第四百七十二話
関中佐とマスコミに話すべき内容を確認し、マスコミから質問されると思われる内容を言い合いどのように答えるかを詰めていく。
「問題はスリープシープの羊毛だな。あれで編んだ布は耐刃耐衝撃性能が高いとの報告が来ている」
「攻略を優先するか、ある程度羊毛を確保してから先に進むかですね」
これまでは出現するモンスターの攻撃を避けて反撃し倒してきた。しかし、ここから先もそれが出来るかは定かではない。
この先はどのようなモンスターが出るのかという情報が無い。素早さ特化のモンスターや範囲攻撃をしてくるモンスターが居る可能性を常に考えなくてはならない。
「軍としては冬馬パーティーの武器更新が出来るまで先に進まず羊毛集めを頼みたいが・・・」
「それが妥当ですかね」
迷い家ならばレアドロップ集めの難易度も下がる。空歩と神炎で空から焼きまくればある程度の数は揃えられるだろう。
そうこうしている内に移動する時間が来たので関中佐と共に車に乗り込む。今回の記者会見は宮内省にて行われる。事件の捜査を天皇陛下が指示されたので宮内省も噛んでいる為だ。
宮内省の玄関前には前回と同様マスコミが詰めていた。車から降りた俺達にカメラが向けられる。
「今、陸軍情報部の関中佐と滝本准尉が到着しました。今日はゴスロリではなく軍服姿です」
「あのレポーター、宮内省と軍の記者会見にゴスロリで臨むというのは非常識だと何故思わないのか」
聞こえてきたレポート内容に呟くと、関中佐はあからさまに視線を逸らした。ここが宮内省の廊下で無かったらどんな言葉を飲み込んだのか問い詰める所だ。
衛視に案内された部屋に入ると、侍従長が待っていた。彼も記者会見に同席するので内容の擦り合わせをしなくてはならない。
侍従長と関中佐は捜査にて判明した事と逮捕された者達の情報を共有し、マスコミに告げるべき内容を纏める。
俺は当事者であっても捜査に加わった訳ではないので二人のやり取りを静かに聞いていた。情報部で想定したマスコミから来るであろう質問に関しても話し合い準備が完了した。
取材陣も揃った事が報告され、記者会見が始まる。侍従長と関中佐に続き部屋を出てマスコミが待つ部屋へと移動した。入室するとカメラが向けられる。用意された席につくと司会役の侍従さんが記者会見の開始を宣言した。
まずは関中佐が捜査にて判明した事件の背景を説明し、主な逮捕者の名を挙げていく。直接ではないが協力した事で逮捕された者の中にマスコミの関係者が居た事を告げた時顔を顰めた者が居たが、自社の人間だったのだろう。
「以上で陸軍からの報告は終わります」
「捜査に関しては宮内省から付け加える事はありません。しかし、SNSで厚生労働省や日本医師会を誹謗中傷する者が散見される事に陛下は心を痛めておられます。逮捕されなかった者は事件に関与していないと判明しているので、中傷するような真似はしないようマスコミからも注意をお願いする」
侍従長が陛下の内心を代弁し報告は終わった。ここからはマスコミからの質問を受ける時間だ。変な質問が来なければ良いが。
 




