅沢だろ。どんなハズレスキルを引くのか楽しみにしてやるよ」
男子達は尚も騒いでいるが、他人のスキルなんて俺には興味の欠片もない。将来パーティーを組むかもしれないが、その時は地に足の付いた考え方をするメンバーで固めたい。
結局、翌々日に登校してきた男子が授かったスキルは「布団を一瞬でフカフカにする」という物だったらしく、当人は酷く落ち込んでいた。
それはそれで有用なスキルだと思うのだが、戦闘スキル至上主義とも言えるこの世界では評価されないのだろう。
そして三週間後、俺も十四歳の誕生日を迎える事になる。