第四百七十話
惚けていた人達を正気に戻し撮影を続けた。男の時と同様複数のポーズで撮影し終えた頃冬馬パーティーが到着した。
「お疲れ様です、滝本中尉。第一種礼装、お似合いです」
「ありがとう、冬馬軍曹。昇進おめでとうございます」
握手を交わした冬馬軍曹の第一種礼装に付いた階級章は伍長ではなく軍曹の物となっている。井上上等兵と久川上等兵も昇進し兵長の階級章を付けている。少人数であれだけの成果を出したのだ。これで昇進しない方が可怪しいと言える。
「まさか私達が広報用ポスターのモデルになるとは夢にも思いませんでした」
「兵長達は注目株ですから。出来ればうちに異動して欲しかったのですが・・・」
久川兵長のぼやきに広報課の女性士官が答える。冬馬パーティーはダンジョン探索で成果を上げているのだから、そこから外して広報課に行くと言うのは無理だろう。
「各地で行われる軍のイベントに参加して貰えると入隊志願者も増えそうなんですけどね」
「私達の任務はダンジョン探索ですから。それを疎かにして広報活動は出来ません」
諦められずに言質を取ろうとする広報課の士官に冬馬軍曹がきっぱりと断りを入れる。それで諦めがついたのか、撮影を再開する事になった。
まずはそのまま全員での撮影。ポーズや立ち位置を変えて何枚かの撮影を行った。次に女性体を解いて男の姿で同じように撮影する。
「それでは中尉、着替えをお願いします」
「気が進みませんが、仕方ないですね」
俺は着せ替え人形で第一種礼装から普通の軍服に着替え、第一種礼装を着せた着せ替え人形を出した。人形から礼装を脱がせて冬馬軍曹に預ける。
「これに着せた服と入れ替えていたのか」
「何とも不思議なスキルだな」
広報課の人達の視線を無視して女性体を発動し、着せ替え人形でドレスアーマーに斧槍を持った姿となる。そしてさっきと同じように第一種礼装の着せ替え人形を呼び出した。
斧槍を置いて人形の礼装を脱がせ、冬馬軍曹が持つ礼装を着せてもらう。俺が持つ礼装を冬馬軍曹に渡し、斧槍を拾って女性体を解除した。
先程礼装を脱がせた人形を呼び出して冬馬軍曹が持つ礼装を着せて貰えば準備完了だ。面倒な手順を踏んだが、通常男性の着せ替え人形に着せている装備を女性の着せ替え人形に装備させた物と入れ替えるなんて事は行わないのでこうするしかない。
注目される中、着せ替え人形を発動して先程女性用第一種礼装を着せた人形と装備を入れ替える。これで男の状態で女性用第一種礼装を着た異常な状態となった。
「うわっ、全然違和感を感じない!」
「女性用礼装が男性用礼装と似ているからと言うのもあると思うけど、素材の良さよねぇ」
「記者会見まで余り時間もありませんし、早く撮影を終わらせましょう」
記者会見を口実に撮影を急かす。女性体の使用時に女性用の服を着るのは仕方ないと諦観しているが、男性で女性用の服を着るのは抵抗があるのだ。こんな状態、早く終わらせたい。




