第四百九十一話
父さんと母さんが往診から戻り、夕食をとる。その席で舞が学校での出来事を話した。
「黒田侯爵令嬢の妹さんと同じクラスだったのか。それは偶然・・・いや、過去に往診した事を調べられていて同じクラスにしてくれたか」
「ああ、ありそうだね。舞がされたような批判は絶対に起きると宮内省も予想していただろう。だから縁がある黒田侯爵令嬢のクラスに入れたと思う方が自然だね」
問い合わせた所で認めないだろうけど、ほぼ間違いなく配慮されているだろう。宮内省と黒田侯爵令嬢に感謝だな。
「優ちゃんも同じような事があったのではないの?」
「入学時に卒業時よりも高い階級を与えられたからね。そいつは先生に論破された挙げ句逆上して掴みかかってきたから返り討ちにしたけど」
クラスでの顛末を話すと、両親は呆れた顔で深いため息をついた。
「優、士官学校は兵ではなく指揮官を育成する学校だよな?そんな奴が指揮官で大丈夫なのか?」
「大丈夫ではないだろうね。矯正出来れば良し、出来なければ一兵卒で入隊か退学でしょう」
通常相手するのがダンジョンモンスターなので余程の事が無い限り死者が出る事は無いが、指揮官の判断ミスで重傷者を出す事はあるらしい。
前世の軍に比べたら死傷率が少ない軍隊とはいえ、氾濫等の緊急時に指揮官がお粗末では被害が増えてしまう。
「で、父さんと母さんの方はどうだったの?」
「やった事はひたすら診断するだけだったのだが、相手がなぁ・・・」
「将官や佐官の人達だったから気疲れしてしまったわ」
父さんの軍での初仕事は、陸軍のお偉いさんの診察だったようだ。忙しい人達だから、父さんが各部署を回って診断していった。
病院に出向く事なく短時間で診断が終わる為大好評だったとか。採血や造影剤を飲む煩わしさが無いのも良いと絶賛されたらしい。
「父さんのスキルって、本当にチートだよね」
「なんのなんの、優のスキルには到底敵わないさ」
それを言われると沈黙するしかない。着せ替え人形も大概だし、迷い家は反則技以外の何物でもない。特殊な条件を満たさないと付与出来ないのも納得する便利さだ。
「舞はどんなスキルを貰えるのかな・・・」
「舞ちゃんももうすぐね。でも、どんなスキルを授かっても舞ちゃんは舞ちゃんよ。自信を持ちなさい」
奇しくも舞とアーシャちゃんは同じ日にスキルを授かる。普通なら役所に出向いてスキルを発現させて登録してもらうのだが。
「舞とアーシャちゃんは役所ではなく秘密裏にダンジョンに行ってスキルを授かる事にするそうだ。宮内省はアーシャちゃんのスキルを秘匿したいようだね」
「アーシャちゃんと一緒の舞もついでに、という所か。俺の妹だからというのもあるかな」
神の使いの妹という特別扱いをすると同時に、俺の妹だからとんでもないスキルを授かる可能性が高いだろうと踏んでの判断だろう。二人はどんなスキルを授かるのかな。




