第四百九十六話
「滝本中尉、君が刺客の銃に対応した時の状況を詳しく話してくれ」
「はい。刺客二人のうち一人を倒したのですが、もう一人は本職に素手では勝てないと悟ったのか拳銃を向けてきました」
俺は外務省の役人の求めに応じて当時の状況を詳しく説明した。大盾への換装を見せて欲しいと言われたので実演する。
「本当に一瞬で装備出来るのだな。これは凄い!」
「レディ、欧州の盟主大英帝国においでになりませんか?そしてヨーク大聖堂で私と永遠の愛を・・・」
ゴスロリに大盾という装備に変わった俺を見た英国武官さんは素早く俺の前に移動すると、片膝をついてトンデモナイ発言をしてくれました。
いきなりのプロポーズに硬直していると、曽我部少佐が武官の頭をグーで殴った。かなりの威力だったようで、武官さんは倒れるとピクリとも動かなくなってしまった。
「上司が失礼致しました。先程の発言はお忘れ頂ければ幸いです」
「そ、そうですな。ハプニングが起きた事ですし、今日はここまでとしましょうか」
本来ならばもっと時間をかけて話し合う予定だったのだが、英国の担当者の一人が不慮の事故で意識を失ってしまった。ここは中止が正解だろう。
「そうですな。後程大使館から正式な謝罪がいくと思います・・・そうそう、一つだけお聞かせ下さい」
曽我部少佐は外務省職員の提案を受けて、気絶した武官の襟首を掴んで会議室から出ようとした。しかし、部屋から出る直前に立ち止まり質問を投げ掛けた。
「スリープシープを倒したというパーティー、メンバーは発表された人達だけではありませんね?恐らく、神の使いと言われている少女が加わっているのでは?」
「その通りです。しかしそれは一部の者にしか伝えられておりません。外部に漏らさぬようお願いします」
関中佐の返答を聞いた曽我部少佐は頷くともう一人の武官を引き摺って退出していった。
「では、予定より大分早いですが終了と致しましょう」
中途半端な会議となってしまったが、そのまま終了となり外務省の役人は退出していった。俺と関中佐も市ヶ谷に戻ろうと部屋を出る。
「関中佐、滝本中尉。出来れば宮内省まで同行していただけまいか。侍従長殿も銃対策に興味をお持ちのようでな、侍従長殿に近しい者達にも話をしてほしい」
「かなり早く終わったので、時間はありますな。滝本中尉、同行するとしようか」
衛士さんはぼやかしているが、近しい者達と言うのは俺が玉藻だと知っている人達だろう。隣にいる宮内省の職員はそれを知らないのでこういう言い方にしたと推測。
関中佐もそう判断したようで、同行する事をすぐに了承した。宮内省の二人と俺と関中佐は連れ立って玄関に向かう。
普段外務省で見ない人間が四人も固まって歩いているからか、外務省の人達や外部からの訪問者と思しき人達の視線が集まる。やがて玄関につき、宮内省の車と陸軍の車が横付けされた。
「中尉、大盾は足元に置いてくれ」
「あっ、換装してそのままでした・・・」
そう言えば大盾装備にしていたのだった。ゴスロリ着て大盾持った少女が外務省を歩いていれば、そりゃ注目されるわな。




